「まりやちゃん!」

高城が叫ぶ。
ベクトル操作により彼女の体は宙に浮き、巨大な氷の塊へと一直線に向かう。

美奈の想い無駄にしない

永尾の瞳に焼きついた決意。
黄金の風が舞う。
空間を消し去り一瞬にして飛び上がる。
氷の元へ着いた彼女は再び黄金の風を身に纏う。





小池…あぁ、小池…
どこに行ってしまったの
こんなところから連れ出してよ





瞬間移動した氷塊が太陽と重なる。
光に照らされ、まるでそれそのものが太陽のように見える。

「ウゴアァァァアアアアアア!!!」

上空から落下する氷の塊を怪物は破壊せんと試みる。
しかしそれを阻んだのは黄金の風に包み込まれた永尾だった。
触手のように伸びた塵の塊を打ち砕く。
しかし幾ら壊そうとそれは無数に伸びる。
次第にあらゆる包囲を取り囲まれていた。
空中にいる彼女は空間を削除し回避することができない。

「ククク…ここまでか」

口元が綻ぶ。
覆い潰すように彼女は飲み込まれた。





「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

その雄叫びは遥か高みから。
永尾の犠牲を弔うように。

大場が繋いだ、永尾が散った、後は全力で撃ち込むだけ

氷塊の裏、高城がベクトルをかける。
真下の大きな標的に向かって。
加速し加速し加速する。
ベクトルは加速度に比例し大きくなる。

まるで流れ星のように瞬間的に

過程は認識できず結果だけが残る。
最大限加えられた一撃は肥大な怪物の土手っ腹を撃ち抜いた。
ぽっかりと空いた穴。
今にも怪物の体は崩壊してしまいそうなほど不安定である。



「へへっ、やったね…」

上空から落下する高城。
受け身もとることなく真っ逆さまに頭から落ちている。

「あ~もう力でないや…」

流星の如きエネルギー。
それ即ち隕石を生み出すほどの力。
それだけの労力に見合うダメージも当然受けるはずである。
高城の中身は空っぽに枯れ果てていた。

「前田さん…後はお願いします」

落ち行く最中、視線が合った気がした。
ほんの一瞬であったから定かではない。
しかし彼女は確実にこの瞬間を狙っていたのだ。



「これでほんとに最後」

崩れかけた醜塊に飛び込む。
終わりにするため。
断ち切るため。
倒れていった仲間たちのため。
細胞一つ残さない。
決して再び再生せぬよう。
全身全霊、全発入魂、全力投球。
感謝を込めて。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」