企業には業績目標を達成するための様々なプログラムがありますね。人事関連でいうと、パフォーマンスボーナスプログラム(業績賞与)、社宅、カフェテリア方式ベネフィット、退職金、評価制度、表彰(アワード)... その企業のビジョンやプライオリティによってプログラムの濃淡や特徴は異なりますが、どの企業にも必ずある制度、それは「評価制度」だと思います。ベンチャーはさておき、一定規模以上の会社で「評価制度がない」なんて話しは未だかつて聞いたことがありません。
この評価、担当事業部の実務責任者として初めて実務を一手に取りしきったのは入社3年目の時でした。当時の上司にも恵まれました。それまでは「評価」って何のためにするのか?「評価制度」って何だ?なんてこと考えたこともありませんでした。考えなくても実務は出来ちゃいますからね・・・ 初めて当時この禅問答のような問いに向き合いました。「タレントマネジメント・・・採用・異動・報酬・評価・育成を連動しトータルで人材をマネジメントする」という概念を知ったのもこの時でした。
今思うと、当時整理した内容と本質はほぼ変わっていません。今日は、当時(25才。。若ぃ)を懐かしみながら、評価制度って何だ?について徒然と書きます。
評価制度は何のためにあるのか?
「企業の業績を測るため?」Noですね。株主配当、売上高、製品シェア、カスタマーからの評価・・・評価制度が無くたって測れます。人事がわざわざ制度をこしらえるなんて余計なお世話。企業を構成する部門はどうか?これも測れますかね。では各部門の構成員個人はどうか?うーん・・・突き詰めると測れますね。「評価」は出来ると思います。マネージャーがよっぽど無能じゃない限り、部下の業績が「期待を上回ったか」「期待通りか」「期待に満たなかったか」位評価出来るでしょう。
※評価制度が悪いから評価が効果的に出来ないと言ってくるマネージャーは無能な証拠です
「個人の業績を報酬につなげるため?」っていうのはどうでしょう。
これは人事実務的には「Yes」ですね。①社員を格付け(等級制度)、②格付けに基づいて評価し、③評価に基づいて報酬を決める。一般的な企業内におけるHRのコアプロセスです。
最近は、殆どの会社が「Pay for performance理念」のもと業績評価と報酬をリンクさせています。でもこれは「頑張った人に報いる」という報酬理念の目的を達成するためにあるのであって、企業にとっての評価制度の存在意義とは違うと思います。
前置きが長くなりました。
評価制度は、ずばり「社員を育成(Development)する」ためにあります。この一言に尽きます。でも人材育成って響きはいいけど何か分かりづらい。。
人材育成とは何か? 要は、「業績達成のために会社が社員に求める行動を社員に取らせた結果、アウトプット(価値創造=業績)が以前より向上すること」だと私は定義しています。さすがにその必要性はこれ以上「なぜなぜ?」はしません。
では、何故「社員を育成する」ために、「人事部」が、わざわざ全社統一の「人事制度」を作る積極的な意義があるのか?
公正な評価が大前提で、そのために人事部の関与が必要だから? No。
人事部が社員の「人材育成」に責任を負っているから?もっとNo。
人事部は手助けはしますが、公正な評価を実現するのも社員を納得させるのも、社員を育成するのも全てマネージャーの仕事です。
この問いに答えるために、人材育成という定義をもう少し具体化します。
会社にとっての人材育成:
「社内で優秀な人材を特定し、投資を集中し、更に育てること」
社員にとっての人材育成:
「社内、業界内、同一職種内で市場価値が上がること」
最大の意義。それは、上記↑2点を実現するために、「全社共通・統一の評価基準を策定・提供すること」にあります。これこそHRの専門家である人事部が、Professional Expertiseを駆使してやるべき仕事。さすがに各現場のマネージャーが作るべきではありません。
この「評価基準」があるからこそ、社員は「相対的に」自分の社内での市場価値を認識することが出来ます。直属の上司の「評価」を聞いただけでは客観的な社内市場価値の把握は困難です。この市場価値の認識こそが育成・キャリア開発の第一歩になります。直属の上司は部下のコーチングに一つの指標として活用します。会社にとっても、Enterprise-wideに優秀な人材を特定するための共通の指標を持つことが出来ます。
まあ、色々と能書きを垂れましたが、この「評価制度」の運用をマネージャーが効果的に運用出来るようサポートするのが「HRの重要な役割」であることには変わりありません。
評価は、時に厳しい話と紙一重です。相対的に低い評価の社員に業績を自己認識させ、PIP(Performance Improvement Pllan)に導き、最悪の場合別のOpporunityを考えてもらう。「評価制度」が個人の業績を評価するためにあるのもまた事実。ただ、根本にあるのは「育成(Development)」。これを忘れずに日々実務に取り組むよう心がけています
Yassy
会社の切り口と社員の切り口でもう少し具体化します。