こんにちわ。
今日は企業におけるキャリア開発について書きます。

日本は戦後、終身雇用・年功序列・企業内組合 の日本的経営の3種の神器を駆使し、急発展をとげました。戦後当時は人材不足な上に若年層が圧倒的に多かったんですね。。各企業は学校卒業したての人材を丸抱えし、企業内で育成し、家族のように社員を遇することで、「リテンション」を図っていました。その当時は、人材戦略的にも合致していたんですね。ただ、これは良く言われる通り、高度成長期の話です。その後、景気の悪化...成果主義の浸透...複線的人事制度の導入...個人の価値観の多様化...終身雇用神話の終焉...と移り変わります。個人が会社の雇用にあぐらをかき、会社がひいたレールをただ歩いていればよい時代は終わりました。個人が自律し、自分で自分のキャリアを考える「キャリア開発」という概念が日本にも入ってきました。また、会社が「成果主義」を導入するのであれば、自分の得意な(好きな)仕事について、良い評価を受けたいという社員の欲求も高まります。「社内公募制」を導入する企業も増えました。

.....さて、企業におけるキャリア開発。
統計的な数字は分かりませんが、「キャリア開発プログラム」と銘打って主要人事施策として力を入れる企業が増えてきたようです。濃淡はありますが、「組織と個人の活性化」を目的に、一般的には以下の施策で構成されます。

・上司と部下がキャリアについて話し合う「キャリア面談」
 →会社は部下の育成や配置の参考とし、本人は自分の育成計画について上司のサポートを得る、
  またはアドバイスをもらう
・上司と個人がキャリア開発について考えるためのサポートツール
 →キャリアパスモデル(例)の開示
 →キャリアについて考えるワークショップの実施(本人向け)
 →コーチング研修(上司向け)
 →選択制or会社指名制 研修プログラム
 →高齢者向けライフプランニング研修の実施 など
・関連人事制度
 →自己申告制度(異動希望)
 →社内公募制度
 →FA制度 など
・キャリアカウンセラーなどの相談機関の設置

キャリア開発という切り口で考えた場合、この施策の中心は何と言っても「キャリア面談」となります。上司と部下がどれだけ「効果的な」面談を出来るかが肝。特に上司であるマネージャー教育が肝になります。マネージャー(もちろん社員にも)にきちんとキャリア開発施策について理解してもらう必要があります。

実務上、マネージャーの「成熟度」と社員の「自律性」によって、キャリア施策の濃淡が大きく変わります。

例えば一番多く議論になるのが社内公募。
リソースマネジメントは現場のマネージャーにとっては死活問題ですから・・・
マネージャーが成熟していて、部下とのコミュニケーションが円滑であれば、企業風土などにもよりますが、理論上、社内公募の応募率・成立率は減るはずです。匿名で応募せずに、社員が上司に相談する、若しくは上司が部下の思いをきちんと引き出すからです。キャリア開発という施策で考えたときに、私は「社内公募」の活用度が減るのはとても良い事だと思っています

社内公募制は企業内で人材を流動化し最適化するドライブ機能はありますが、実際に各現場を日々切り盛りするマネージャーにとっては突然人材が抜けるのは頭の痛い問題であるのもまた事実。突然人材が抜けても「しょうがない」と割り切って人材を補充するまで現体制でやりくりするだけの「高いマネジメントの成熟度」と「社内人材流動化を支える社員の自律性」を持つ企業は少数派だと思います。
そうすると、マネージャーにとっては、部下の異動希望を把握出来て、部下の異動希望をきちんとサポートし、同時に自部署のリソースについてもやりくり出来るのがベストということになります。例えば、上司側から「今すぐは異動させられないが、今年一杯何とか頑張ってもらって、来年異動を検討出来るよう上司と相談したい」といった話し合いを部下とすることも可能です。部下が一定以上優秀であれば、きちんといまの仕事をやり遂げることに理解を示す例も非常に多いです(きちんと異動出来るよう調整してあげることが前提!)。中には、「本当は今すぐ異動したかったのに上司に無理矢理説得させられた」と言ってくる中堅社員もいます。本当に無理矢理であれば問題ですが、これは社員の自律性の問題。キャリア面談では社員は上司からアドバイスをもらいます。その結果説得させられたのであれば、それは本人が自ら「キャリアプランを修正した」ということです。そうでないのであれば、とことん自分の意見を面談で言うべき。結果として合意出来ないのであればそれもありです。
このキャリア面談を突き詰めると、社内公募を活用する例は、「よほど上司のことが実は嫌いで今すぐ離れたい」か「今すぐ異動しないとどうしようもないかなり差し迫った理由があるか」極めて限定的になります。

こんな事を書くと、社内公募の目的と矛盾する という意見も出そうです。但し、現実は人材不足、マネージャーの成熟度がまだまだ課題、がんがん人材を流動化したら足下から崩れそう、だけど何とか切り盛りしている...なんて企業は山ほどあるはずです。当社(日本)もそうです。その中で、企業の業績と社員のキャリア開発を両立するのはかなり難解な課題。

ちなみに当社(日本のみ、日本以外の各国の運用は当然違います)では、社内公募制を導入していますが、必ず応募前に「上司に応募したい旨を告げる」透明な制度にしています。人事内外から応募を妨げるという反対意見もありましたが、真に自律した社員にとって問題にはなりません。この制度で提案し、導入しました。仮に上司が応募を邪魔して嫌がらせする というのであればその上司をアウトプレースメントすれば良いだけです。結果的に、社員の自律性をボトムアップすることにも繋がります。 現在の当社では非常に機能していますパー

私個人、そもそも「匿名でこっそり応募して異動するなんてHealthyでは無い」と信じている一人です。
企業で働く以上上司にきちんと相談してサポートをもらうべき。何のために上司がいるのか分かりません。気持ちよく異動したいので、公募に応募するとしてもせめて上司には事前にシェアすべきだと思う。よほど上司が無能で無い限り、それでサポートがもらえないんであれば、そもそも異動しても企業内で成功なんてしないんじゃないか 位に考えています。
社内公募制は矛盾を抱えていてOK。企業がキャリア施策を推進するのであれば、むしろこの制度は「形骸化」「名目化(会社がきちんと空きポジションを開示していますよ という事実化)」する位がちょうどいいと思っています。上司と部下の関係が悪いなど、例外的な「受け皿制度」として存在していればいい。


最後に、マネージャーから一番多く寄せられる質問。

「部下の5年後、10年後のキャリアプランにまで上司は責任を負わなくていいんですよね?そんなの正直責任持ちきれませんよ」

良い質問です。解答は「その通り」となります。いくら上司に「People Management」の責任があるとはいえ、そんな先の事無理に決まってますよ。自分がどうなるかすら分からないのに。
但し、マネージャーには、5年後、10年後のキャリアプランを踏まえた、今年1年間(長くても2、3年程度)の育成には100%責任を持ってもらいます。また、責任はモテませんが、5年後、10年後の部下のキャリアを上司として親身になって考えてあげる事位は必要でしょうね...じゃないと多分部下から信頼は得られませんから...


Yassy