時はここで合流する。
スタートの合図の切られた過去と今。
それぞれの信念の元に彼女たちは交差する。











「麻友はわたしたちを変えてくれたから」

常に先輩たちを越えようとする渡辺の姿。
それが昔のBを変えた。
だからこそ柏木の今はここにある。

「麻友を信じる」

柏木は静かにそう言い放つとボタンを押した。
何も起こらない。
当然、残るもう一人が押さなければいけないから。

「大島さん、お願いします…ボタンを押してください」

もう迷うことはない。
否、初めから悩むことなどなかったはずだ。
一番に押していなければいけないはずなのに…

「ごめん…どうして躊躇ってたんだろ…」

大島はそっと指先をボタンへと運ぶ。
そのスイッチを押そうとした時、真っ暗になった画面が光る。

「………………ッ!?」

そこに映された奇妙な文字。
決して外国語が書かれたわけではない。
言葉として理解し難いもの。





『嘘つきが混じっている』





伸ばした指が止まる。
大島の脳内に?が浮かび上がる。

嘘つきがいる。
意味がわからない。
惑わせようとしているだけなのか?
それとも本当に…
だが嘘つきとはなんだ。
こんな状況で嘘をつく必要も利点もない。



(二人の視線…)



ほんの一瞬、僅かに確認できた目線。
それは確かに各々が見ていた画面に注がれていた。

だがどうして二人とも何も言わない?
こんなものがいきなり出れば口にだすだろう。
それなのに二人は平然を装っている。
まるで何もなかったかのように。



(おかしい…明らかにおかしい…)



大島の不信は急速に膨れ上がる。
一度固まりかけた信用が瞬く間に崩れ去る。

なぜだ?なぜだ?なぜだ

どうして二人は何も発しない?
まさか画面には何も映っていなかった?
いや、そんなことはない。
必ず映っていた。
あの視線の移動は“見ていた”。
確かに何かを“見ていた”。

まず最初からおかしいではないか。
急にこんな所にいることも。
しかも多忙を極め個別に仕事をする三人。
この三人が同じ場所に同時に監禁されおかしなゲームをさせられることも。
つまり情報をリークできる存在が必要である。
そしてこの場を巧くゲームに乗せる存在が。
全て綿密に緻密に仕組まれたもの。

大島の脳裏であらゆるものが駆け巡る。
辿り着いた答えは一つだった。

(確実にいる!この中に共犯者が!二人の内どちらかが………嘘つき!!!)











「ここからだ、このゲームのおもしろさは」

モニターを見ながら男が一人言を呟く。
部屋には監視カメラのようなものは存在しない。
どこから撮っているのかはわからないが確かに彼女たち三人の姿がそこに映し出されていた。

「疑え、疑って信を勝ち取れ…そして生を」

暗がりの部屋に光るモニターの光が男の眼鏡に反射する。
口元を歪ませ不気味な笑みを浮かべるその姿はより一層不気味さを増していた。
「信念を貫け」

秋元康は囁くように吐き出した。











【残り 30分】