『私の家に、座敷童子(ざしきわらし)が出る』と言うと、家内も子どもたちも、「一体何を言っているの?」と一笑に付されてしまいます。
岩手県遠野物語では、可愛い座敷童子が出てくるようです。我が家は、遠野の一軒家ほど広くはありません。だから出ると言っても、一体どこに出てくるのか? 周りは、みんな不思議に思うようです。
単に私ががんの病で、幻覚症状が現れているのではないか、と思っている人もいるようです。
確かに、私にしか見えないのだから、個人的な事情、つまり私に幻覚と言う異常な事態が発生した、とことかもしれません。
しかし、確かに出るのです。どんなものかと言えば、絵本の挿絵にあるような、立派な童子とは全く違います。そんなものが出てきたら、誰でも見ることができるはずですが、そんなものではありません。
顔が見えるほどくっきりは見えません。影が見えるのです。ある時はカレンダーの陰に隠れてしまい、またある時は、神棚の柱の裏に飛び込むのです。我が家の座敷童子が、いちばん気に入っているところは、なんとテレビの後ろにある書棚に入り込むことです。
ああ、また来たか、と私はとても嬉しくなります。ある時は、飛蚊症のように、チラチラする、小さな斑点のようなもので来ることもあります。もっと大きくなると、子猫くらいでしょうか。
いたずら好きな小さな生き物と言う感じなのです。
こんな生き者が突然現れると、嬉しいものですよ。そしてたいてい遠慮がちに消えてしまう。決して最後まで姿を見せない。そして嬉しいことに、我が家の座敷童子は、声を立てないのです。
笑顔はよく見せます。でも、声を残すことはありません。だからもしかしたら、私にしか見えないのかもしれません。
一部屋、座敷童子たちのためにとっておきたいと思いますが、今となればそうもいきません。きっと座敷童子のほうでも、私とコミュニケーションできることで、嬉しがっているのではないかと思います。
ぼんやりとしていると出てくる、というわけでもありません。なんだか考え事をしていると、突然姿を残して立ち去ってしまいます。
『アツ、また来た!』と言うのは楽しく、嬉しいものです。
皆さんはきっと、見たことがありませんよね。
これから、どのくらいの時間、友達になっていられるか、分かりませんが、我が家の座敷童子、私にとって仲間なのです。
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