転送を終え作業員たちはほっと一息ついていた。
しかしそんな休息も束の間。
不穏な陰はもう忍びよっていた。

「メンバー数人の生体反応に異常が見られます」

突然、作業員の一人が声を発した。

万が一に備え体につけた装置には体温、心拍、脈などを測るものがある。
それらに異常があれば強制停止をさせる機能を備えていた、しかし。

「強制停止機能が正常に作動しません!」

「なに?」

「異常者だけではありません!正常者の強制停止も作動しません!」

「なんだと!どういうことだ!」

緊急事態に作業員たちの顔に焦りの色が見え始める。
数人のスタッフが大急ぎで問題の解析を進めた。

「チーフ、原因がわかりました」

「なんだ!?」

「バグです」

「バグ?」

「はい、カプセルの機能を統括しているマザーコンピューターにバグが発生しています」

まさかのバグの発生。
しかもそれは異端なバグ。
まるで生き物のようなそのバグはハッキングによる駆除では追い付かないものだった。
バーチャル空間という二次元と三次元の狭間の世界。
不安定かつ未知の世界だからこその弊害。

「どうするんだ…」

停止ができないということはこちらの世界へ戻れない。
無理に装置を外せば脳その他器官にも影響がないとは限らない。
今やトップアイドルのAKB48を巻き込んだ大事件。
否、数十人という女の子たちを巻き込む大事件に発展していた。

「ひとつだけ方法が…」

「な、なんだ?」

「彼女たちにバグを消去してもらうんです」



AKB48の存続を彼女たちの命を賭けた長い夏休みが始まった。