ファクトのフライヤーを配っていたら、席で笑っている女の子がいて、
僕を知っていると言いたげなオーラを放っていたので
会ったことあったっけと聞いたら、うんと答え
だってドーナに来るじゃないと言った。
それで、翌日、その子に会おうとドーナに行ったらその子はいて、
その日から仲良くなった。名前は、
トモというと言った。
付き合っている人は、いないような感じにふるまっていた。
ファクトのフライヤーを配っていたら、席で笑っている女の子がいて、
僕を知っていると言いたげなオーラを放っていたので
会ったことあったっけと聞いたら、うんと答え
だってドーナに来るじゃないと言った。
それで、翌日、その子に会おうとドーナに行ったらその子はいて、
その日から仲良くなった。名前は、
トモというと言った。
付き合っている人は、いないような感じにふるまっていた。
来年にはお腹の中に入れてね、再来年には生むの、と自分のお腹の辺りをさすりながらアケさんは言った。まだ妊娠もしていないのに。でも結局その一言で、 アケさんが僕と、どうなろうこうなろうとしているわけではないことが僕にもはっきり理解できた。そりゃそうだな、旦那がい て、その人をちゃんと愛しているのに7つも年下の高校2年生の僕と、どうなろうこうなろうなんて考えるはずもないのだ。なのになんでアケさんはあんなに親切で、いちいち優しいんだろう・・・・?理由なんてきっと無いんだな。アケさんは、ただ優しいだけなんだ。次の週の水曜日から僕は旅に出た。旅から戻ると、夏休みも終わり、2学期が始まってすでに2週間が経っていた。
「かすりやさん」と母が呼んでいたので、それが、あのおばあちゃんの名前だと思っていた。
「絣屋さん」だったのだなと、今ならわかる。
絣・・・白地や藍染め地に、十字や細かい線などをちりばめた幾何学模様が特徴的な着物の総称。
おばあちゃんは、そういうものを売っている店の人だった。
おじいちゃんもいた。
夫婦で商売をされていたのだな。
藍染め地に、十字や線などの幾何学模様。そんな商品が店内に並んでいた風景を覚えている。
複数の足袋が吊り下げて陳列されていた、その「白」を覚えている。
おばあちゃんが、どのあたりに、どんなふうに座っていて、どんなふうに腰を上げたかを覚えている。
我が家と、おばあちゃんの店の間に、たぶんコンクリートで出来た、狭くて暗い10メートルほどの通路があって、
この通路の行き止まりがが、この建物全体の、共同便所になっていた。
怖くて恐ろしくて、そこは、とても一人では立ち入れない場所だった。