なぜだ?
どうして?
涙が止まらない。
『優子ちゃん、これ見て…おしりー』
『なにこれ?』
『おしりだよおしり』
『おしり…ねぇ…』
『二人だけの暗号ね、おしりー』
忘れようとするのに。
頭の中から消し去ろうとするのに。
なぜだか次から次へとあふれでてくる。
『大島さん』
『ん?なんだ柏木?』
『麻友のことよろしくお願いします』
『なんだよ、改まって』
『なかなかなつかないんですよ誰にも』
その言葉を聞いて嬉しかったのを覚えている。
8つも歳の離れた妹のような存在だった。
『そんな麻友が自分から寄っていくなんて相当好きなんですよ、大島さんのことが』
『ぷっ、なんか恥ずかしいよ』
『ずっと見てきたから、誰よりも努力する麻友の姿を』
『………………』
『だから麻友には笑顔でいてほしいんです』
その時の柏木の顔はとても優しかった。
まるで母親のように。
『麻友の側にいてやってください』
『わかったよ』
消えろ。
消えろ。
消えろ。
必死に首を振っても、歯を噛み締めても。
涙と共に浮かび上がる。
どうしても瞳に渡辺の姿が映ってしまう。
「どうしてだよぉ…」
そこにいるのは赤の他人。
どんなことをしてどんな風に育ってきたのかも知らない。
ただAKBというアイドルグループでたまたま一緒になっただけ。
少し違えば街中ですれ違っていただけだったかもしれないのに。
「ここまでやってきたのに…」
夢のために払った犠牲は大きい。
そして罪も。
感情を押し殺してきた。
形振り構うことはなかった。
信じていたから。
それが正しいのだと。
『素直になりなよ』
「あっちゃん…」
『もうわかってるんでしょ?』
「でも…」
『大切なものは全て知ってるはず』
「大切なもの…」
それは金でも地位でも名誉でもない。
知らず知らずの内に手にしていた。
手離そうとしても固く結びつける。
それはかけがえない宝物。
「わかったよ、あっちゃん」
人は間違いを起こす生き物だ。
間違いを知り学び強くなる。
しかしその過程で罪を背負うことがある。
それは決して赦されるものでもなくなるものでもない。
それでも人は歩みを止めない。
止まればそれは終わりを意味するから。
ただし来た道を戻ることはできるだろう。
それは過酷で困難である。
戻ったとしても他の道があるのかはわからない。
出口のない迷路を迷い続けることになるかもしれない。
だがそれでいいのだ。
誤りを誤りだと理解できたときに道は生まれ先へ進むことができるのだから。
扉を開けることができるのは嘘でも偽りでもない真実だけなのだから。
人は間違いを起こす生き物なのだから。
「大島さん!」
この時ようやく大島の耳に届いた。
おそらくずっと説得していたのだろう。
しかし大島は自らの精神と戦っていた。
そして時はすでに1分を切っていた。
「麻友…柏木…」
小さな囁くような声。
しかし二人は気づく。
変わったから。
彼女の持つ負に包まれた空気が。
「ごめんな」
大島が満面の笑みを浮かべる。
それは雲一つない青空よりも眩しかった。
ジィィィィィィィイイイイイイイイイ!!!
電光掲示板が0を指すのと同時に大島はボタンを押した。
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どうして?
涙が止まらない。
『優子ちゃん、これ見て…おしりー』
『なにこれ?』
『おしりだよおしり』
『おしり…ねぇ…』
『二人だけの暗号ね、おしりー』
忘れようとするのに。
頭の中から消し去ろうとするのに。
なぜだか次から次へとあふれでてくる。
『大島さん』
『ん?なんだ柏木?』
『麻友のことよろしくお願いします』
『なんだよ、改まって』
『なかなかなつかないんですよ誰にも』
その言葉を聞いて嬉しかったのを覚えている。
8つも歳の離れた妹のような存在だった。
『そんな麻友が自分から寄っていくなんて相当好きなんですよ、大島さんのことが』
『ぷっ、なんか恥ずかしいよ』
『ずっと見てきたから、誰よりも努力する麻友の姿を』
『………………』
『だから麻友には笑顔でいてほしいんです』
その時の柏木の顔はとても優しかった。
まるで母親のように。
『麻友の側にいてやってください』
『わかったよ』
消えろ。
消えろ。
消えろ。
必死に首を振っても、歯を噛み締めても。
涙と共に浮かび上がる。
どうしても瞳に渡辺の姿が映ってしまう。
「どうしてだよぉ…」
そこにいるのは赤の他人。
どんなことをしてどんな風に育ってきたのかも知らない。
ただAKBというアイドルグループでたまたま一緒になっただけ。
少し違えば街中ですれ違っていただけだったかもしれないのに。
「ここまでやってきたのに…」
夢のために払った犠牲は大きい。
そして罪も。
感情を押し殺してきた。
形振り構うことはなかった。
信じていたから。
それが正しいのだと。
『素直になりなよ』
「あっちゃん…」
『もうわかってるんでしょ?』
「でも…」
『大切なものは全て知ってるはず』
「大切なもの…」
それは金でも地位でも名誉でもない。
知らず知らずの内に手にしていた。
手離そうとしても固く結びつける。
それはかけがえない宝物。
「わかったよ、あっちゃん」
人は間違いを起こす生き物だ。
間違いを知り学び強くなる。
しかしその過程で罪を背負うことがある。
それは決して赦されるものでもなくなるものでもない。
それでも人は歩みを止めない。
止まればそれは終わりを意味するから。
ただし来た道を戻ることはできるだろう。
それは過酷で困難である。
戻ったとしても他の道があるのかはわからない。
出口のない迷路を迷い続けることになるかもしれない。
だがそれでいいのだ。
誤りを誤りだと理解できたときに道は生まれ先へ進むことができるのだから。
扉を開けることができるのは嘘でも偽りでもない真実だけなのだから。
人は間違いを起こす生き物なのだから。
「大島さん!」
この時ようやく大島の耳に届いた。
おそらくずっと説得していたのだろう。
しかし大島は自らの精神と戦っていた。
そして時はすでに1分を切っていた。
「麻友…柏木…」
小さな囁くような声。
しかし二人は気づく。
変わったから。
彼女の持つ負に包まれた空気が。
「ごめんな」
大島が満面の笑みを浮かべる。
それは雲一つない青空よりも眩しかった。
ジィィィィィィィイイイイイイイイイ!!!
電光掲示板が0を指すのと同時に大島はボタンを押した。
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