このコロナ禍、鉄道会社の第3四半期決算が発表され始めましたね。私の古巣でもある東武鉄道の決算書を見てみましたよ。
やっぱり気になるのは、盤石安泰とされていた鉄道会社経営がこのコロナ禍でどれだけダメージを受けているのか。
売上とか利益率とかよりも、財務体質の変化が気になるなということで、その辺を覗いてみました。
単位:百万円
2020年3月31日→2020年12月31日 の変化
・現金および預金 31,593→13,094
まずはキャッシュ。うわっ目に見える金額が減ってる。4割になってる、、いきなりこれかよ。
で、次は、デベロッパー特有の勘定科目ですな。
・分譲土地建物 21,673→27,460
こっちは増えた。端的に言うと、分譲用の住宅を作ったけど売れ残っている、ということか。
いきなり本業以外のダメージが見えてしまった。
次は固定資産。こちらは大きな変化はないですね。
鉄道施設は簡単に処分、というわけにもいきませんしね。
・固定資産合計 1,514,706→1,510,066
次は負債の部。さすがに老舗の大手なので、短期の流動負債がいきなりボンと跳ね上がるような事態には陥っていないだろうな、、
・流動負債 379,291→365,851
うん、やっぱりね。ここが上がるようになったらもう末期的だもんね。
銀行も金貸してくれない、投資家も逃げてく、で、あとは短期のサラ金じみた金融に手を出すしかないとなったときくらいだよねココがあがるのは。その意味では流動比率に大きな変化はないので、第一防衛ラインはクリアか。でも、当座比率は下がってるね。先述の現金減、うれない分譲土地建物が増えてるし。
と思ったら、そもそも流動比率自体そこそこ低い。
短期の借金を、流動資産(比較的すぐに現金化できる資産)で賄えてないよ。
この体質はコロナ前からなのかな。
・流動比率 37% → 35%
流動負債に1年以内に償還する長期借入金と社債が入っていたので、これは継続できるとして控除してもせいぜい45%に上がるくらい。
短期の借金の半分は、「すぐに返せない」
この数字だけ見ると、自転車操業と言われても仕方ない面がありそう。
僕が見たかったのは剰余金の変化で、それ以外のところに問題があるとは思っていなかったからちょっとショックかな。
じゃあいよいよ剰余金見てみよう。
剰余金(利益剰余金)は、単純に言えば、「今まで稼いできた利益の積み増し分」。
操業100年を超え、盤石な路線網で着実に利益を出してきた鉄道会社だからこそ強い部分で、逆に言うとここが枯渇すればもう悠長なことは言ってられなくなる。
ちなみに、経営危機が噂されているANAは去年の3月時点で550,839百万円あったのが 今は240,150百万円と半減してる。
この状態があと10か月も続けばこの剰余金もなくなるから、本当にお金が無くなる。東武はどうかな?
・利益剰余金 256,511→228,919
さすがにANAの「半減」ほど酷くはなかった。でも、確かに減っている。9か月で1割減。ちなみに創業百ン年の間にためてきたお金が、たった9か月で1割減ですよ。このままの流れとすると、単純に見ればあと「90か月はもつ」ので、ANAのような目に見えた危機にはすぐになりそうにない。
ただ、最初の不動産の不調はちょっと想定外だった。とすると売上にも影響が出てくるわけで、それを考えれば「90か月はもつ」というのは楽観的すぎるかもしれない。
最後に、みんな大好き通信簿。企業の通信簿たる損益計算書から四半期包括利益だけ見ておきましょう。いくら儲けたのかな?
・四半期包括利益 32,464→-18,905
189億円の赤字ですね。
企業の危機ではないにしろ、この赤字を放置するわけにもいかないでしょうから、何等かの対策は考えているでしょう。
しかしこの額は、本業である鉄道事業になんらかのテコ入れをしないと克服はできそうにないですね。
以上、東武鉄道の決算状況報告でした。