昨日のTVドラマ 薔薇のない花屋
の最終回。
竹内結子が心臓手術を受けている父親の心拍が止まったとき、
「生きて、生きて!!」とオペ台にすがり、嗚咽するシーンがあった。
それを見て、ワタシは父の最期を見なくてよかった、と思った。
あのシーンと同じように父は心臓マッサージをされたり、電気ショックを与えられていたんだ。
父のやせ細ったカラダ(180cm49㎏)が上下に飛び跳ねていたんだ。
母から早朝連絡をもらって、ワタシがかけつけた時には、実家での警察の現場検証も、
斎場選びも、何もかも終わっていて、
もう父は棺の中で、銀行員時代のお気に入りのスーツを着て安らかに目を閉じていた。
そして、葬儀の打ち合わせが始まっていた。
ワタシは棺の前でしばらく嗚咽した。
父の頬から首をそっと撫でた。
あんなに嗚咽したのは、離婚を覚悟で自分の荷物は置いたまま、
実家へ帰り支度をしていた時以来だった。
葬儀の準備で悲しみに浸っている余裕はなかった。
父の遺体にエンバーミングという長期保存を可能にしようとする技法を施したので、
時間が経つにつれ、父はどんどん若返り、深く刻まれていたシワもなくなり、
顔色は薔薇色に染まり、今まで見たこともないいい男に変化していった。
★ ★ ★
父を最後に見たのは、入院先のベッドの上。
その日は歩行練習を一緒にした最後の日で、
運動靴にうまく足が入れられない父が楽に靴を履けるように、
ゴムの部分をハサミで切ってあげたんだ。
「〇〇ちゃん、元気でいなせ~よ」と父は私が消えていなくなるまでワタシを見ていた。
「お父さんもね、しっかり歩いてよ~」とワタシは言った。
そのアイコンタクトの温度を今でもはっきり憶えている。
ワタシは今回の父の入院でやるべき目標を達成した満足感をもって実家を後にした。
その2日後だった、退院して家で早朝倒れたのは。
その運動靴は未だ玄関に置いてある。
父の部屋もまだそのまま何も手をつけていない。
★ ★ ★
父の最期の時にいなかったおかげで、ワタシは父がむこうに逝ってしまう瞬間を思い出すことはない。
いつか亡くなることは覚悟してはいたけど、ワタシの中で、父は突然いなくなった。
ありがとう、お父さん。。。。。 1時25分投稿