Le Mans UltimateではWECのレギュレーションや新技術がかなり忠実に再現されています。しかし、常日頃よりモータースポーツを楽しまれる方にもあまり馴染みのない用語や機能が多いことから、LMUユーザーの中でも混乱をきたす場面も多いように見受けられます。

そこで今回は、LMUをより楽しく遊んでいただくための、ゲーム内で使用されるWEC用語や機能について簡単な説明記事を作成しました。

皆様のLMUライフのお役に立てば幸いです。

ゲームの設定方法などをまとめた"LMUくいっくがいど”はこちらをご参照ください。

『LMU くいっくがいど』Le Mans UltimateはFIA世界耐久選手権(WEC)を再現した本格レースシムです。現実と同じマシン、サーキット、機能が再現され、rFactor2を…

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※ゲームのアップデートに応じ、加筆・修正を行うことがあります。

WEC/LMU用語

バーチャルエネルギー(NRG/VE)

LMUのハイパーカーとGT3クラスの燃料管理には、バーチャルエネルギー(NRG/VE)が使用されます。他のレースではあまり聞き慣れない単語ですが、LMUではレース戦略を語る上で欠かせない存在となっています。

バーチャルエネルギーとは

バーチャルエネルギーは、1スティント辺りの最大許容エネルギー消費量となります。

”燃料+バッテリー(ハイブリッドのみ)”残量のエネルギー換算値

また、NRGの消費量は検出トルクから算出された燃料とバッテリーの統合出力から、回生エネルギーを差し引いて計算されます。エネルギーなので本来の単位はMJとなりますが、LMU内では％で表示されます。

NRGとBOP

NRGはBOP(性能調整)として使用されます。こちらは2024年WECのイモラで行われたBOPの実例となりますが、この中で”Add. Max. Stint Engery(MJ)~”と記述される列が各車のNRG(追加量)にあたり、車両ごとに異なる調整が行われていることが分かります。

NRGによるBOPとは、例えば100L/100%のNRG容量を持つ車両の成績が思わしくない場合、次戦では105L/100%と性能調整されることで、1スティントの走行距離を5％長くすることができます。

ピットで長時間ストップが必要なWECではピット回数がレース結果に直結するため、BOPの対象外となった車両は対象車両に対し5％分の燃費走行を余儀なくされます。このようにNRG調整はBOPとして一定の効果が期待できます。

LMUでは各車のNRG調整について明記がありませんが、製作側からは現実のレースに基づいたBOPが行われると明言されており、開催シーズンやサーキット毎に調整されているものと推察します。

NRGと実燃料量の関係

LMUではNRGが実燃料よりも早く消費されることがあります。もちろん、NRGが0%を下回ったとしても燃料が残っていれば車両は走行を続けることは可能なのですが、0%を下回った時点で「ストップ＆ゴーペナルティ100秒」が課されます。さらに、この違反は繰り返すごとに時間が増えます。

一方、Pit menuのFuel ratioを変更すると実燃料がNRGを下回ることもあり、NRGは残っているのにガス欠になることもあります。

LMUでは単純に速く走れば良いとはならず、NRGと実燃料のバランスを取りつつ、NRGが0%になるまでにピットイン/フィニッシュする必要があります。

ハイブリッド車両におけるNRGの注意点

ハイブリッド車両にNRGを100%まで補給してしまうと、ピットアウト直後のブレーキが効かなくなります。これはNRGが100%になるとリア回生ブレーキはそれ以上充電できなくなる(=ブレーキ性能を失う)ことが原因です。NRG補給は回生分を織り込んだ量にする必要があります。

また、ハイブリッド車両はピットロードをモーターのみで走行することが義務付けられているため、バッテリー残量が0の状態でピットインを行うと再スタートが出来なくなってしまいます。

ハイブリッド車両でレースに出場する際には、NRGとバッテリーのどちらも0にならないよう、適切な回生システムの使用とバランスを保つドライビングが要求されます。

LMUのタイヤ

LMUタイヤの基礎知識

LMUのタイヤは摩耗進行に応じて徐々にグリップが下がります。また、サーマルデグラデーション(熱による材料的な劣化)も発生するため、コンパウンド毎に異なる最適温度を保てない場合は更なるグリップ低下が進行します。

