http://smart.discussvision.net/smart/tenant/odawara/WebView/rd/speech.html?year=2019&council_id=25&schedule_id=3&playlist_id=0&speaker_id=0


映像は28分~約1時間です。

 

 

4番小谷英次郎、初陣にて、令和元年度小田原市議会の先陣を務めせていただきます。

 

私はかつて日本史と世界史の教師として、ここ小田原で教鞭をとる高等学校教諭でした。すべては教材研究のためだけに、47都道府県、世界約160の国と地域、千を超える街を旅してきた経験がございます。特にアフリカや中東のスラム地区で暮らしていた際、様々なことを考えました。紛争・テロ・飢餓・病苦・交通事故のたえない地域が世界には数多くございます。なぜテロが起こるのか?テロリストとはどういった人達なのか?調べました。

すると、その大きな要因として挙げられるのが「貧困」であるとわかりました。テロリストの多くは貧困にあえぐ若者であるという現実を知りました。家庭を持てず自己肯定感の低い若者、社会に希望を抱けず、自身の生命をかえりみない若者なのです。

そしてもう一つの大きな要因が「無知」です。世界には、子どもを支配するために「教育」から子どもを遠ざけ、「無知」を植え付けるという事例が数多ございます。民族紛争のたえないアフリカで散見される少年兵。幼少期より学問から遠ざけられ、ただ人を殺めるだけの戦士として育てられた子ども達です。ナイジェリアのテロ組織であるボコハラム。2014年、西洋式教育や現代科学、ダーウィン主義に反対し、女子生徒240人を誘拐しました。20世紀末には、カンボジアのポルポト政権。その独裁体制を維持するために愚民政策を敷き、知識人を虐殺、子ども達に、農村での過酷な労働や軍務を強制しました。

「教育」を受けるということは、誰かのいいなりになるのではなく、自分の頭で物事を考え、判断する力を培うということです。世界放浪の果て、世界のあらゆる課題の行きつく先には貧困がある。貧困解消の最大のカギこそ、教育であると結論付け、帰国後、私は、教職に就きました。

一方で、日本社会の現状です。まさに私のような若者世代が直面した就職氷河期、2000年代初頭より世界的規模での経済停滞は格差を生み、国内においても深刻を極め、若者世代、特に未来を担うべき国の宝であるはずの子どもの貧困の課題が浮き彫りになって久しくあります。

初任校で縁を頂いたここ小田原から異動する際、私は、自らの問題意識であった貧困層に属する子どもが多くいる定時制高校へ異動を志願。その現場を目の当たりにしました。幼少期から義務教育時代を通し、不登校ややんちゃが過ぎて、ほとんど学校に通えて来なかったという子達の低学力、背景に親の不在、生活保護家庭。入試で名前だけ記入し0点で入学してくる子の存在。高校の勉強が理解できず、退学する子は全体の4割に達するという実態。貧困が教育機会を喪失させ、教育機会の喪失が貧困を再生産する現場に直面いたしました。

 幼少期、義務養育段階と大人たちに大切にされる機会を逸してしまった15歳、16歳の子ども達。学校をドロップアウトしていく彼ら彼女らには、まさに義務教育段階、就学前の幼少期の段階に、大人から、社会から、徹底的に、大切にされる経験をしなければならないと思いいたりました。この課題は義務教育の枠をこえ、行政、特に福祉と子育て支援と幅広く連携して取り組まねばならぬ問題だと痛感いたしております。

そこで私は、人生初の、この一般質問において、「子どもの貧困」の問題と「教育」の問題の2点を、扱わせていただくことにいたしました。

まずは大項目1子どもの貧困について

(1)本市における子どもの貧困の実態をどのように捉えているのかをお伺いいたします。平成28年度に国が実施した国民生活基礎調査において、子どもの貧困率は国全体で13.9%、子どもの7人に1人が貧困状態にあると言われていますが、国の調査以外にも本市独自の調査は行われているのでしょうか?

