自分に合った働き方を。「得意」を生かして「どすこい」と働きませんか?。

どすこい就労継続支援

今回伺ったこちらのは、八潮市八潮三丁目にこの3月にオープンしたNPO法人地域再生研究機構が運営する、ちょっとユニークな名称の就労支援の事業所「どすこい就労支援B型作業所」です。

オープンの情報については、先般当WEBサイトにてご紹介しましたが、この作業所に機会を頂き、お話しを伺ってまいりました。

障がいや難病を持つ人々に特化したこの施設は、個々の「得意」を活かした働き方を提案しています。

どすこい就労継続支援

こちらが「どすこい就労継続支援」の作業所。八潮市八潮三丁目のバス通り沿いにある一軒家を作業所としている

就労支援B型とは

皆さんは、就労支援B型作業所というものはご存じでしょうか。

就労支援とは「就労継続支援」と言い、A型とB型があります。「就労継続支援B型」は、障がいや難病のある人が対象の障がい福祉サービスで、一般企業での雇用が難しい方に就労の機会や生産活動の場を提供する事業所や作業所を示します。ここでは訓練を受けたり、工賃を得たりすることが可能です。

一方の就労継続支援A型とは、一般企業などで働くことが困難であるものの、一定の支援があれば雇用契約に基づいて働ける方を対象にしたサービス。B型と同様に、障害者総合支援法に基づいた障害福祉サービスにおける福祉的就労です。働くために必要なスキルを身につけたり、支援を受けたりできる点は就労継続支援B型と同じですが、大きな違いは「雇用契約を結ぶかどうか」という点にあります。

B型は障がいや年齢などで就労が困難な方、特に就労経験があり一般企業での雇用が難しい方や特別支援学校の学生などが利用できます。

主治医の診断書があれば、障害者手帳がなくても利用可能であり、作業内容はパン製造や農作業など多岐にわたり、勤務時間や日数は柔軟に調整できます。ちなみに、2025年10月からは、「就労選択支援」という新しい制度がスタートし、就労アセスメントを通じてより適切な就労支援が提供される予定です。

「どすこい就労支援B型作業所」は名称の通り、就労支援B型の事業所にあたります。ここで働くことによって、社会とのつながりを保ちながら自己実現を目指すことができます。

就労継続支援の違い

なぜ「どすこい」?

こちらの事業所は「どすこい」と名称がつくように、その名の通り「相撲」の世界からインスピレーションを受けて、他の事業所とは違った特色を醸し出しています。

実はこちらの代表を務める山崎耕作氏は、元力士の方。現役時代の四股名は「玉龍馬」。墨田区にあります片男波部屋(かたおなみべや)に籍を置き、平成21年3月場所に引退されました。

現在はこちらの作業所を運営する傍ら、墨田区業平で、出身地である高知県の食材を中心とした料理をメインとした「どすこい酒場 龍馬」を経営されています。

山崎耕作

山崎耕作氏。一見、さすが元力士といういで立ちだが、物腰は柔らかく、ほころぶ笑顔が印象的

どすこい酒場 龍馬

「どすこい酒場 龍馬」墨田区業平にあり、山崎氏の出身地である高知県の食材を中心とした料理が楽しめる。芸能人やスポーツ選手の利用も多い。

「どすこい酒場 龍馬」のInstagramは▶こちら

就労支援の場を提供している理由

よく現役力士の方々が、社会貢献の一環として、老人ホームや障がい者施設といった福祉施設に慰問に訪れるシーンを目にすることがあります。実際そのような機会も多いそうです。

山崎氏ももちろん現役時代には、同様に福祉施設への慰問に足を運ぶ機会も多く、また同級生や元力士の方、実姉などが福祉の事業に携わっていたこと、さらには居酒屋を経営していることで、お客さんから、家族のことや障がいのことなどの話を聞く機会も多く、必然的に福祉の仕事について、大きな興味を持つようになったそうです。

奥さんが八潮市内の子ども食堂のお手伝いに参加していることから、市内の福祉関係の方とも接点も多くなり、今回八潮市内に施設を構えることになりました。

どすこい就労継続支援

2階フロア。時には代表の作るちゃんこ鍋がふるまわれることも。

作業所の仕事のメインはコーヒーの加工販売

このような就労支援の施設で、コーヒーの加工や販売というカテゴリーを取り扱っているところは意外と多いそうです。山崎氏自身や働くスタッフの方の中にもコーヒーに造詣が深い方がおり、スタッフのすすめもあって、まずはコーヒー加工販売をメインに据えることとなりました。