LMUでは他シムでは殆ど採用されないフラットスポット現象も忠実に再現されるため、タイヤがロックするようなハードブレーキングはご法度です。フラットスポットはユーズドタイヤ(使用済タイヤ)にも残り続けるため、状況によっては”タイヤを変えたのに前のタイヤよりも酷いバイブレーションに悩まされる”といった現象も起こり得ます。

タイヤの温度上昇はドライビングにも強い影響を及ぼします。例えば低温に適するウェットタイヤをドライ路面で走り続けると、路面からの水が無くなると温度が急上昇するウェットタイヤのゴムはとても柔らかくなり、最終的にはタイヤが剛性を保てずステアリング(FFB)の感触が「ぐにぐに」してしまうようになります。こうなるとコーナーでの体勢維持が難しくなる上にサーマルデグラデーションも相まって、グリップが雪だるま式に低下してしまうのです。

タイヤの摩耗と劣化の関係性については、拙記事”rfactor2のタイヤ摩耗と熱ダレによるグリップ低下について”にも紹介しております。rF2黎明期に書いた記事なのでだいぶ古い内容とはなりますが、rF2をベースとするLMUのタイヤも原理は変わらないはずです。気になる方は目を通してみてください。

タイヤ本数制限－Limited tyres

さらにLMUでは現実のWECや他の耐久レースでも導入されている”タイヤ本数制限”が実装されており、レースではタイヤマネジメントも重要な要素となってきます。

使用できるタイヤ本数はレースによって異なりますが、このタイヤ制限はプラクティスセッションから適用され、予選でタイヤを使いすぎるとグリッドが上位になっても決勝で使えるタイヤ本数が減り、結果的にペースダウンに繋がってしまいます。

上画像は筆者が出場した富士6時間のStrategy欄です。レースには全18本のタイヤが用意されていたものの、ウェットとドライ路面が2度も入れ替わる難しいコンディションに影響され、レース終盤には”0 New tyres”のお知らせ。見事に新品タイヤが枯渇し、最後はタイムの上がらないユーズドタイヤを使用することになってしまいました。

このようにドライビング以外の部分がレースを左右するようになるのも、LMUの難しく、面白いところです。

LMUのチーム耐久レースにはエンジニアが帯同できます。2025年10月現在、エンジニア機能はテスト段階ではありますが、将来的にエンジニアはピット作業の設定も担うようになり、これによりタイヤの状態把握や本数管理などは全てエンジニアにお任せできるようになります。

ただし、これはあくまでチームエントリーする場合のお話。一人で走ることの多い1～2時間程度のレースでは、ドライバーにも高いタイヤ知識/管理能力が求められます。

路面の変化

RealRoad技術

RealRoadはLMUに搭載される路面情報技術を指し、これにより路面上のラバーや雨天時/雨天後の水分量などが記録されます。

路面にラバーが付着する際は、車両がレーシングスピードで走行している部分に蓄積され、そして雨が降るとラバーは流されてしまいます。

ドライコンディションになると路面は再び動的に変化し、車両が走行する場所を中心に乾いていきます。

スタート時のグリップ

Race Weekend、Co-opイベント、オンラインサーバーの設定/JOIN画面では、下記の路面状態を目にすることになります。

Green：ラバーなし、非常に滑りやすい
Light：若干のグリップあり
Medium：ラバーあり
Heavy：かなりのラバーあり
Saturated：最大のグリップを発揮

イベントでは”natural”という設定を見ることもあります。これは一つ前のセッションから路面状態が自然に継続されることを意味します。

RealRoad Wet

セッション設定には”RealRoad Wet”という項目があります。これはセッションが始まる前のサーキットにどの程度の水分量が既にあるかを設定することが出来ます。ここではdry、damp(お湿り)、Slightly wet(ちょい濡れ)、wet、very wet、extremely wetの6段階で設定することが出来ます。

