![]() | 日本再興戦略 [ 落合陽一 ] 1,512円 楽天 |
https://booklog.jp/item/1/4344032179
落合氏は世界に通用する若手の日本人知識人の代表の一人と言っていい。
本を読んで改めてわかったのですが、落合氏は、教育者、研究者、経営者、アーティストなどマルチに活躍している人というだけではなく、世界と日本の歴史や文化への深い理解があり、次の時代のトレンドとそのために必要な「日本再興」の処方箋を示しているところがとても参考になるところです。
ただし、安全保障や国防に関しては?な部分もあります。それ以外は概ね同感ですし、落合氏の言う生き方や政策を実行すべきだと思いました。
読書メモ↓
・今の日本は、自虐的な批評に飽きて、自信を喪失し、過度に自信をつくろうとして、日本はすごい、という自画自賛するコンテンツばかりになってしまっている
・日本は国策によって急激に近代化を果たした国
・落合氏は、教育に携わり、企業を経営し、アーティストとして芸術作品を生み出し、国際会議や論文誌で研究を発表してきた数少ない人間
・このまま高度経済成長モデルに拘泥し、欧米という幻想を追い続けていては日本は再興できない
・日本が明治にとってのヨーロッパと昭和にとってのアメリカを見習わないといけない、そう考えること自体が大きな間違い
・そもそも欧米というものは存在しない。欧州と米国が一緒だと思っている西洋人は誰もいない
・いまの日本のシステムはイギリス式・アメリカ式・フランス式・ドイツ式が交ざってできている
・日本の刑法はドイツ式を主に参考にしてつくられているが、民法はフランス民法が基盤。憲法は大日本帝国憲法はドイツ憲法が土台、日本国憲法は米国式
・日本が近代化以前に得たもの、日本が近代化以後に得たもの、今適用しないといけないものをしっかり整理することが大切
・欧州式の概念の中には日本には合わないものも多い。その典型例が平等と公平という概念。平等は権利が一様、公平はフェアだということ
・日本人はフェアは意識するが、権利が平等であるとはあまり意識しない
・西洋的な個人の時代不適合性がある。「近代的個人」も日本人には向いていない。日本には個人によって成り立つ国民国家という感覚が薄い
・西洋的思想の根底に流れるものは、個人が紙を目指す全能性に近づいていく思想
・東洋的思想とは自然。日本人は自然の中にある同質性・均質性にひもづいている
・個人として判断することをやめ、自らの属する複数のコミュニティの利益を考えて意思決定をすればよい
・日本人は仕事と生活が一体化したワークアズライフのほうが向いている
・オンとオフの区別をつける発想自体がこれからの時代には合わない。無理なく続けられることを、生活の中に入れ込み複数行うことが大切
・今の日本は東洋化したほうがイノベーションが起きやすくなる
・これからの日本に大事なのは、複数のコミュニティに所属しつつ、そのコミュニティを自由に変えられること
・「幸せ」「愛」という概念は西洋から明治期に輸入して翻訳したもの。その影響を日本人が大きく受けている
・日本人は東洋人であるにもかかわらず、東洋のことを軽視しすぎ
・修行を積むことで理解していくのが東洋的価値観。個人主義でみなが理解する権利があると考えるのが西洋的価値観
・政治も、明治以来の西洋的国民国家による中央集権体制は日本には向かない。ローカルの発見に力を入れるべき
・地方自治の首長連合を組み、何が可能かを考えること
・税金を払いたくなるような地方自治が必要
・教育制度から変える。中途半端に個人、自由、平等、人権といった西洋的な理念を押し付けられた結果、個人のビジョンがぼやけてしまった
・欧州や米国から学ぶことをやめるのではなく、日本の原点、向き不向きを見極めて上で、学ぶ価値のあるなしを峻別していくこと
・日本は戦後の工業的な生産様式をITやイノベーションに向いた生産形式へと変えるときを迎えている
・日本は欧州型でも米国型でもない新しいイノベーションを生むためのエコシステムをつくらないといけない
・欧州人は頭が固くてフットワークが重くイノベーションには向いていない。学ぶべきはシリコンバレー・シンガポール・シンセン
・2000年ごろに日本が変われなかった原因①伝統的な日本企業が強すぎた②日本人の意識とものの考え方(昭和的均質)
・日本は昭和モデルをIT化できなかっただけでなく、昭和的なものの重要性を軽視しすぎて、昭和の遺産を食いつぶしてしまった
・本来の日本人とは、西洋の個人主義を取り入れたあとではなく、それ以前の東洋的思想を元に生きていた日本人のこと
・すべての公教育は、人と違った自分独自の意思決定を学ぶ経験が少なく、結果として自己選択を行う個人の眼や基盤が育っていない
・大化の改新の律令政治が日本の国家制度の基本スタイル~日本の中心に天皇制という概念を王制として持ってくるけれども天皇が政治をせず、官僚や政治力のある実力者が政治を行う官僚主導の管理経済型スタイルである
・墾田永年私財法から土地は国家だけでなく国民も保有できるものになった
・日本は国教を定義することなく信仰を定義できてしまった特殊な国
