何事もなかったから良かったものの | 救急医の戯言

救急医の戯言

元呼吸器内科医であった救命医が、患者として2回手術を受けたこと、最近の医療について思うことを思いつくまま書いてみました。

 

 ワンコの散歩をしている途中でのこと。不意に走り出したワンコに引っ張られた途端、ちょっとした段差に足を取られて転んだ。体全体が浮き上がって右半身全体が地面に叩きつけられた。ジョギングコースを兼ねた遊歩道だったので、歩いている人も多く人垣ができた。

きっと卒倒でもしたと思ったのだろう。よろよろと立ち上がったが息が止まるかと思った。来ていたダウンジャケットは見事にやぶれており、右腕はかなり痛かったが、大した怪我はしていないようだった。周りの人垣に大丈夫ですから、と笑いかけ、よろよろとその場を離れた。あと20歳年を取っていたら、大腿骨頸部骨折だっただろう。

 そういえば、今日の星座占い(別にいつも見ているわけではなく、今日は偶然)は最下位だった。

 

 そういえば数日前、20代の男性が、酔って家に帰る途中、右折してきた車にはねられボンネットにカチあげられた上、頭をフロントガラスにぶつけ道路に叩きつけられたとのことで救急搬送された。フロントグラスは蜘蛛の巣状にヒビが入り、髪の毛がこびりついていたそうだ。搬送された男性は意外にも元気そうだったが、なにもないことを確かめる作業のほうが実は大変だったりする。診察、全身のCT、採血結果、いずれも大きな問題はなかった。若さゆえ、色々な組織が柔軟性がありショックの軽減につながったのだろう。ここが僕ら高年者との違いだ。

問題は同居している両親がたまたま旅行中であったことだ。彼はこの両親と3人ぐらしで、家族が在宅であれば帰宅してもいいかな?という判断だった。検査が終わった段階で旅行中の両親には連絡を入れ、けっこう派手な事故だったこと、その割にはほとんど怪我らしい怪我はしていないこと、とはいえ深夜に一人で帰宅させて両親の帰り(何泊の旅行かも知らない)を待つのもいかがなものか?ということをお話申し上げ、一泊だけ病院で経過観察入院とする事を了解された、というか「じゃあ、よろしくおねがいしますね!」というとても軽いのりで頼まれてしまった。私達帰らなくても良いのでしょうか?という素朴な質問すらなかった。

 翌日何事もなく退院となったが、迎えに来たのはなんと加害者。これ、両親も了解しているのか?と本人に聞いたら、もちろんです、と。

 なんと、ライトで、ポップな事故当事者同士なのだろうか?まあ、双方に大した怪我がなかったからの関係性だったのだが。