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幸せとお金の経済学
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https://booklog.jp/item/1/4894517779
資本主義経済を徹底的に分析したのがマルクスの「資本論」でした。資本主義経済における現代の経済格差が拡大している原因が 資本収益率(r)>経済成長率(g) であることを豊富なデータから徹底的に分析したのがピケティの「21世紀の資本」でした。これらの資本主義の構造的問題を解決するのは容易ではありません。SDGs(国連が提唱している持続可能な開発目標)で、まず優先されるべきが「貧困の撲滅」であり、それこそが平和や社会の安定に繋がるとしています。
金森重樹氏は、サラリーマンから実力でのし上がった私が尊敬している実業家のひとりです。その資産家金森氏が興味を持って監訳したのが、ロバート・H・フランク氏の「幸せとお金の経済学」です。
この本は、現代資本主義社会の中での経済格差の分析をしながら、
「地位財」=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの(所得・社会的地位・車・家など)
「非地位財」=他人が何を持っているかどうか関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの(休暇・愛情・健康・自由・自主性・社会への帰属意識・良質な環境など)
との比較において、「非地位財」の大切さを多くの人が知るべきだ、としています。
ごく一部の富裕層の地位獲得競争である地位財消費が社会全体の消費に影響し幸福度を下げている。社会全体が「地位財」消費を抑え、シンプルライフを実践し、「非地位財」によりお金をかけることによって個人とコミュニティ(家族などを含む)そして社会の幸福に繋がる、と結論づけています。
幸福度とは主観的なものではあるのだけど、人間は日々の生活を多く「相対的な比較」をすることにあまりにも慣れさせられています。そこから脱却して、「非地位財」を大切に、どのように上手に獲得していくか。それに加えて必要かつ大切なのは、器の範囲で縁ある他者の幸せに関わっていくこと。その方が結果的に長期的に幸せと富に繋がるのではないかと私は思っているのです。
読書メモ↓
・富裕層になるということが人生の目的ではない。富裕層になることで莫大なお金が自由になる結果、幸福になるというのが本来の目的。にもかかわらず、富裕層になる方法を追求していたのでは、幸福になるという本来の目的に到達できないと気付いた
・お金をいかに使えば幸福度を高められるのかというお金の分配について深く考えるようになった
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目からウロコの幸福学
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「目からウロコの幸福学」ダニエル・ネトル
・これで紹介されていたのが
「地位財」=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの(所得・社会的地位・車・家など)
「非地位財」=他人が何を持っているかどうか関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの(休暇・愛情・健康・自由・自主性・社会への帰属意識・良質な環境など)
・人が地位財を追求するのは「環境適応をめぐる進化の賜物」
・人は地位財という短期的な報酬を得ようとホットな衝動のために非地位財の長期にわたる報酬を犠牲にしているが、地位財という目先の報酬を犠牲にして、それ自体に価値があり、喜びを得ることができる非地位財という長期の報酬を手に入れる必要がある
・休暇・愛情・健康・自由・自主性・社会への帰属意識・良質な環境などは地位財に替え難いものだと深く理解する必要がある
・非地位財に対してお金を配分していくことが不毛な競争的消費に巻き込まれないことにつながり、結果的に資産形成への確かなステップとなる
・思い切り地位財の競争に巻き込まれている。我が家にはベンツやポルシェが停まっているので、ベントレーにした
・見栄えの良さとは相対的なものに他ならない
・平均的な労働者は、1970年と比べて2010年には2倍働かなければならなくなっている
・無益な地位獲得競争が起こるのは、ある特定の1人の消費が、他の人にコストを強いていることにほとんど注意が払われないため
・社会においては羨望を良しとしない考え方が支配的。子どもたちにはこれからも他人の幸福を羨んではいけないと教えていくべき
・命題①人には相対的な消費が重要だと感じる領域がある
・命題②相対的な消費への関心は「地位獲得競争」つまり地位財に的を絞った支出強壮につながる
・命題③「地位獲得競争」に陥ると、資金が非地位財に回らなくなって幸福が下がる
・命題④中間所得層の家庭では、格差の拡大によって「地位獲得競争」から生じる損失がさらに悪化した
・「所得の増加」と「暮らし向きの良さ」は完全に同義ではない。中間所得層世帯は心理的コストに加えて、さまざまな経済コストを押し付けられている
・資産の実質的な増加のほとんどはトップ層に集中している
・幸福度が最も高いのはデンマーク人。ヨーロッパでは北へ行くほど所得格差が小さくなることから、格差の縮小と幸福度の増加は両立すると言える
・人間の意欲は自然淘汰によって方向づけられる。ダーウィン主義の見方では、動物は繁殖の成功に結びつくかどうかで行動を選択する
・現代社会においても性的魅力は相対的な資産と強く結びついている。理論上、自然淘汰の圧力は相対的な資産に対するこだわりが最も強い人に与すると予測される
・局所的地位(場所における地位)が最も重要だという仮定が企業内の賃金の分配にも影響を及ぼすことは容易に検証できる
・幸福の持続性は地位財よりも非地位財の方が高い
・超富裕層が集まるコミュニティでは、中心地の住宅が高額すぎて中間所得層が近寄れない
・アンバランスな支出が拡大している原因は、収入や財産が富裕層にますます集中していること。その大きな要因は「勝者総取り市場」わずかな能力の差が、極端に大きな報酬格差につながっている
・大卒者の1980年以降の収入は、低所得層はほぼ横ばい、中間所得層は微増、富裕層は急激に増加している
・アメリカ最上位の富裕層は、累進的な消費税を課せられると、腕時計の購入を減らし、建築する豪邸の広さを抑えようという思いが強くなる
・累進消費税には貯蓄を促す効果が期待される
・十数年前から私たちの所得はほとんど変化していない。だだし上位20%の富裕層は例外
・平均的に格差の小さい国のほうが、大きい国よりも成長スピードが速くなっている。長期的に見てもそう
・私たちが直面している課題の解決策として提言されているのは、税制の見直しだけではない。個人の行動を見直すほうが、全体の心理的要因を変えようとする取り組みより効果的。その代表例がシンプルライフの探究
・シンプルライフとは、労働時間を短くし、小さな住宅に暮らし、高価なクルマを買わず、自宅近くで休暇を楽しみ、友人たちと自宅で簡単な食事を楽しむ
・世帯収入が15万ドルレベルの人たちがシンプルライフを実践すれば、日々の生活は明らかに改善する
・税金が減っても富裕層が得をしないのは、支払うべき税金が減って使えるお金が増えたとしても、全体の可処分所得が増加しているので競争は変わらない
・減税が受益者の幸福度にまったく貢献しないどころか、消費パターンを変え、中間所得世帯の生活を困難にした