『冗談ではないことをわかってもらえたか?』



撃ち鳴らされた銃弾。
非現実を現実のものだと認識させるには充分だった。



『先ほども述べた通りルールは簡単だ』

『今から目の前の銃口が一人ずつを指す』

『制限時間以内に残りの二人がボタンを押すことができたなら次の者へと移る』

『もしも無事一周することができたのならクリアだ』



大島は手元を確認した。
そこには確かに突起物がある。



『勿論、ボタンを誰か一人でも押さなければ即発砲』

『そこでゲームは終了』

『銃口はもう回らない』



大島は目を見開いた。
最後の一言。
“銃口は回らない”、その言葉が引っ掛かった。
つまりそこで悪夢のような時間は終わる、ということだ。
自分の番を待たずして終わらせることができる。
三人の内一人、その犠牲で生を掴み取れる。



『他人に命を預けることができるか?』

『信頼という名の形無きものを信用することができるか?』



息を飲む。
緊張も焦りもある。
恐怖に煽られてもいるのだろう。
ただ一つ言えることは今から始まろうとしていることは悪魔の如き裁定。

“死”を背負い信じるのか。

裏切ることで確実に“生”を手にするのか。

答えは二つに一つ。
本能と理性を併せ持つ人間を試す悪戯。



『最後に一つご注意を』

『信念だけは貫き通すべし』











これは『罪』の物語である。
『罪』、それは過去と未来によって結ばれる。
過去があるから未来があり、未来があるから過去がある。
その過程の上で『罪』とは必ず背負わなければいけないものだ。

だがしかしその十字架の重さは人によって異なる。
例えば子供の頃に飼っていた金魚を殺してしまった。
はたまた友達との約束を破ってしまった。
そのどれもが『罪』に値するだろう。

『罪』とはいつか必ず精算しなければいけない。
その『罪』の重さの分だけ。
拾えば返さなくてはいけないから。
それがもし返すことのできない業だとすれば、自らの『罪』によって焼きつくされるのであろう。

これはそんな『罪』を背負った主人公の精算の物語。










独りでに口を動かす人形が止まる。
まるで糸の切れたように。
そして始まりの合図は鳴らされた。



『ゲームスタート』











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