ヨーグルトと午前二時の冷蔵庫 | テツになる勇気。

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テツってのはね、乗ってりゃいいってモンじゃない。撮ってりゃイイってもんでもない。スジって一人でニヤけていたら通報寸前w。
そう、テツってのは、語ってナンボなのよ(マジかっ

午前二時、冷蔵庫の中でヨーグルトが考えごとをしていた。
「なぜ私はイチゴ味なのか」


この問いに答えられる者は、冷蔵庫内にはいない。プリンは隣で寝息を立てている。カスタードのくせに、いびきがうるさい。ゼリーは昨日出ていった。たぶん食べられたのだろう。いや、もしかしたら自力で脱走したのかもしれない。なにせ、あの柑橘のやつはいつも冷ややかな視線を投げてきた。

 

「いちご味って、なんとなく“選ばれし感”があるのに、結局最後まで残るんだよな…」
ヨーグルトはプラスチックの蓋の裏側を見上げながらつぶやいた。語尾に「…」をつけたが、特に意味はない。ただ静けさが必要だったのだ。

 

冷蔵庫の奥では、賞味期限を3週間過ぎたマヨネーズが低音で「うぇい」と唸った。誰も気にしない。彼はもう“この世”と“あの世”のあいだを漂って久しい。

そのとき、ドアが開いた。光が差し込む。
ヨーグルトは一瞬身構えた。
しかし手が伸びたのは、プリンだった。

 

人間の手に包まれて出ていくカスタード。寝起きの顔のまま、誇らしげに。
「うぃ~す」
最後にそれだけ言って、冷蔵庫の世界から消えていった。

ヨーグルトはまたひとりになった。
 

パキッという音がして、氷がひとつ割れた。
「これもまた、冷蔵庫の運命か……」
唐突に詩的になったが、誰にも届かない。ヨーグルトにWi-Fiはないし、SNSもやっていない。

気づけば、牛乳が怒っていた。
「おい、俺もうすぐ賞味期限だぞ。なんで誰も気にしないんだ! 毎日地味に揺れてるんだぞ!」
だがその声は、冷蔵庫のモーター音にかき消された。

朝が近づいている。人間が活動を再開する時間帯だ。
 

ヨーグルトは再び、静かに目を閉じ――いや、目は最初からなかった。けれど、そういう雰囲気だった。

そしてまた、意味のない時間が始まる。
次に誰かが食べられるまで。
それがいつかは、誰にもわからない。

 

ただ一つ確かなのは――
プリンはもう戻ってこない、ということだ。