・明治から昭和初期の70年強は日本の歴史の中では奇特な時期(天皇一神教対策)
・日本は本質的にカースト(士農工商)が向いている国
・社会で重要性を決めるのは市場での希少価値
・生業が保証されて、それに打ち込めるだけで人生のヴィジョンがほとんど決まる
・今の日本は拝金主義すぎるので忘却しなければならない。お金はたかがツール
・文春が不倫を報じて不倫した人を世の中の人たちがたたいているが、それはみんな不倫したいという裏返し
・文化は人の知の蓄積そのもの
・欧州では社会に価値を生み出しているアーティストや博士は尊敬されている
・日本は職人に対してリスペクトが少ない
・コンビニは行かずアマゾンのPrimeNowでスマホで注文、40分ほどで宅配される
・今後は都心に住むメリットはあまりなくなってくる
・エジソンが電気製品をつくって売り、フォードが自動車を大衆化した社会変化。このふたりが20世紀をつくった
・20世紀はデザインとマスという概念ができた世紀
・今後インターネットは個人化していく。その個別最適化が人工知能
・どうやって我々は近代を脱していくかがキーワード(法律や教育プロセスなどは150年変わっていない)
・最適化を目指せることが、これからテクノロジーによって起こる社会変化の本質
・自動翻訳が発達すると日本のサービスを世界に出していきやすくなる
・これkらの革新は、自動翻訳・ロボティクスと自動運転
・トラックや物流の自動運転もあり得る
・これからの自動車企業は道具ではなく、生活様式、ライフスタイルを定義するブランドになっていく
・日本は5G先進国に(2020)3次元空間の共有が可能に
・日本の人口減少と少子高齢化はネガティブに語られているが、この認識は間違いでむしろ大チャンス
理由
①機械化により自由化省人化が進むこと
②人口減少と少子高齢化へのソリューションそのものが輸出戦略になること
③人口減少により子どもや人材への教育コストを多くかけることができる
・ホワイトカラーがやっている窓口業務などの仕事はほとんど機械化できる
・顔認証もこれから本格化していくだろう
・移民は政治的警備的コストが大きい。機械は日本人にとってリーズナブルな選択に
・機械が仕事をすることで年収が大きく上がる、人が減ることで需要が下がる分は輸出で補う
・サ高住も輸出できる
・日本人はテクノロジー好き
・これからの日本はすべてをブロックチェーンにして、あらゆるものはトークンエコノミーであるという考え方にしていかないといけない
・トークンエコノミーが非中央集権的にさまざまな経済圏をつくることができるようになる
・日本はすでにトークンエコノミー先進国。中央集権から脱する切り札に
・中央政府は夜警国家になればよい。日本全体の道路整備や国防に予算を集中すればいい
・日本の賃金が上がらない根本的理由はデジタル製品のほとんどがシリコンバレーのプラットホーム経由で扱われているから。それを超えるために日本はトークンエコノミーを今すぐに進めていくべき
・世界とカリフォルニア帝国との戦いがある
・2024年中国のGDPが米国を上回り世界一に
・2022年インドの人口が中国を超える
・2035年インドのGDPが中国を上回る
・アジアへのパワーシフトは日本にとって好材料
・これからの日本では明治維新の前の日本のように、国家よりも地方への帰属感が増し、国という意識が薄れてくる。日本は新しいテクノロジーを世界に先駆けて取り入れることで人口減少・高齢化社会の理想的な国に近づく
・戦争はよくないが機械化自衛軍は必要。これから戦うのはロボット
・日本の繁栄のために重要なのは国防。これを盤石にした上で取り組むべきは民主主義のアップデート
・日本人は民主主義を自ら勝ち取ったわけではない。民主主義は制度と理念の二つに分かれている
・リーダー2.0の時代のリーダーはすべて自分でできなくても構わない。足りない能力を他の人に補ってもらう。弱さと共感性の高さが求められる
・独立した個人という考え方自体が近代が生んだ幻想。日本人には合わない
・意思決定と実務権限の象徴は別でいい
・後継者ではなく後発を育てる(継承ではなく新しいジャンルや会社を新しくつくっていく人材を育てられる人)
・日本人はリーダー2.0が合っている(安倍首相も2.0ではないか)
・新しい時代に磨くべき能力とはポートフォリオマネジメントと金融的投資能力
・これからの時代は複数の職業を持つべき
・小学校で大切なのは好きなものや好きなアクティビティを見つけること
・大学生には研究をやらせる。新規性のある研究をするとその人しか知らないことを知ることができる
・男女は平等に扱うべきという西洋的な考えにはくみしないが、大事なのは男女差を認めた上でフェアであること
・人間への投資はもっとも価値が高い投資
・時代が変わるときには人を集めないといけない
・みんながハッピーになるテクノロジーを生み出すことにこそ力を注ぐべき
・ポジションを取る、批評家になるな、フェアに向き合え、手を動かせ、金を稼げ、画一的な基準を持つな、自分なりの価値を見出し愛でろ、トキメキと絶望と両方を持ち期待せずに生きろ、明日と明後日で考える基準を変え続けろ