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憲法に対する肯定的な評価と否定的な評価の差はとても大きい。理想論か観念論か現実論か、これが長年国論を二分する論争として続いてきました。

 
日本国憲法は、アメリカを中心とする連合国占領下で制定施行されたものであり、多くの条文が占領軍の関与によるものでもありますし、そういう意味で日本国民が改めて独自の憲法を作ろうとする試みは否定すべきものではありません。
 
一方、改憲論の多くが、戦前戦中の社会を一部肯定してみせたり、戦争の反省や非戦の誓い、個と人権を大事にする戦後民主政治の成果に疑問を呈し、現憲法よりも義務と人権の制限をしようとしている内容のものが多いことが私個人の疑問でもあります。
 
その意味で、今のように政府与党自民党から改憲論が盛んになっている今こそ市民の側からも憲法のあり方を提示する必要もあろうかと思いますね~
 
憲法をそのままにするにしても、よりよくしていくにしても次の視座が必要だと市民にも政治家にも個人的に考えます。こういうベースの上での幅の広い議論が必ずしも出来ておらず論争がかみ合わないのが残念です。それにはおそらく原因があるわけで、この検証もしなければなりませんね~
 
①結果的に戦後直接の戦争を避け続けた、戦後民主主義というものを概ね肯定的に評価すること
②人権を制限し、アジアに被害を与え、人の命よりイデオロギーや国家の存続を優先させた戦前・戦中が全体としては悪かったという真摯な反省が一貫していること
③民主政治を信奉し、立憲主義を理解していること
④人間に必要なのは社会であって、国家を絶対視しないこと。人の命を最優先に考えることができること

 

新世紀になり、戦後70年が過ぎ、新しい時代を迎えるにあたって忘れてはいけないこと、新しく入れていかなければいけないもの。それぞれあるのでははいでしょうかね~

 

 

読書メモ↓

 

 

・革新派だけが護憲を叫んできたのではない。保守の中にも改憲に待ったをかけてきた人がいた。宮澤喜一であり、後藤田正晴であり、野中広務である。残念ながら現在の自民党にはこうした信念をもった護憲派が見当たらない

 

・改憲派の中曽根康弘は、憲法は長期目標でスローガン的。保守にとっての貞操帯みたいなところも

 

○城山三郎

・「戦争はすべてを失わせる。戦争で得たものは憲法だけだ」

 

・城山氏を語るとき勲章拒否と現憲法擁護の二点だけははずしてほしくない

 

・自衛隊の本質は人を救うことであり、人を殺す軍隊とは違う。自衛隊は人を救う使命を持つ組織であり誇るべき伝統

 

・残念ながら現在の自衛隊も城山の願うものとはなっていない。トップの意識はかつての軍隊と同じ

 

・特攻は志願ではなかった。当時の国と社会が強制した

 

・「旗」という詩。旗を振った者への嫌悪と振りまわされた自分への悔い

 

○宮澤喜一

・「保守とは主義ではなくて一つの生活態度。保守とは一種の常識主義」「憲法の主人は国民自身であり、国民が憲法を使うのであって憲法が国民を使うのではない」

 

・憲法を改めるメリットがあっても、そこからくるデメリットというものが極めて近い過去にあった

 

・先進国になればなるほど国民の価値観は多様化する

 

○佐橋滋

・非武装論の異色官僚

 

・軍備は経済的にいえば全くの不生産財であり、人間の生活向上になんら益するところがないどころか、大変なマイナス

 

・世界の人類の平和を希求して、自ら実験台になる、これほどの名誉がほかにあろうか

 

・第二次世界大戦であれだけの犠牲を払ったのだから、平和憲法は絶対に厳守すべきだ。そう自ら規定すれば、おのずから日本の役割がかっきりしてくる

 

・組織というのものは放っておけば必ず非民主化する。官僚組織を民主化しようとしてきた

 

・佐橋氏は部下に殉ずる人

 

○後藤田正晴

・学徒出陣の学友は1/3還ってこなかった

 

・日米安保条約なんて早く日米友好条約にしないといけない

 

・経済は規制緩和ではなく規律重視。外交はリベラル。国民生活は国家主義ではなく国民主義

 

・中曽根康弘に逆明利君

 

・民主主義は手続きがいちばん大事

 

・佐々 後藤田は「外交ハト」で「治安タカ」派だった

 

・後藤田は護民官。秩序や法秩序が優先すべきものだった。そのために平和が尊重されなければならなかった

 

・保阪正康 戦後の歴史を言論だけでしかつくりえなかった社会党に対し、後藤田はその行動において事実をつくり、現実社会に定着させてきた

 

〇野中広務

・戦前に似ているのは情報統制だ。なぜアメリカが始めたイラク爆撃を日本が支持しなければならないのか

 

・野中氏は靖国神社への一貫した見解で、小泉首相(当時)の靖国参拝に反対した

 

・政敵たちを震え上がらせる恐ろしさと、弱者への限りなく優しい眼差しの双方を野中は持っている

 

〇三國連太郎

・軍隊は男性の組織でありながら女性のことばかり考えている。女性へのあこがれと蔑視が混ざり合って。戦争という暴力と女性に対する暴力とは潜在的な部分でどこか心理的につながっているような気がする

 

〇三輪明宏

・一番ヤボなのは戦争をすること

 

・戦争とは醜で美といちばん対極にあるもの。原爆の実験場として日本中を灰にしたアメリカやイギリスをいまでも許さない

 

・日本は「私たちは原爆を持ってないから、あななたちも原爆持つのをおやめなさい」っていう資格のある唯一の国だ

 

・遠藤誠 右翼と左翼の違いは、太平洋戦争を侵略戦争と見るのが左翼で正義の戦争と見るのが右翼。渡辺芳則(山口組組長・当時)は「日本の軍隊が中国や東南アジアに攻め込んだ、ほかの国の縄張りを荒らしたら侵略になる」と応じた

 

・三輪はノーベル賞を逃した三島由紀夫に「ノーベル賞は、爆弾つくった人の、罪滅ぼしの賞」と言った

 

〇宮崎駿

・考えの足りない人間が憲法なんかいじらないほうがいい

 

・憲法9条と照らし合わせると、自衛隊はおかしいがそのほうがいい。国防軍にしないほうがいい。本当に戦火が起こることがあったらとにかく自衛のために活動することにすればいい。自分からは手を出さない、過剰に守らない。そうしないと国際政治に慣れてない日本人はすぐ手玉に取られてしまう

 

・戦前の日本は悪かった。それを認めなければダメ

 

・市民とは「職業を通じて生活をたてている人間」職業と生活は分離していることが必要でありそれば市民的人間である

 

〇吉永小百合

・戦後民主主義とは「個として生きる」ことを学べること

 

〇中村哲

・魯迅「希望とは、もともとあるものだとも言えないし、ないものだとも言えない。 それは地上の道のようなものである。地上にはもともと道はない。 歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」

 

・平和憲法は世界中の人が憧れている理想だから守る努力をしなければならない

 

・「憲法は我々の理想です。理想は守るものじゃない。実行すべきものです。この国は憲法を常にないがしろにしてきた」

 

・アフガニスタンにいると「軍事力があれば我が身を守れる」というのが迷信だと分かる。敵を作らず、平和な信頼関係を築くことが一番の安全保障だと肌身に感じる。単に日本人だから命拾いしたことが何度もあった。憲法9条は日本に暮らす人々が思っている以上にリアルで大きな力で、僕たちを守ってくれている」