〇朝日新聞社説

 

・憲法が定める普遍的な価値に敬意を払わないのは安倍政権以来の体質といえる

 

・国民の「知る権利」を脅かす特定秘密保護法、歴代内閣が違憲としてきた集団的自衛権の行使に道を開く安全保障関連法、捜査当局による乱用が懸念される共謀罪の導入、合意形成のための丁寧な議論ではなく、与党の数の力で異論を押しのけてきた

 

・現憲法は占領期に米国に押し付けられたとの歴史観。人権、自由平等といった人類の普遍的価値や民主主義を深化させるのではなく、とにかく変えたいという個人的な願望

 

・自民党の2012改憲草案は、普遍・人類といった言葉は消えていた

 

・国家が物語を語り始めたら警戒しなければならない

 

・大日本帝国憲法は近代の立憲主義を取り入れようとした苦心作

 

・国体に支えられた物語が独り歩きを始め、極大化した日本国家の物語が敗戦をもたらした

 

・憲法の普遍性ではなく、日本らしさを強調するのは国家の物語に閉じこもりたい欲求の表れ。改憲が自己目的化する

 

〇林知更

 

・ドイツは二度の敗戦とナチスの蛮行という特別な体験を経たことで、人間の尊厳や議会制民主主義という西側の原理を受け入れるしかないという合意が生まれた

 

・現行憲法になる前の日本を理想化したような復古願望が残っているのも理解不能ではない

 

・9条をめぐる重要な観点は、合理的に制御された自衛組織と憲法体制をどう融和させるか。自衛隊は大きな役割を果たしている。ただし暴走してしまうのは良くない、と多くの国民はそう考えている

 

・左翼を敵視する安倍首相の改憲論は、過去のイデオロギー闘争が21世紀のいま再び展開されている。社会の中にイデオロギーによる分断を作り出し、それを自らの政治エネルギーにする狙いがある。護憲派による反安倍の動きを誘発させていることで分断は実現されている

 

〇片山杜秀

 

・戦後の右翼は、米国に押し付けられた憲法を一字一句でも変えることが、日本の誇りの回復の第一歩だと言い続けてきた。民主主義を否定したいという反戦後的な情念や、明治憲法こそが理想という復古的美学がそこに絡む

 

・安倍政権は、彼らの支持をつなぎとめるために、9条をはじめとする改憲を掲げている。でも戦争をしやすくする環境づくりは、解釈改憲によってもう済んでいる

 

・実際に政策への影響力を持っているのは、美学派や情念派ではなく、国際政治の現実に対応すると称して、日米同盟を強化する方向にしか物事を考えない「リアリスト」の官僚や学者たち。憲法は解釈改憲で一字一句変わらないまま国のかたちがどんどん変わっていってしまう。解釈改憲は「いつか来た道」