RealRoad Time Scale

この設定ではRealRoadの進行を、現実的なものからどれぐらい早くするかについて、最大15倍、もしくは完了したセッションの%で設定が可能です。

さらには練習などでラバーレベルを変化させたくない場合、”static”に設定することでグリップレベルを一定に保つことも可能です。

車両機能

Brake Bias / Migration

Brake bias

LMU(rF2)でのブレーキ・バイアスは、マスターシリンダから前後ブレーキシステムに伝える力の配分が表記されます(他シムでは前後ブレーキトルク割合自体となることがあります)。

例えば、LMUのベースとなるrFactor2のGT500 GT-R 2013では、

Brake torque 62.9:37.1 = Brake bias 50:50

と表記されます。

LMUでのブレーキトルク配分はゲーム内では公表されていません。ドライバーは自身のフィーリングを信じ、少しずつバイアスセットアップを進めてください。

Brake Migration

ブレーキ・マイグレーションは、ペダルトラベル(踏力)に対しバイアスを動的に変化させる役割を持ちます。LMHやLMDh車両の殆どに搭載されており、急激なダウンフォース変化などによるタイヤロックを防止します。

ブレーキペダルトラベルが0%の場合、biasは数値のままとなります。そしてトラベルが100%になると、Migrationの数値分バイアスが移動します。

画像例(54.6:45.5、1.0%F)の場合、biasはこのように変化します。

トラベル0%時
- 54.6：45.4
トラベル50%時
- 55.1：44.9
トラベル100%時
- 55.6：44.4

この例ではマイグレーションはフロントに移動させていますが、車種、コース、セッティングによっては後ろに移動させることもあります。

TCS－トラクションコントロールシステム

LMUのトラクションコントロールはゲームの追加アシストではなく、車両装置の一部として機能します。

LMUのTCSには3種類の調整項目があります。

Onboard TC：TCSが作動するスリップ量しきい値
Onboard TC Power Cut：TCS作動時のカット量
Onboard TC slip angle：TCがアクティブになる横方向スリップ量

TCSはガレージ及びMFDのELECTRONICSの双方で変更できます。

ABS－アンチロックブレーキシステム(GT3のみ)

ABSはブレーキペダルの踏み込みが”強すぎる”場合に、タイヤのロックアップを未然に防ぐ機能です。LMUのABSはGT3にのみ標準搭載されます。他クラスではアシスト機能でABSを使うこともできますが、オンラインでは使用を禁止されることもあります。

LMUでは2025年6月のゲームアップデートより、現実レースで使用されるABSマップを再現するようになりました。”1~10=弱～強”のようなABS効果/強度の変化ではなく、各チーム、マニュファクチャラーはABSを挙動調整に使用します。

下表はLMUウェブサイトに掲載されるABSマッピング解説を要訳したものです。ドライバーは自身のドライビングスタイルと車両特性の微調整にABSを使用することができます。

ABSのマッピングとブレーキバイアスを同時に変更するとバランスを崩すことがあります。まずは自身のニーズに合ったABSマップを見つけ、その後にバイアスを調整してください。

ゲーム機能

HUD

LMUのHUD(ヘッドアップディスプレイ)はWECに特化した作りになっており、通常のレースゲームと違う部分も多くなります。HUD設定はSETTINGS>GAMEPLAY>HUDで表示方法のカスタマイズが可能です。お好みで調整してください。

Standings(画面左上)
- 順位表示です。全体順位ではなく自車クラスのみが表示されます。他車メーカー/ドライバー名、タイヤ、残NRG％が表示されます。
Map(画面左中間)
- サーキットのマップ表示です。Cycle mapボタンを設定しておくと、走行中でも全体マップと近接マップの切り替えが可能です。
Radar(バーチャルミラー直下)
- レーダーは他車接近時のみ表示されます。距離が近づくに連れ色が変わります。
Sector Timing(右上)
- 周回数、最新/ベスト/現在のラップタイム、セクタータイム、デルタが表示されます。セクタータイムは自己ベストなら緑、全体ベストは紫で表示されます。
MFD(左下)
- MFDは様々な車両情報を表示/設定します(詳細は後述)。
Speedo(右下)
- スピードメーターには速度以外にも様々な情報が表示されます。
  - 上部赤LED：シフトタイミング
  - 円形バー：回転数イメージ
  - 数字(大)：選択中ギア
  - 速度：通常はKPH、設定でMPHにも変更可能
  - 緑/赤バー：アクセル/ブレーキ入力(開度)
  - メーター左側：車両ダメージ(黄：軽度、赤：重度、点滅：欠落)、タイヤ/ブレーキ温度(イメージ)、油温、水温
  - メーター下部：実燃料残量、NRG残量％
  - メーター内部記号：ヘッドライト、リミッター、チェックランプ、バッテリー残量(右側)

