----------
そう言えば先日医師に確認したところ
死んでしまっても筋肉は弛まず
手足はあのままなのだという。
しかしそれでは棺に納まらないため
恐らく葬儀屋が骨を折り
伸ばすでしょう、とのことだった。
ぎりぎりと力を込めて伸ばされ
骨の折れる音が聞こえた気がした。
2年前の肺炎で、呼吸が出来なくなった母は
のどに孔を穿たれ
生き長らえた。
それをすれば声が出せなくなると聞いたわたしは大いに動揺したが
電話による兄の一存で処置は施され
その時点で既に「言葉」を発することが出来なくなっていたとはいえ
母は呻き声すら奪われてしまった。
調子が良くなって管を外せばまた、声は出せますから、
当時医師に言われた言葉を信じて
いつかは、と思っていた。
薄いタオルケットを被せられていれば
上半身だけの肉塊に見える
その顔は骸骨そのものだ。
現実はこんなにも残酷で
目を背けることも許されない。
けれどじたばたしてはいけない。
深い深い水の底でうずくまっていなければ。
溜まりにたまった汚泥を撒き散らして
小さく無邪気な魚が泳ぐ
上澄みまで汚すわけにはいかないのだから。
----------