今回は、イギリスの銀製品を語る上では絶対外せないホールマークについて書きます。


ホールマークとは、イギリスで1300年頃から続いている、銀製品の品質を保証するための刻印です。

ほかのヨーロッパ銀製品には刻印「925」くらいしか刻印されておらず、イギリス独自の伝統文化となっております。

ヤードオレッドに限らず、イギリスアンティーク銀製品を好む人にとっては欠かせない知識でしょう。


さて刻印は通常5,6個程度ついておりますが、ひとつひとつ解説していきましょう。


(1)Lion Passant ・ ライオンパサント

歩くライオンの刻印で、製品がスターリングシルバーの銀であることを示します。スターリングシルバーとは、92.5%が銀、残りの7.5%は主に銅からなる合金で、加工もしやすいためイギリスではこれを純銀の証明としてきました。

時期によっては95%が銀のブリタニアスタンダードシルバーが主流だった時代もありますが、現在はスターリングシルバーが大部分を占めるようです。


(2)Assay mark ・ アセイオフィス マーク
イギリスのどの検定所で検定を受けたかを示します。

検定所によってマークが異なります。

「王冠」・・・シェフィールド

「ライオンの顔」・・・ロンドン
「錨(いかり)」・・・バーミンガム

「城」・・・エディンバラ       など


*現行品ヤードは、すべてバーミンガム検定所の刻印ですが、ヴィンテージものにはロンドン検定所刻印のものもあるようです。


(3)Date Letter ・ デイトレター

アルファベットで検定を受けた年を示します。

一巡すると字体を変えてAから再開します。
大文字も小文字もあります。

*「l」と「i」など、紛らわしいものは省略されることもあります。


(4) Maker's mark ・ メーカーズマーク

製作業者のマークです。

ヤードオレッドでは「YOL」と表記しています。

必ずしも義務というわけではないようです。



以下、画像のものは上記のもののほかに特別な刻印がなされています。


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*一番右の十字のマークはミレニアムマークと呼ばれ、2000年製造のものにミレニアムを記念して刻印されたものです。


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*一番右の(ちょっとわかりにくいのですが)刻印は、エリザベス女王の横顔の刻印です。

 2002年はエリザベス女王戴冠50周年記念ということで、同年の製造品にはそれを記念した刻印がなされています。

(義務ではないため、通常品2002年製のヤードには刻印がないこともあります)

ヤードオレッドではこの年、それを記念した限定品を発表しております。

戴冠50周年を’Golden Jubilee’、25周年を’Silver Jubilee’と呼びます。

25周年時にヤードで記念品が作られたかどうかは未確認です。


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*参考までに。2000年からは小文字のアルファベット表記のようですね。


John S. Forbes
Hallmark: A History of the London Assay Office
John Bly
Discovering Hallmarks on English Silver (Discovering Series)
Judith Banister
English Silver Hall-Marks: Including the Marks of Origin on Scottish & Irish Silver Plate, Gold, Platinum & Sheffield Plate: With 500 of the More Important Makers Marks from 1697-1900 (Dealer Guides)