本日、11月21日に渡辺直人選手が古巣である楽天ゴールデンイーグルスへ復帰する事が発表されました。

https://www.rakuteneagles.jp/news/detail/00000831.html

 

 

思えば10月6日に戦力外通告を受け、このままコーチになるのかと思いきや、10月10日のスポーツニッポンには

 

>球団から事前の話し合いもなく、またポストも用意されずに他の若手同様「戦力外」と告げられただけだという。

 

との記事があり、ライオンズファンからは「そんなはずはない!」と記事に関して懐疑的な方や、「仮に本当であればフロントの判断間違っている!」と激怒される方が多かったように思えます。

 

渡辺直人選手自身「ライオンズで死のうと思っていた」と語るほど、ライオンズ愛を表明しており、嘘であって欲しいと思っていましたが、10月21日に同じく戦力外通告を受けた上本達之選手がブルペン捕手に、鬼崎裕司選手が育成コーチに就任することが発表されたことで、「あ、本当にコーチへの就任オファーはしていないんだ」と再確認することに。

 

ただこの頃から、イーグルスが獲得の意思ありとの記事が出るようになり、結果的には松井稼頭央選手と入れ替わるようにイーグルスへ復帰することになりました。

 

このいきさつに関しては、両球団が偶然、戦力外にすることが一致し「だったら獲得しよう」となったのか、両球団がトレードだと年俸など色々引き継がなければいけない問題があるので、いったん戦力外にして、改めて双方で契約し直しましょう。となったのか分かりませんが、元々の半額近い年俸で獲得できたわけですから、何かしらのやり取りがあったのかも知れません。

 

 

 

しかし渡辺直人選手がライオンズファンからここまで愛された理由は何だったのでしょう?

 

僕が好きだったのjは、

・周りが見えていること

・自己犠牲のプレーが出来ること

・常にひたむきであること

この3つでした。

 

周りが見えていると言われて真っ先に思い出すのが、マウンドへ行って声を掛ける姿でした。

 

>「守っていても、野手も不安で、周りが見えなくなるから。たまに競っている場面で、本塁打とか打たれると、放心状態になるんだけど。

『いやいや、待てよ。お前より、投手の方が大変だから、行ってこいよ』って。(頭の後ろの)この辺に、もう1人の自分がいる」

 

これは3年前の2014年に「週刊ベースボール」の特集記事で答えている渡辺直人選手の言葉ですが、 中島裕之(現宏之)選手や片岡治大選手が移籍して以来、声を掛けに行く選手が減っていた事もあり、こういった姿勢は当事者でもないのに「直人、ありがとう」とお礼を言いたいたような気分でした。

 

そしてこの考えは若い選手にも引き継がれており、特に浅村栄斗選手に対してはチームの中心選手として「声を掛けに行く大切さ」を伝えていました。

 

BASEBALLKING「“強いライオンズ”の復活へ…最後に見えた二つの光」(2016年10月12日)

>「年齢とか関係なく、『勝ちたい』とか、『ピッチャーを励ましたい』という気持ちがあれば自然と体が動く。そういう部分で(浅村は)成長したんじゃないかな」と話すのは渡辺直人。ベテランの目にもその姿はしっかりと映っていた。

 

NumberWEB「『松坂世代』生き残りは18人――。西武・渡辺直人、衰えぬ闘争心」(2016年12月30日)

>ピンチを迎えたピッチャーが、マウンドで孤立する試合が目立った序盤に比べ、後半戦は同じような戦況で、浅村が積極的に声をかけに行くシーンが増えた。

「小さなことですけど、ああいう場面は、行かなくてもいいと言われればいい。自分のプレーに徹すれば、それはそれでいいんですよね。でも、誰かのために、チームのために動くのは、いずれその積み重ねが責任感になって自分に戻ってきます。自分にも経験があるんですけど、ああいうときってなかなか動けないものなんです。

ピッチャーのピンチは、チームのピンチでもある。ピッチャーだけではなく、誰もがピンチだと感じているので、緊張もするし、視野が狭くなる。みんな気持ちは同じなんですよ」

 

 

昨シーズンから浅村選手が渡辺直人選手にくっついているシーンを何度も見ましたが、どちらかと言えばマイペースで引っ込み思案な浅村選手が渡辺直人選手のこういった姿勢をくみ取って動く。

辻監督がキャプテン向きではないと言われる浅村選手をキャプテンに指名したのも、これが狙いだろうし、先輩であっても気兼ねなく叱咤激励できるようになれば、更に頼もしい選手になってくれるはずです。

 

 

そして自己犠牲で言うと「無駄になるアウトにはならない」という、現役では残り少なくなった野村克也元監督の教えを忠実に守る野球スタイルであり、それは「打てないのなら当たってでも出塁する」というプレーにも表れています。

 

 

死球の数は現在96個。日本野球機構に掲載されている「通算死球記録」では22位にランクインしており、試合数で換算すると、10.9試合に一個と4位に相当するハイペースです。

 

1位:C.ラロッカ(5.3試合)

2位:竹之内雅史(8.3試合)

3位:A.バルディリス(10.8試合)

4位:渡辺直人(10.9試合)

5位:井上弘昭(11.2試合)

 

 

この為、内角へボールが来ると、当たりに行こうと身体を内側に入れるので、フロントドアと言われる右投手が投げるインスラを見逃してしまう悪癖がありましたが、これはご愛嬌と言う事で。

 

 

