『ルーレット!ルーレット!ルーレットが始まるよ!』
高橋に白い奇妙な物体が現れる。
小嶋のスタンド能力が発動した。
「ちぇっ…最後においしいとこ持っていきやがって…」
最後の力を振り絞った峯岸も倒れていた。
「ま、うちらの尺はこれくらいでいいか…あとは任せたよ」
静かに峯岸は瞳を閉じた。
『数字を答えてください、ベットを開始します』
白いそれは発する。
しかし高橋は応じることはない。
その目は再び現れた指原を見つめていた。
「どうして戻ってくる?」
峯岸もそうだった。
なぜだ、なぜ戻ってくる。
勝てない、決して勝機はない。
だからもう2人は倒れている。
なのになぜこいつは目の前に立ちはだかる。
「いや…もうこの問いはやめよう、指原おまえを倒せば答えは決まる」
高橋の存在が消える。
防ぐことも反撃することもできない30秒間が始まる。
「うりゃああああああ」
しかし指原は臆することなく高橋のいた場所へ突っ込む。
その時、指原の背後にかすかにスタンドの片鱗が現れる。
それは高橋に近づくに連れて形づき、まるでパズルピースのように出来上がる。
「ああああああああああああああああああああああああ」
がむしゃらに出した拳は高橋を捉えた。
高橋の体が30秒待たずに現れる。
「何が…起こっている…」
状況を理解できない彼女は呆然と立ち尽くす。
そこへ指原は畳み掛けた。
なんだ?
一体何が…
指原の能力、スタンド能力?!
指原のスタンドが振りかぶる。
それよりも速く高橋は弾き返した。
「そうか理解した」
おそらく指原の能力は相手の能力そのものを消す。
どんなに強くともどんなに無敵な能力であろうとそれには敵わない。
ならばスタンドの力、自力で倒す。
スタンドの性能ならばこちらが勝っている。
一瞬にしてそう判断した高橋は倒れた指原に詰め寄る。
渾身の一撃を狙いすまして放った。
大地が唸ったかのような音が響く。
命中したかのように思えたそれは指原と高橋の間に北原が入り止めていた。
「里英…」
「バカ、指原に任せられるわけないでしょ」
北原の体はまるでダイヤモンドのように硬化している。
「さっしー、たかみなさんはわたしが止める!だから決めて!」
指原は頷く。
しかしそれをさせまいと高橋が指原を狙う。
「させませんよ、たかみなさん」
北原は無敵に微笑み防いだ。
指原によって存在の消失はできない。
攻撃は北原によって止まられる。
長期戦になれば必ず隙ができそこを漬け込まれる。
「無駄無駄無駄…」
ならば一つ一つ目の前の壁を破壊するにほかない。
単純に純粋に、ここからは駆け引きなしの世界。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」
ひたすらに執拗に殴り続ける。
それを必死に北原は耐えた。
決して指原に届かせないために。
ここだ
阿吽の呼吸。
北原が一瞬高橋のスタンドを止めた瞬間、指原は懐に飛び込んだ。
一閃。
痛烈なまでの一撃は高橋を捉え吹き飛ばした。
「やった…」
ようやく与えた一噛み。
勝てるかもしれない希望に指原は北原へ振り返る。
「!?」
北原が倒れていた。
考えれば当然だ。
何人も薙ぎ倒す高橋のスタンドのパワー。
いくら北原が硬化しているとしてもダメージがないはずもない。
その時、背後に殺気を感じる。
そこにはすでに立ち上がった高橋の姿があった。