未熟者、という表題で自分自身の研修医時代の恥ずかしい話を書いたのは、他でもない最近報じられた名古屋赤十字第二病院の医療過誤問題についていささか感じるところがあったからだ。
16歳の高校生がSMA症候群という一般の方にはおそらく聞き慣れない疾患で同病院の救急外来を2回受診し、いずれも初期研修医が急性胃腸炎と診断して帰宅させられた挙げ句、他院で緊急の処置が必要として、同病院の外科を紹介され、ここで初めてSMA症候群疑いということで消化器内科担当のもと入院となった。この段階で重度の脱水と不穏が見られ、様々なトラブルの果てにお亡くなりになった、というケースだ。
病院の発表では、初期診療の段階で初期研修医(2年目)に診療を任せ、上級医の校閲が入っていなかったことが一番の問題である、とされている。
たしかにそのとおりである。
救急外来は、危険がいっぱいだ。
見るからに重症な患者さんは掛け値なしに重症なので、容態変化にすべてのスタッフによって最大限の注意が払われる。
ちょっと風邪を引いて、
下痢と嘔吐が続いて、といった一見軽症に見える患者さんが実はとんでもない疾病を抱えていることがある。研修医くんたちは、難しい国家試験をくぐり抜けたばかりなのでその知識は我々のような年寄では到底太刀打ちできない。
が、この患者さん、ちょっとおかしい、という本能的な勘はなんとなくわかるのだ。なので、ほんの少しでも研修医くんが診たあとで、その患者さんをさらっとでも良いので診ることによって赤旗を立てることができる。ほんの一手間なのだ。
このヒトちょっと気になるね、との一声で、運命は変わる。
まあ、今回のケース。入院後も研修医とは関係ない場面で様々な失態があった上での不幸な転機(これは同院のHPに詳しく記載されているので敢えて言わないが)を辿ったのだが。
今回の事件を機に、我々の部署でも研修医の診療に対するダブルチェックの目をより厳しくしたのは言うまでもない。