そしてひたむきさに関しては、社会人時代に会社の不祥事によって活動自粛の経験もしており、

>選手は全国の工場や営業所に散らばり、クレーム処理やリコール車の点検を手伝った。渡辺も名古屋に派遣され、作業服は汗と油にまみれた。「メカニックのチームで。3カ月くらいだったけど、帰るときに泣いたね」。再び野球ができる喜びより、出会った仲間と離れる寂しさがこみ上げた。 

 

と社会人時代の苦労を語っていますし、紆余曲折の末、ベイスターズへ来たものの、二軍生活が長くなり「プロ野球選手としてもう終わりかも」と沈んでいたところ、ライオンズから声を掛けて(拾って)もらった事。

本人にとっては「ライオンズはお前が必要なんだ」と言ってくれた(意思表示してくれた)ことが何よりうれしく、それが「ライオンズで死ぬ」つもりで働けた理由なんだと思います。

NumberWEB「2度のトレードを経て西武入りの32歳。ジャーニーマン・渡辺直人の“愛着”」(2013年8月6日))

 

 

 

返す返すもライオンズを戦力外になった事、というよりライオンズが戦力外にしたことは残念ですが、今シーズン辻監督に代わって推し進めてきた世代交代の為には致し方ないところがあります。

渡辺直人選手の出番を制限したことで、源田壮亮選手がフルイニング出場し、外崎修汰選手が規定打席に到達し、先日行われた「アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」では大会MVPに輝き、山川穂高選手はチームでも代表でも4番を任されるほどになりました。

 

そう言えば山川選手覚醒の陰には渡辺直人選手の助言がありました。

 

沖縄タイムス「『ばかか』西武・山川を目覚めさせた先輩の一言 “おかわり2世” 今季30本塁打を宣言」(2017年2月17日)

>浮上のきっかけはチームメートのベテラン・渡辺直人の一言だった。昨年8月、渡辺に変化球の多い投手への対策を問われて「引きつけて反対方向に打つ」と答えると、「ばかか。2軍ではホームランにするだろ。なんで1軍でやらない」と一喝された。「『ホームランバッターなんだから、ホームランを狙え』と。目が覚めた」。その日のロッテ戦で2打席連続本塁打と活躍。快進撃が始まった。

 

東京スポーツ「西武59年ぶり13連勝!山川大爆発のきっかけとは」(2017年8月5日)

>大爆発の裏には先輩からの的確なアドバイスがあった。

「今まで進塁打を意識しすぎて自分の打撃を忘れていた」という山川は「楽天戦の初戦(8月1日)の第二打席(無死二塁)で遊ゴロを打った後、渡辺直人さんに「『何やってんだよ!そういうの(進塁打)は俺たちがやるから、お前は右中間に大きいのを打てばいいんだよ』と言われた」と明かす。

「それからです。後悔しないように自分が納得する打撃をしようと思ったのは」。

これで本来の打撃を取り戻した山川は翌2日の楽天戦で3打席連続アーチを放つなど、ライオンズ59年ぶり快挙の助演男優を務めた

 

 

チームが強くなるためには伸びしろの多い若手の台頭は必須です。その為にはベテランの働き場所を奪ってでも。

残念ではありますが渡辺直人選手はユニフォームを脱ぐわけでもなく、来年からは古巣のイーグルスでプレーを続けます。

 

 

2010年12月9日、誰もが予想だにしないタイミングでベイスターズへのトレードが決まり、師匠と慕っていた鉄平選手は自身の契約更改をそっちのけで説明を求め、嶋基宏選手や草野大輔選手は悔し涙を浮かべるなど、チーム内に動揺が走りました。

 

NumberWEB「人気と戦力以外に必要なことがある!楽天が渡辺直人と共に放出したもの」(2010年12月14日)

 

NumberWEB「楽天・渡辺、涙の移籍。~“野村門下生”尾花監督の下へ~」(2011年1月10日)

 

 

それから7年、その当時の現役選手は数えるほどになりましたが、その時涙した嶋基宏選手は相談相手が戻ってくることに安堵と喜びでひとしおでしょう。

 

そしてイーグルスファンにとっても。

 

 

>一部のファンが営利目的のためネットオークションで売却していたことを知った球団が公式イベント以外でのサインはしないよう全選手に通達した。

だが、渡辺直だけはサインをし続けた。

関係者の話によれば、球団が困惑しながらやめるように言うと、彼はこう返答したという。

「100人にサインをして、99人がネットオークションで売ったとしても、ひとりだけ本当に喜んでくれるファンがいるかもしれない。だからやめません」

 

選手としても仕事のできる貴重な戦力でしたが、それ以上に人間性の素晴らしさがあったからこそ、多くのファンがいて、それがライオンズのユニフォームを着た現在であっても、声援を送られる所以でしょう。

 

 

ただ今までは「ライオンズの渡辺直人」である以上、活躍されたら困るし、活躍しなくても困る。応援はしたいけど、周りにいるイーグルスファンの手前、おおっぴらに応援は出来ない。と背中合わせな心境だったともいます。

 

しかし来シーズンからは大手を振って応援が出来ます。それは松井稼頭央選手に対するライオンズファンと同じでしょう。

 

来シーズン、Koboパーク宮城に渡辺直人選手が出場したら思う存分応援してあげてください。そして出来ることなら松井稼頭央選手が出場した時、最初だけでもいいので拍手で迎えてもらえると嬉しいです。

もちろん、ライオンズファンはその逆で、メットライフドームに渡辺直人選手が出場したら拍手で迎えたいですね。

 

 

渡辺直人選手にも松井稼頭央選手にも今度こそ、終の棲家になるであろうこのチームで完全燃焼してもらいたいものです。

 

 

では(。・ω・)ノ゙