『アンコール!アンコール!』
会場に声援が響き渡る。
鳴り止まぬその声は波のように押し寄せた。
「えー…アンコールありがとうございます…」
涙を目に浮かべた彼女は続けた。
「それではわたしを応援してくださった皆さんに送ります…『上からマリコ』」
涙が溢れ歌にならない。
しかしそれは会場中に伝染していた。
啜り泣く音とサイリウムの光が揺らめく。
『悔しいか?篠田』
『はい…』
AKBのオーディションに落ちたわたしに秋元先生は問いかけた。
『もしおまえにその心が本当にあるなら必ずチャンスの順番は回ってくる』
『チャンスの順番…』
懐かしく甦った記憶に彼女の頬は少し笑った。
(こんなときに浮かぶなんてね)
短かったか?と聞かれれば短かっただろう。
長かったかと聞かれれば長かっただろう。
しかしアイドルとしては十分な道を歩めた。
もう悔いはない。
やり残したことはない。
ただ一つ心残りは…
「あっちゃん…」
煌めく照明器具が吊り並ぶ天井を眺めた。
「どこかで見ててくれてるよね」
溢れんばかりの拍手と声援に見送られ篠田麻里子というアイドル人生は幕を閉じた。
「お疲れ」
「あっ、優子」
楽屋に戻った篠田に大島が声をかけた。
「いい卒業だったじゃない」
「まあね、わたしにしちゃ上出来かな」
何か言いたげな大島の表情を篠田は感じ取っていた。
「優子は大丈夫だよ」
「………あっちゃんがいなくなった、麻里子も卒業、有華もNMBに移籍…」
「計画に関わった者ばかりね…」
「わたしだって絶対!」
大島の言葉を遮るように篠田が抱き締める。
「大丈夫…大丈夫…」
篠田の優しい言葉。
大島はそっと顔をうずめた。
怖かった。
あっちゃんも麻里子もいなくなる。
周りの仲間たちが消えていく。
孤独になるのが、置き去られていくことが。
「優子は大女優になる器を持ってるんだから」
大島の体は小刻みに揺れていた。
こうして涙を見せることのできる仲間もいなくなる。
「麻里子ぉ…」
「もー、そんなに泣かないの」
「だって予想以上に胸ないから悲しくて」
「なんだってーッ!」
わたしの胸から顔を上げた優子の目は涙で赤く腫れていた。
それでも顔には笑みが戻っていた。
これでいい。
優子は笑っていなくっちゃ。
「じゃあね、優子」
「うん」
そう言うと篠田は背を向けた。
去っていく背中を大島は切なく見送る。
今までもこの背中はたくさん見てきた。
先輩も後輩もそして同期も。
それでもどうしても慣れることはできない。
「さようなら…麻里子」
静かに呟いた。
しかしそれはどこか冷たく無機質なものに聞こえた。
大島は泣きながら微笑んでいた。
【~AKBの奇妙な冒険~】
「ん…んぁ~…」
どのくらい眠っていただろう。
泣き疲れて楽屋でそのまま寝てしまった。
「やばっ、早く帰らないと…」
起き上がろうとする。
しかしすぐに体が思うように動かないことに気づく。
「ここ…どこ…」
視界に広がってきたのは見たことのないコンクリートの壁。
そして…
「みんな…」
そこには椅子に手足を拘束され身動きの取れない3人の姿があった。
【第三部・6つの弾丸】
会場に声援が響き渡る。
鳴り止まぬその声は波のように押し寄せた。
「えー…アンコールありがとうございます…」
涙を目に浮かべた彼女は続けた。
「それではわたしを応援してくださった皆さんに送ります…『上からマリコ』」
涙が溢れ歌にならない。
しかしそれは会場中に伝染していた。
啜り泣く音とサイリウムの光が揺らめく。
『悔しいか?篠田』
『はい…』
AKBのオーディションに落ちたわたしに秋元先生は問いかけた。
『もしおまえにその心が本当にあるなら必ずチャンスの順番は回ってくる』
『チャンスの順番…』
懐かしく甦った記憶に彼女の頬は少し笑った。
(こんなときに浮かぶなんてね)
短かったか?と聞かれれば短かっただろう。
長かったかと聞かれれば長かっただろう。
しかしアイドルとしては十分な道を歩めた。
もう悔いはない。
やり残したことはない。
ただ一つ心残りは…
「あっちゃん…」
煌めく照明器具が吊り並ぶ天井を眺めた。
「どこかで見ててくれてるよね」
溢れんばかりの拍手と声援に見送られ篠田麻里子というアイドル人生は幕を閉じた。
「お疲れ」
「あっ、優子」
楽屋に戻った篠田に大島が声をかけた。
「いい卒業だったじゃない」
「まあね、わたしにしちゃ上出来かな」
何か言いたげな大島の表情を篠田は感じ取っていた。
「優子は大丈夫だよ」
「………あっちゃんがいなくなった、麻里子も卒業、有華もNMBに移籍…」
「計画に関わった者ばかりね…」
「わたしだって絶対!」
大島の言葉を遮るように篠田が抱き締める。
「大丈夫…大丈夫…」
篠田の優しい言葉。
大島はそっと顔をうずめた。
怖かった。
あっちゃんも麻里子もいなくなる。
周りの仲間たちが消えていく。
孤独になるのが、置き去られていくことが。
「優子は大女優になる器を持ってるんだから」
大島の体は小刻みに揺れていた。
こうして涙を見せることのできる仲間もいなくなる。
「麻里子ぉ…」
「もー、そんなに泣かないの」
「だって予想以上に胸ないから悲しくて」
「なんだってーッ!」
わたしの胸から顔を上げた優子の目は涙で赤く腫れていた。
それでも顔には笑みが戻っていた。
これでいい。
優子は笑っていなくっちゃ。
「じゃあね、優子」
「うん」
そう言うと篠田は背を向けた。
去っていく背中を大島は切なく見送る。
今までもこの背中はたくさん見てきた。
先輩も後輩もそして同期も。
それでもどうしても慣れることはできない。
「さようなら…麻里子」
静かに呟いた。
しかしそれはどこか冷たく無機質なものに聞こえた。
大島は泣きながら微笑んでいた。
【~AKBの奇妙な冒険~】
「ん…んぁ~…」
どのくらい眠っていただろう。
泣き疲れて楽屋でそのまま寝てしまった。
「やばっ、早く帰らないと…」
起き上がろうとする。
しかしすぐに体が思うように動かないことに気づく。
「ここ…どこ…」
視界に広がってきたのは見たことのないコンクリートの壁。
そして…
「みんな…」
そこには椅子に手足を拘束され身動きの取れない3人の姿があった。
【第三部・6つの弾丸】