朝日新聞の6月24日の記事

「東大 値上げ案の波紋」

という記事のわきに見出しがあった。

「優れた人材育てなければ国衰える」

という見出しのインタビュー記事が、

全然腑に落ちない。

 

直感的に、この人は政治家タイプだと思う。

何かを強力に進める力のある人。

少数の異論に配慮することではなく、

有力な少数をまとめれば、遅滞なく物事が進められると

知っていて、そういう力にたけた人。

 

この記事での発言はどうせ、切り取られた一部だろうから

真意は違う所にあるのだろうが、

感想を述べる自由はあろう。

 

なぜ値上げが必要かの問いに

「社会水準の向上には高等教育が必須。優れた人材を育てなければ国力は衰える」

という趣旨の発言をしている。

「優れた人材の育成には人件費がかかる」

ゆえに学費値上げは必要だという事らしい。

 

ここら辺は、まあ、大雑把に短く話さなければいけないので

分かりやすい言葉を短く発したので、説明の余地は残されているのだろうが、要旨には本音も見える。

 

まず、この塾長の発言は荒っぽい。

「優れた人材を育てなければ国力衰える。」

 

これ、もっともらしいが、検証が必要。

①「優れた人材」とは何を基準に判定されるのか。

 偏差値の高い大学出身の人を言うのか。

 自力で勉学に励み、大学にはいかないが世界的に評価される建築家になった人を言うのか。

 地方で、農業に従事し、国内の人の食料を支えた人か

 

物差しが、優秀さを決めるのだろうが、物差しはたくさんあるという前提がまずない。こういうわかりやすい「優秀」の設定をする人は、今の自分の立ち位置を有利に展開しようとする、基本的に自己中の人だ。ま、人間は基本的に自己中だから、驚くに値しないが。

 

② 国力が衰えることの原因をどう考えるのか。また、国力とは何を意味するのかの定義がはっきりしない。

 

国力をなにでみるのか。最近国力が衰えていると確認するのは、人口減との関連ではないか?円安で、日本国内の資力が減少したように見えるのは、人の問題というより、国の財政の問題が多きい。つまりは政治の問題だ。

かつて、高度経済成長とかがあったのは、人口があって、

労働者が均質で勤勉だったこと、そして、為替が日本に有利だったという、要するに発展途上国にしては、国民のポテンシャルが高かったという事だ。

 

しかし、この国民は均質で平均が高いのに、途上国のようだったという状況は、その当時優秀だった、政治家や軍部上層部の外交的に失敗したからで、戦争という手段を選んだからだ。つまり、優秀な人材は過去において、一時的に国力を高めたかもしれないが、その反動で、国を途上国状態まで貶めたという経験を持っている。

 

あるいは、ノーベル賞を獲得するような優秀な科学者もいるけれど、その人々が国内的に国力をあげたかは相当疑問だ。日本は科学者を優遇しない。世界的には評価されても、科学という一分野の有名人で終わることが多く、有名大学の教授の方が、知名度は高い。

 

つまり、優秀という定義は、身内集団の知名度による。

いまある、優秀とされる大学の教授は、何も世界的実績がなくてもすでに優秀だ。

 

そして、優秀というのは、研究者の場合、短い期間では判明しない。何十年もかかってようやく一つの事実が確認される。そういう基礎研究の積み重ねで、いつか花開く。それが社会に好影響を与える研究で、優秀かどうかは、生きている間には判明しないものも多い。さらに文系学問では、社会的に経済的に貢献度はほとんど検証できず、そういう文系学問をどう優秀認定するのか難しい。

 

だから、優秀な人材というのは、現在のところ、

有名大学に入れた、偏差値的に高い大学の学生という事になり、これはこれからの競争で公平には評価できない。

 

今定まってある、有力大学が残るシステムとして、

学費問題は、うまい疑似公平競争システムだ。

 

こういう、公平でないものを、公平という名のもとに語る人は政治家に多い。学問はそもそも競争するためにあるのではなかろう。

 

競争で淘汰されるというのは、企業論理で、

大学が企業という側面が強いので、そういう発言認識だというのは、いいと思う。

 

経営者としては優秀だが、学問を語るうえで、本当かという検証は必要だ。

 

今の日本が国力衰退の傾向が強いというのは、

おもに人口減少と高齢化、そして、円安という経済状況にある。

 

そして、この状況を作ってきたのは、今ある優秀な大学を出た優秀な政治家や教授や大企業の管理職の人々であろう。

 

だから、今のような、かつての優秀な人が競争によって導く社会は決して、非優秀な大多数の国民の不幸せの上に成り立っているという見方が足りない。

 

科学技術も便利にはなっているが、それが国民の幸せにつながっているかは、微妙だと思う。

 

ツールが優秀になれば、人はいらなくなるし、使える人材も限られるので、国民は上下に分割する。

そして、多分下の人が多い。

 

都会と地方もそうだ。

若くて優秀な人材は、勝手に都会に集中する。

これは競争ではなく、嗜好の問題だ。

地方にあらがえる価値観はない。

 

そして、この流れが、日本全体では、衰退につながっている。

 

こういう疑問にまったく答えず、今までの流れを強化しようとする発言は、政治的には正しいかもしれないが、

納得しない、下流国民はいる。