不景気時によく話題になる財政出動及びその効果を表す「乗数効果」。金融危機のような非常時はともかく、通常時(自然利子率が正で、2007年夏前のように、資本市場が機能している状態)には乗数効果は低い(1以下)ことが国際的なコンセンサスといっても問題ないレベルだと思うが、日本では未だにそうなっていないのが残念である。

 

そこで、今回はこの論文 Ethan Ilzetzki, Enrique G. Mendoza, Carlos A. Véghによる「How Big (Small?) are Fiscal Multipliers? Oct-2010」)をご紹介。以下、やらかしやによるTakeaways:

  • 発展途上国よりも先進国の方が、乗数効果が高い(→発展途上国にはがめるやつが多いから?)

  • 為替の柔軟性は乗数効果に影響を与える。固定相場制の場合1.5だが、変動相場制の場合ほぼゼロ(→Mundell-Flemingモデルと整合)

  • 貿易の開放度は乗数効果を左右する。「鎖国状態」にある国(輸出入の合計額がGDP6割を超えている国)の乗数効果は1.6程度だが、開放されている経済における乗数効果はほぼゼロ(→バラマかれたカネが輸入に使われるから当然といえば当然)

  • 多重債務国における乗数効果は財政状況が健全な国に比べ、効果が低い(→これも当然といえば当然。無理してカネをバラマいても、市場にそっぽを向かれ、金利が上がれば、しっぺ返しがやってくる)

  • 政府による投資と政府による消費では同じ財政出動であっても、前者の方が効果が高い。後者の効果はほぼゼロ(→問題は税制出動をするにしても、表面上は投資でも実体は消費をいかに排除するのかが重要。役に立たないハコモノを作ることだって、表面上「投資」かもしれないが、結果的には単なる消費になる可能性大。こういうリスクを考えると、ならばいっそのことしない方が費用対効果上いいのでは) 

Robert Barro が指摘しているように、乗数効果の誤りは公式(1/(1-限界消費性向))を使用する際、使用者の意図に関わらず、以下の点を前提としているためである:

  • 政府は市場(民間)よりもリソースの配分がうまくできる(だから、上述の公式は民間の消費や投資に対する悪影響を考慮していない)

  • 活用されていない労働力や資金は実質的に社会的なコストなしでできる

  • 「社会的なコストなしでできる」方法を政府は知っていても民間は知らない

そんなわけで、通常時における財政出動の効果は高くなく、往々にして、景気対策というより単なる所得の再分配になってしまうのだが、政治家の先生方は知ってか知らずかカネをバラマとおっしゃる。まさか利権あさりではないですよねw