○安彦良和
・レーニン主義的な革命観が危険だということが忘れ去られている、宗教の危険性も
・強い人とは、イデオロギーを振りかざす人たち。スターリンの粛清もそう。全面的な反対派はもちろん危険な目に遭います。一番矢面に立つのはなまじ理解のある繊細な人たち。ポルポト虐殺はインテリから先に殺された
・ナチズムの発想は、日本が世界的に疎外され、日本こそ皇国だ、ナンバーワンだという発想も同じ
・人間にとって平和に暮らすのが何よりも望ましいことなのになぜ戦争をしてしまうのか。でも戦争することのほうがむしろ自然。未然に危険な芽を摘んで戦争しないでいる状態がむしろ人為的。
・人間ってわかり合えないものなのだ、誤解するものなのだと考えた方がわかりやすい。だから誤解したり疑心暗鬼になったり、相手と自分は違うという違和感を敵対感情にしてしまったりする
・リベラル側の人たちがいつまでも個の主張ではだめだということに気付いてきているのはいいこと。性善説なり個の尊重に寄っかかりすぎていたのではないか。公に対し個ということで闘い切ることができないとわかった
・世界的な保守化とかポピュリズムとかにたいしてどうするのかということが非常に弱い。問題は保守勢力でもポピュリズムでもなくリベラリズムの側ではないか
○佐藤甲一
・トランプ政権にバノン主席補佐官の失脚。バノン氏は「アメリカ・ファースト」を掲げ、戦後の米国が貫いてきた国際協調路線こそ一部の既得権者に富をもたらすだけであり、世界の警察官をやめることがアメリカ人誰もが等しく豊かになる方策である、とした
・アメリカのシリア攻撃はアメリカ・ファーストとは真逆
・バノン氏の更迭の本意は、政策転換をめぐる対立にあった
・トランプ政権は露中両リーダーと国際協調という外交理念ではなく、商売のように取引しながら共同歩調をとり、安全保障上の均衡を図るのではないか。これこそトランプ政権が目指す国際新秩序、外交ビジネスによる真のアメリカ・ファーストではないか
○田中優子
・日本の歴史は江戸時代も明治以降も戦後も今も、グローバリゼーションにいかに対応するかを軸に政策が決められてきた。その中で明治以降の日本お特色は欧米に「なる」ことで力をもとうとする歴史であった
・神社信仰は、その土地の自然を象徴する海川山岩を御神体とみなして自然環境を尊重し、その土地の風土的特色をコミュニティの中心に据えて鎮守の杜を作ることで成り立っていた
・明治政府すなわち近代国家日本が行ってきたことは、日本人の暮らしの風土的中心を壊していくことであった
・大村益次郎は靖国神社の創建に奔走し、陸海軍が祭事を統括する戦争のための神社を創った。地域の神社を破壊し、国家の神社を創設して軍事化の柱とした
・靖国神社の信仰対象が国家神道。国家神道はそれぞれの神社がもっていた鎮守の杜の自然信仰とは異なる。鎮守の杜の基本神は自然物であるが、国家神道の神は天皇
・江戸時代まで天皇家は仏教徒だった。天皇を中心に据える国家神道は明治政府の創作物
・明治から天皇家は軍事化の中心に位置づけられた。欧米に勝つには強い軍事力をもつ国家体制が必要で、子どもたちをその構造に組み込むためには教育を天皇の勅語が命じねばならない。そのような価値観によって日本は戦争に突き進んだ
・人権という概念は江戸時代までの日本にはない
・明治日本には軍事力・国家神道・天皇制という秩序と、自由民権の浸透の両方があった。したがって日本の民主主義、人権、不戦といった戦後精神は決して借り物ではない
・明治時代を夜明けと呼ぶのであれば、自由民権思想の浸透こそが夜明けの意味であり、その夜明けを戦後日本は実現した
・戦後は軍事力の代わりに経済力という強さを目標とし、それを達成した。しかしその経済力を失いかけ、中国がその地位にとって代わろうとしている今日、近代的無限の成長幻想に陥っている人々は現実の姿に向き合おうとせず、不安感にさいなまれ軍事力に戻ろうとしている
○内山英聡
西郷隆盛の靖国合祀を求める動き
・亀井静香・石原慎太郎氏らは、靖国神社に赴き、宮司に賊軍の合祀を求める申し入れ書を提出した(中曽根康弘・稲盛和夫氏らの名前も)
・賊軍合祀には、安倍首相の地盤である長州を礼賛するだけでなく明治維新に貢献した人々を総じて讃える政治的狙いが窺える
○後多田敦
・王政復古から10年余の間に日本は周辺諸国・地域への侵略、軍事行動を展開する国となった
・日本は琉球国や朝鮮国の王宮に軍隊を入れただけでなく、朝鮮王后閔妃を王宮内で殺害した
・明治維新150周年の顕彰は、戦後の選択を否定し、かつての大日本帝国の負債を拡大させるだけではない。それは現在の日本社会と日本人がアジアの破壊者としての位置を再び選びとったことを宣言するに等しい
○佐々木実
・「財政から読み解く日本社会」
・自己責任や自助努力を重んじる日本型福祉国家の本質を「勤労国家」と捉えた
・石油ショックを乗り切るために財政投融資を活用した日本独特の土建国家路線が確立され、税負担を高めてきたヨーロッパの福祉国家とは異なる道を選択した
・大平政権は社会保障費を切り詰めるために家庭基盤の充実を謳った
・勤労国家の政策は公共事業と所得減税に収れんした
・勤労国家とは生存権と勤労の義務を結びつける社会であり、働かざるもの食うべからずの社会