MFD

画面左下に表示される情報はMFD(マルチファンクションディスプレイ)と呼ばれ、レース中の様々な情報はここから入手/設定することができます。

Relative
- 前後の順位、クラス、ドライバー名、タイム差を表示します。LMUではラップダウンが多く、レース中は常に前後タイム差の確認が要求されます。
Track information
- 時間、天候、路面状況などのコース情報が表示されます。LMUでは路面温度がタイヤ温度に影響するため、特に夕方/夜間/雨天に突入するレースで注意しておく必要があります。また、ペナルティ情報もここで表示されます。
Timing
- 前周とのタイム差、クラスファステストなどが表示されます。
Tyres
- 使用中のタイヤコンパウンド、物理的残量、空気圧、タイヤ温度、ブレーキ温度が表示されます。LMUのタイヤは物理的な摩耗に加えて熱的な劣化が発生するため、物理的にタイヤが残っていてもグリップが低下することがあります。常に適切な温度を保ってください。
Fuel
- 燃料/NRG情報が表示されます。燃費を抑えて走りたい時に”Save Target”を設定すると、リフト&コーストでスロットルを離す最適タイミングが車両インジケータに表示されるようになります(紫に光ります)。
Electronics
- モーター(エンジン)マップ、TCS、ABS、ブレーキバイアスなどの電装系設定を行います。
Pitstop
- 次のピットインで行うピット作業、タイヤ交換、NRG補給量、ダメージ修理などを設定します。ドライバー交代があるレースでは、このメニューで次のドライバーを選択します。
Strategy
- Fuel、PitstopでMFDの右側に出現。ゲーム内エンジニアによる燃費計算情報、新品タイヤ本数、残り周回数などの情報が表示されます。

ドライビングサポート(アシスト)機能

Gameplay assistsを設定すると、ドライバーのレベルに合わせたドライビングサポートを行ってくれます。なお、オンラインレースではこれらのアシストが使用できない場合があります。詳細は各イベント毎にご確認ください。

*太字はオンラインでも使用可能レースが多い機能です

ABS (Anti-locking Braking System)
- ブレーキ時のタイヤロックを防ぎます－LMGT3では車両に標準搭載されるためアシスト機能は働きません。
Stability Control
- 横滑り防止、安定性が向上します。
Auto Shifting
- ギアチェンジを自動で行います。
Braking Help
- コーナー前でブレーキをサポートします。
Steering Help
- コーナー中のステアリング操作をサポートします。
Invulnerability
- 接触時など、ダメージが入らなくなります。
Opposite Lock
- スピンを防止します。
Spin Recovery
- 車両がスピンしたら車体を進行方向に回転させます。
Auto pitlane
- ピットイン/アウトをAIにお任せします。
Hold Brakes
- 操作が行われるまでブレーキホールドします。
Hold Clutch
- 操作が行われるまでクラッチホールドします。
Auto Start Engine
- ガレージやグリッドなどで自動的にエンジンをスタートさせます(コース上でのエンスト時は別)。
Auto Windscreen Wipers
- 雨量に応じワイパーが自動的に動きます。
Auto Headlights
- 暗くなったら自動的にヘッドライトが点灯します。
Auto Reverse
- ブレーキ時に自動的にリバースギアに入ります。オートシフト使用時のみ。
Auto Pit Speed Limiter
- ピットレーンラインを跨いだ瞬間に自動的にリミッターをONにします。注：ピット入口での減速機能ではありません。

Le Mans Ultimate 用語・機能解説