このほかにも、サンドアートやチョークアートといったクリエイティブな雑貨の製作や販売なども視野にいれています。

他の就労支援施設では、請負の仕事も少なくなく、ノルマも課せられるところもあり、無論仕事としても重要なところではあるものの、「伸び伸びと、自身のペースで仕事をして欲しい」という山崎氏の想いがあり、現在は受託の仕事は一切行わず、行なっているコーヒー加工については特にノルマを設けていないという点を強調しています。

豆の選別から加工まで、作業としては無理なくこなせることや、「コーヒー」であれは、いろんなシーンでのニーズも多様なこともあり、比較的加工品の販売サイクルも早く、販路も容易に確保できることから、チョイスしたことについては間違いではないのかなと考えているそうです。

どすこい就労継続支援

力士のイラストが愛くるしいパッケージの「どすこいコーヒー」。催事等での販売の他、同作業所で常時購入することができる。オーソドックスな種類から、季節に合わせた商品も。

どすこい就労継続支援

コーヒーの加工作業は、パッケージの封入まで行う。

どすこい就労継続支援

コーヒー豆の欠点豆との選別。通常、一つのコーヒーの実から採れるコーヒー豆は2粒ですが、中には二つの豆のうち一つだけが実の中いっぱいに成長してしまう事があり、これが「ピーベリー」。卵形の丸くて可愛い豆で、木の枝の先端にできることが多く、収穫できる量が少ないので貴重なもの。

どすこい就労継続支援

1級品の豆製品。

どすこい就労継続支援

生豆の選別表。銘柄によって、割れ欠けや変形、虫食い等により等級が分けられている。

相場よりの高く設定した工賃

こちらの「どすこい就労支援B型作業所」の工賃の設定は、同様の作業所の工賃と比較しても高く設定されています。

作業日数が20日間でも月給の設定が35,000円~、10日間で17,500円~の設定です(いずれも評価制)。

厚生労働省が発表した、2021年(令和3)年度での就労継続支援B型の工賃の平均月額はおよそ16,507円となっていますから、それと比較しても、およそ倍以上の設定となっています。

これもまた、他の作業所との差別化はもとより、なにより働きやすい環境を築いてあげたいという山崎氏の想いによるものです。

どすこい就労継続支援

作業場の様子。非常にアットホームな雰囲気。

今後の展望について

山崎氏の展望としては、まずは障がいを持つ方たちへの働き甲斐のある環境、無理なく仕事ができる環境をしっかりと構築していくこと、その上で今後も仲間となる受入れを増やし、コーヒー加工品の製造の技術の伝達や、販売を拡充させること。また、コーヒー以外の雑貨製作についても今後視野に入れた環境作りや販路づくりを目指していくとのことです。さまざまな方面での発展が期待されます。

このように、個々の能力を生かしながらも、社会とのつながりを大切にする「どすこい就労支援B型作業所」。そのユニークな取り組みは、新たな就労支援の可能性を示しています。障がいを持つ人々にとって、ここはただの作業所ではなく、「自己実現の場」となり得ると思えます。

障がいを持つ人々に新しい働く場を提供し、自己実現を支援する取り組みは、非常に意義深いものだと思います。まだスタートしたばかりの施設ですが、今後の発展にも期待が高まります。

もしもご興味を持たれた方、入所を考えている方がいらっしゃれば、ぜひ体験に伺ってみてください。

わんぱく相撲大会にどすこい就労支援が参加します

第33回 わんぱく相撲 八潮大会

わんぱく相撲大会主催の八潮青年会議所の担当の方と

第33回 わんぱく相撲 八潮大会

元女性相撲の優勝経験者のスタッフさん

5月18日(土)に、八潮市文化スポーツセンター脇の本土俵にて開催される「第33回 わんぱく相撲 八潮大会」。

こちらでは、特別に山崎氏自らが作る本格ちゃんこ鍋が振舞われる他、こちらに勤務の女性スタッフが、実は元女性相撲の優勝経験者で、当日はエキシビジョンで登場します。