3月にこんな記事を書きました。

するとコメントにて岡本綺堂なる人の小説が面白い、といただき、

しばらく後に中古で本を購入、最近やっと読み終えました。

 

 

ご紹介いただきありがとうございましたビックリマーク

 

 

岡本綺堂(おかもと きどう、1872年11月15日明治5年10月15日) - 

1939年3月1日)は、日本の小説家劇作家

本名は岡本 敬二(おかもと けいじ)。

別号に狂綺堂、鬼菫、甲字楼など。新歌舞伎の作者として知られ、

また著名な作品として小説「半七捕物帳」などがある。

 

岡本綺堂は明治初期に生まれた元御家人の子息。

幼少時から漢詩を習うなど、非凡な才能があったようです。

 

しかし大学へは行かず、新聞社で記者として働くかたわら

戯曲などを書き、後に作家として独立したそうです。

このためか、凛としてとても端正な文章を書く方です。

 

 

 

ざっくりあらすじ。

 

平安時代。

烏帽子売りの叔父叔母夫婦の元で暮らす少年千枝松(通称千枝ま)は、

近所の藻(みずく)という美少女と仲良し。

 

藻の父親は武家であったが任務失敗で追放され、妻をなくし体も壊し、

貧しい暮らしを余儀なくされていた。

 

もうすぐ大人として働ける藻は、千枝まの叔母に烏帽子作りを習いたいという。

それを千枝まが売ればつましくも生活が成り立つ。

 

藻に気持ちをはっきり打ち明けたことのない千枝まは、

そんな夫婦のような未来図に、思わずデレちゃいます。

 

 

はい、もうここで尊い(笑)

 

 

ちなみに千枝まもイケメンです。

こんなかわいいカポーがどうして変わってしまうのかショボーン

 

 

ある日、遅い時刻になっても現れない藻に不安を覚えた千枝まは、

必死の捜索をする。すると古塚と呼ばれる森奥で藻を発見する。

無事を喜ぶ千枝ま。だが藻は以来、性格が変わったように見えるのだった。

 

間もなく、ときの関白が出した難解なお題の歌を、あっけなく詠んでみせた藻。

すっかり関白に気に入られ、召し上げも確実となる。

 

千枝まはなぜか体調を崩し続け、別れの予感に苦しむが、藻はそっけない。

同時に藻の異様な行動を見た人物が突然死ぬなど、不穏なまま彼女は宮中に。

 

喪失感から千枝まは自害しようとするが、それを止めたのは陰陽師だった。

そのまま安倍晴明の子孫である泰親に弟子入りした千枝まは、

名を千枝太郎と改め、陰陽師の修行にはげむこととなる。

 

一方の藻は美貌と才覚で宮中の影響力を増し、玉藻の前と呼ばれるように。

しかし甘言でもって関白には自分を帝に召し上げるようそそのかし、

それによって弟との権力争いを引き起こし消耗させていく。

 

また玉藻に恋心を抱く者が決闘の果て二人とも死んだり、

偉大な阿闍梨(密教の高僧)をひと目で狂わせるなど、

周囲で異常な事象が次々と起こっていくのだった。

 

ここら辺の描写がほんと怖いです。岡本綺堂は短編ホラーの名手でもあります。

 

 

 

 

 

やがて玉藻の前こそ諸悪の根源と判明したものの、

強力な陰陽師である泰親をもってしても、結局討伐は叶わず。

責を問われた泰親は軟禁状態になり、千枝太郎は勘当されてしまう。

 

玉藻が悪いのだと理解しても、それでも憎み切れない千枝太郎です。

烏帽子売りに戻って出会った坂東武士の孫娘に惹かれつつ、

モヤモヤとした日々を送ります。

この孫娘が短い出番ながら、悪霊にキリリと対峙する描写がかっこいいドキドキ

 

坂東は関東地方あたりを指します。

この時代の関東人なんて、京からしたらバーバリアンに見えたことでしょう。

 

 

そんな千枝太郎に古塚の秘密を知らされた陰陽師泰親は、

再び千枝太郎を弟子に戻し、討伐の機を逃さなかった。

古塚で祈祷をすると、宮中の玉藻は恐ろしい現象と共に姿を消す。

 

しばらく後、東国の那須野が原で人を襲う狐が現れる。

これも東国に派遣した武士と京の陰陽師とで討伐、大きな石に姿を変えたという。

消耗した泰親は床に臥せたが、看病もそこそこに千枝太郎が失踪する。

 

「彼はおそらく那須野へ行ったのであろう。

所詮かれの面にあやかしの相は消えぬ。

これも逃れぬ宿世の業じゃ」

 

 

 

那須野が原に来た千枝太郎は、大石の前で言います。

最初から悪魔の味方をし、愛し、共に滅べば良かったと悔やむのです。

先のセリフで泰親は千枝太郎の闇を見抜いてたことがわかりますが、

いやあとんでもねぇ中身だったワケですよビックリマーク

 

しかしドロドロの本音を吐いた千枝太郎に、玉藻の霊は手を差しだします。

闇落ちと言えばそれまで、でも彼はこれで浄化されたのかもしれません。

 

 

 

九尾の狐伝説をベースにした、恐ろしくも美しいお話でした。

何度かコミック化もされてるようで、確かにビジュアルが目に浮かぶような

読みやすい小説でした。

 

以上、那須野が原に生息するやさい屋菜園でした。