所得としては貧困とみなされていなくても、児童虐待を受けている、ネグレクトを受けているなど、物や経験、食事を含めて子どもらしい生活が剥奪されていないかという視点が、子どもの貧困の問題には大切だと考えます。このような視点を踏まえたうえで、本市における子どもの貧困の割合と現状についてお伺いいたします。

(2)本市における子どもの貧困に対する総合的な対策についてお伺いいたします。

過去の小田原市議会の中でも、何度かこの問題が取り扱われてきた経緯を議事録ですべて拝見させていただきましたが、小田原市の子どもの貧困の問題を改善に向かわせるために、政策としてどのような取組を進めているのかお尋ねいたします。

次に、大項目2としまして、学校教育の充実についてお伺いいたします。
(1)安心安全で快適な教育環境の整備について
 先日ある公立中学校の先生から、校舎のトイレが壊れたままになっているのに、いつまでたっても修理をして貰えないという話を聞きました。また避難所に指定されていて多くの市民が使う可能性があるのにトイレが洋式化されていないという話も聞きました。また学校施設が老朽化しており、修繕をお願いしたいとの声を市内小中学校の多くの先生や保護者の方から聞いております。そこで、学校施設の老朽化及びトイレ洋式化等の改修要望に対して、どのように改修を進めていくのかお伺いします。また、普通教室へのエアコン設置に対して、現場ではたいへん助かっているという声を多くいただきましたが、まだ特別教室などエアコンがついていない部屋が多く、生徒が安心安全で快適に授業を受けられていないケースも多いという話を聞きました。そこで、特別教室への空調設備の設置について、今後どのように進めていくのかお伺いいたします。

(2)教職員の多忙化解消に向けた本市の総合的な取り組みについてお伺いいたします。

私は公立の高等学校に11年間勤務しておりましたが、教員には日々の授業と学級経営以外にも、校務分掌があり、部活動があり、さらに生徒指導、保護者対応、入試に関わる業務、成績業務などがあります。会計まで担当していた際は、これは本当に教師のやるべき仕事なのだろうかと疑問に思ったことがあります。小田原高校に勤務していた際、朝は会議までの電話対応などで7時代に出勤。放課後は当時の生徒が下校する19時半まで校内分掌の仕事と部活動で忙殺され、19時半になって初めて、授業準備ができるという状態でした。私は高等学校教諭でしたが、業務の多さは高等学校より義務教育の方が遥かに膨大であると聞きます。

私と同い年の友人である2人の教育者の話をさせてください。1人は2019317日にTBS情熱大陸に出演した私塾経営者です。義務教育段階の子ども達の興味・関心をひきつけ、「勉強はゲームなんかよりも面白い」と子どもの目を輝かせる魅力的な授業づくりの天才です。書籍も多数あります。社員教育を徹底していて、どうしたら授業で子どもの目を輝かせられるか、執拗に研究と研修を繰り返しているようです。もう1人は御三家といわれる東京都内の有名私立高校に勤務する高校教師です。超進学校で「生徒の学力レベルが高すぎて授業準備が本当にたいへん」だとのことですが、「カウンセラーなど相談制度が充実していて生徒指導もない。事務員が充実していて校務分掌もない。部活動も専門のインストラクターがいてやることがない。授業研究はたいへんだが労働時間のすべてを生徒と共に過ごすこと、そして授業づくりに充てられている。夏季休業中は30日間、日本を離れて外国に授業研究に行っても、管理職に注意されるどころか大手をふるっていってこいと言われる。」そんな話を私にしてくれました。

この2つの事例は、一部の人しか入ることのできない狭き門である都内の有名私立校や有名私塾で働いている教師は、授業づくりにのみ専念できる環境が与えられているということを示しています。教師であれば誰もが、給与面の待遇以上に、子どもの成長に携わりたい、子どもの心を震わせられる授業がしたいと思うのは当たり前のことだと思います。

私の教え子には公立の教師になった子が多くいます。今回の一般質問の前に、私は20代の現役の教師たちと一人一人会い、話を聞きました。その半数は小田原市内で勤務をしておりますが、定時に職場を出られている子はたった一人もいませんでした。2021時まで働いているのは当たり前。皆が一様に、定時になって初めて授業準備に取りかかれると申しておりました。

私は定時制高校勤務時代、名前だけ記入して0点で入学してくる子がいる現状に対し、義務教育はいったい何をやっているのだと憤ったことが何度もありましたが、そういった小学校中学校の先生の多忙な現状を聞いていると、到底すべての子どもに行き届いた支援などできないということを痛感いたしました。

