私がいた高校に、K田先生というちょっと変わった?音楽教師がいました。


 若くて少し髪の長い男性教師でしたが、「自分は本来であれば指揮者になるはずだが、今こうして出来の悪いお前たちの前にいるのは世を忍ぶ仮の姿だ!」と体全体から訴えていました。

 (私にはそう感じました。)


 その授業もユニークで、井上陽水と吉田拓郎の作詞作曲の手法の違いを論じてみたり、生徒にレコードを持ってこさせてロックや歌謡曲やフォークを聞かせたり、そうかと思うと「コールユーブンゲン」という合唱用練習教本をただひたすら生徒にやらせたりと何だかいつもとりとめのない授業でした。

 (少なくとも私にはそう感じました。)


 しかしそんなK田先生ですが、フィンランドの作曲家シベリウスの曲のレコード鑑賞をするとき、私はその時初めてシベリウスを知ったのですが、交響曲第2番第2楽章の幻想的な雰囲気や、交響詩「フィンランディア」で歌い上げられる祖国への熱い想いを、先生は夢見るように切々と出来の悪い我々生徒に向かって語りかけていたことを今でも覚えています。


 その後、K田先生が念願かなって指揮者になったかどうかは知りません。
 けれども何十年たった今も、こうして私がシベリウスの曲を愛聴している事実こそ、私のなかで音楽教師としてのK田先生の勝利の姿だと思います。



ヤッシーのブログ-シベリウス