ワンルーム坊主 | 坊主が屏風に上手に坊主の屁をこいた

ワンルーム坊主

『おい、俺に近寄るな!』

どうしたんだ、いきなり。

『お前、さっきイヤな咳をしてたよな!分かってるぞ、最近流行りのアレだろ』

新型インフルエンザか?
違うよ、俺のは咳じゃなくてくしゃみ。

『詭弁を使うな!』

大袈裟だな。
俺、鼻が弱くてさ、このところ朝夕の気温差が激しいから、その影響がモロに鼻にきて鼻水とくしゃみが止まらなくなるんだよ。

『なんだ、花粉症か』

人の話をちゃんと聞け!

『なあ、インフルエンザの流行なんて毎度の事なのに、どうして今回の新型だけ大騒ぎしてるんだ?』

新型だからだよ。

『…お前、俺を馬鹿だと思っておちょくってるな?』

馬鹿だとは思ってるけど、おちょくってはいないよ。

『ふむ、ならよろしい』

いいのかよ!
別に、馬鹿とも思ってないのに…。

『そんな枝葉の部分はいいから、話を続けろよ』

…枝葉なのか?
まあ、本人がいいって言うんならいいや。
だからさ、新型ってのは病気の傾向が分からないし予防の為のワクチンもないから、対応に慎重にならざるを得ないんだよ。

『お前、その割にマスクすらしてないな。ひょっとして死にたいのか?』

死にたかないけど、マスクで鼻と口を覆うと呼吸困難で死ぬ程苦しいんだよ。

『なんだ、どっちにしろ死ぬから諦めたのか』

死ぬか!
マスクに多少なりとも予防効果があるのは確かだろうけど完全じゃないし、そもそもこの新型が異常に致死率が高いというわけでもないんだから。

『なあ、今回ウィルスをばら撒いたのも、やっぱりマフィアの仕業かな?』

なんだそれ?
何かの陰謀論か?

『だって、香港とかソ連とか…』

名前からマフィアを想像してんじゃねえよ!
それは単なるインフルエンザの型で、原因がその国にあるわけじゃなく最初に発生が確認されただけの話だ!

『けど、いかにも悪そうだし…』

イメージで物を言うな!
それにマフィアってのはそもそも、イタリアのシチリア島の犯罪集団のみを指す言葉だ!

『マフィアって、なんだか美味しそう…』

お前は香港で「マフィン」と聞き間違えて「マフィア」に付いて行った釈ちゃんか!

『日本じゃまだ死人は出てないけど、よく分からない病気ってのは怖いね』

治療は従来のインフルエンザ同様の手段で、どうにかなってるみたいだけどな。
予防に関しては、通常だとワクチンの作製には半年くらい掛かるところを、国が製薬業者の尻を叩いて3~4ヶ月で作らせるらしいし。

『その頃には騒ぎも治まってるんじゃないか?』

だからって放っておく訳にもいかないだろ。
インフルエンザの流行は、また間違いなく来るんだから。

『けど次も今流行ってる新型が来るとは限らないだろ?』

まあな。
インフルエンザの予防接種ってのは一種のギャンブルみたいなもので、確実な予防策じゃないからね。
確か、保険も効かないし。

『俺は保険証自体が無いし』

知るか!

『一体、何処のアホがこんな面倒な病気を持ち込んだんだ?はた迷惑なブタ野郎だぜ!』

…誤解を招く発言は止めとけよ。
風評被害とか、色々あるから。

『でも日本で自然発生したんじゃないよな?』

そうだとは思うけど、断言は出来ないね。
関西地方でのみパンデミックが起こるという、よく分からない事態だし。

『なんかそれ、美味しそう…』

パンデミックってのは、爆発的に感染が広がる事だよ!

『まあ何はともあれ、お互いに気を付けようじゃないか』

そう言われても、気を付けようがないけどな。

『俺は大丈夫。馬鹿は風邪ひかないって言うし』

自分で言いやがった…。