やっぱり銀が大好きです。


銀は優しい金属という感覚を持っています。

普通金属というと冷たい印象を持ってしまいますが、銀は熱伝導率が金属中最大で、触れた人の体温にすぐ同調します。

輝きもプラチナ等に比べて非常に柔らかい光り方で、見ていて落ち着きます。

(可視光線反射率も金属中最大)

使い込むとさらに白く柔らかい輝きとなり、風合いが増します。


高級レストランでは現在も銀食器が出されますが、新品の銀食器をお客様に出すのは失礼とされ、わざわざ使い込んだようにしてからお出しするそうです。

使い込んだ銀の輝きはmoon shineと呼ばれ、中世ヨーロッパ貴族に愛されてきました。


銀は貴金属の中では化学変化しやすいほうで、空気中の硫黄分により表面が硫化し、黒ずんできます。

(酸化自体はとてもゆっくりで、硫化した表面は銀磨き布で拭くと取れます)
中世貴族の人々が銀食器を多く用いてきた背景として、ヒ素等の毒などを盛られた場合に銀の化学変化をおこしやすい特徴を利用して、毒殺を未然に防止できるようにしていた為という説もあります。

さらに銀イオンはバクテリア等に対して極めて強力な殺菌力があるため、近年は滅菌用として生活用品に普及してきております。

抗菌性が高い金属イオンとしては水銀、鉛などがありますが、これらは動物に対しても害があり体内に入る可能性のある場所では使用できません。


その他、銀の器に入れた水は腐敗しないことから教会で聖水の保存に利用されたり、宇宙飛行士の飲料水に銀を添加したりといった形で利用されたそうです。

銀は本当に微量ですが水に溶ける性質を持っており、溶けた溶液は濃度が薄くても水中のバクテリア等に対して強力な滅菌作用を示します。


こういったことから古くから、魔よけやお守り代わりとしても珍重されてきました。

人間にとって優しい、とても魅力のある金属だと思います。


John Bly
Discovering Hallmarks on English Silver (Discovering Series)
Ellenor M. Alcorn
English Silver in the Museum of Fine Arts, Boston: Silver from 1697 Including Irish and Scottish Silver