このままでは、未来を担う子ども達の教育に携わる先生が疲弊し、魅力的な授業づくりができず、さらにはなりて不足、教員の質の低下にもダイレクトに繋がってしまいます。現に公立の教員採用試験の倍率がこの10数年で急降下しております。公教育の一番の問題は、現在の子ども達を取り巻く教育課題が多岐にわたり、複雑化しているにも関わらず、現場の教師は多忙で、それに対応できるスキルを身に着けられない事にあります。裕福な家庭は子どもを有名私塾に入れられる。一般家庭、貧困家庭は、公立を選択するしかないのです。公教育の立て直しには、教員の多忙化解消が必須です。そのうえで教師が充分な研鑽を積み、授業づくりに専念し、プロとして魅力的な授業を作り出せるような環境を創出していかなければならないと私は考えます。そこで、本市の教職員の多忙化の現状と問題をどのように捉えているかをお伺いいたします。また多忙化解消に向け、どのような取り組みをしているかお伺いいたします。さらに、これまでの取り組みが多忙化解消の方向に向かっているかお伺いいたします。

大項目の3 主権者教育について

「シルバー民主主義」という用語を百科事典で調べました。「有権者全体の中で高い割合を占める高齢者向けの施策が優先される政治のこと」とありました。続けると、「2030代の有権者の投票率が極端に低いことから、政治家も高齢者の声に耳を傾けがちになり、高齢者の声が通りやすい政治が現出した。国政の場よりも深刻なのが地方自治体で、保育園の増設、小学校の耐震補強などの予算よりも、高齢者向け予算が優先される事態が頻発している。最大の問題点は、若年層の福祉を意図的に軽視することである。たとえば、正社員としての就職がかなわず短期の派遣社員として不安定な生活を送る若者に対し、『本人のやる気不足』『親の教育の問題』といった精神論でかたづけ、構造的問題としてとらえることを避けようとする。これが日本の活力をそぎ、長期にわたる経済の低迷を招いていると指摘する識者も多い。」とありました。私自身、超就職氷河期を経験した若者世代の代表として、この解説を読んだときに思わず唸ってしまいました。

20174月の資料、財務所の「これからの日本のために財政を考える」によりますと、世代間での国家予算の組まれ方の不均衡が説明されています。確かにシニア層への予算と比べて、子ども・子育てや若年層への福祉の予算が低すぎるのは明らかです。

 たいへん問題なのは、こういった現状にあっても、若者が政治に無関心であることです。特にこの場所にいらっしゃる皆様は、肌で感じられていることと思います。平成29年の衆議院選挙において70代以上の投票率が60.94%、60代が72.04%であるのに対し、30代は44.75%、20代にいたっては33.85%しか投票に行っていないという現実がございます。最も市民の生活に近いはずの先の小田原市議会議員選挙においても、世代間ではデータがありませんが、全体の投票率42.13%、県議選にいたっては36.7%しかないという、これは民主主義において、非常に危機的状況であると思います。フランス革命の前夜、ルイ15世の愛人であるポンパドゥール夫人は、アンシャンレジームという完全に立ち行かなくなった旧制度を自覚しながら「われらの後に、洪水よ、来たれ。」と述べました。今後の日本、そして地方政治が、長期的な視野でもって諸課題に挑んでいくためには、何としても、若年層の政治参加が必要です。そこで、大項目の3、本市の小中学校における主権者教育への取組と選挙啓発活動についてお伺いいたします。教育現場において、どれだけ政治参加への重要性を伝えられているのでしょうか?

最後になります。今回の小田原市議会議員選挙に私が立候補したのは、「教育」「子育て支援」をはじめとする、マニフェストに掲げた政策の一つ一つを実行したいということはもちろんですが、実は一番の理由は、私が政治家になることで、私のすべての教え子たちに、少しでも政治に関心を持ってもらいたかったからなのです。

イギリスのトニーブレア元首相は、演説の最後を必ずこうしめくくったといいます。

education education education

私も今回だけは、それにならいたいと思います。

私は、たとえこの先ずっと政治の道を歩もうとも、生涯一、教育者であります。