http://booklog.jp/item/1/4800240808

マンガといっても侮ってはいけません。

歴史的・統計的経緯から見えてきた現代資本主義社会の本質を理解し、どう対応して生き抜くべきなのかを書いたピケティの「21世紀の資本」の内容がよく理解できるものとなっています。

日本を含む先進国の税制は、労働所得を得て増やしていくよりも、資本所得を得る方が有利です。仕事をしながらも、したたかに資本を得てそこからの資本所得を元手に資産を増やしていく。

難しいのは、資本を相続などで持ってる人と持ってない人との格差を埋めることが非常に難しいこと。そのための、資産課税のススメをピケティが説いていること。

イギリスのEU離脱、トランプ大統領誕生、ヨーロッパ各国の移民排斥を訴えたり極右政治勢力の台頭といった世界の保護主義的な傾向は、グローバル資本主義が先進国の労働者が最も割りを食っていることによるものではないか、と想像しています。

世界の大勢、世の中の現状の仕組みを理解し対応実施するにしても、社会的公正も求めることが社会の安定に繋がることも忘れてはいけないでしょうね。



 読書メモ⬇︎

・資本/所得比率 は6年分と言われている 年収の6倍の貯金がある計算

 

・資本収益率 1年間に投下された資本で得られた収益がその資本の何%に当たるのかを指す

 

・1900~80年までは世界の算出の7.8割が欧米に集中していた 2010年には5割に下がった

 

・資本収益率r>経済成長率gが現実。 r>gは理論ではなく歴史が示す事実

 

・過去に蓄積された富は、労働で得る富より成長が早い

 

・人口が増加していると社会の流動性は高まりやすくなる。人口増加がゼロか小さい場合、財産はそのまま受け継がれ、経済的・社会的地位の再現が働きやすくなる

 

・富裕国の経済成長率は1~1.5%。生産性、効率性を上げても大きな変化は期待できない

 

・資産が毎年1%増加していく場合、30年後の累積成長率は35%になる

 

・3~4%の成長率は歴史的・理論的に期待しにくい

 

・成長率が鈍化すると過去の蓄積の存在感が増す

 

・貯蓄率が高く経済成長が低い日本では新たに算出される所得よりも蓄積されてきた資本の影響力がますます高まっていく

 

・ITの発達によって、技術だけではなく才能を基盤とする文明移行期にある

 

・富裕層は資本からの所得を再投資に回すだけで経済成長を上回る所得を手にできるようになる。そんな社会正義を脅かす事態を防ぐ対策が必要

 

・20世紀以前のヨーロッパでは上位10%の上流階級が総資本の90%を所有する社会だった

 

・賃金を上げ賃金格差を減らす最善の方法は、教育と技能への投資

 

・富裕層は貯蓄を投資し、高額な資本所得を得る。資本所得と労働所得のダブルで富を増殖している

 

・r>g労働者が生産性を高めるスピードは、資本が増殖するスピードを追い越せないというのが歴史的事実

 

・r>gが行きつくところは、長期的には上位10%の人々に90%の富が集まる社会

 

・特定の資産家が膨大な資産を背景に政府への影響を強めるリスクをピケティが懸念している

 

・好きな事を仕事にする

 

・所得への最高税率は多くの先進国で第一次大戦後に導入された

 

・労働所得への累進課税は一見所得が低い人に有利な制度に見えるがそうとも言えない。資本所得を合算した所得への課税ではないから

 

・所得上位の人ほど資本所得のウエイトが高い。資本収益への税率は所得税よりも有利な場合が多い。その結果総所得に対する税率は逆進的になる

 

・ピケティが提案するのは、資本税の導入を提案している。国家の財源をまかなうことではなく、世界の富が偏るこの状況を透明化することが目的

 

・世界的な累進資本課税を実現すべきとしているのがピケティ

 

・大きな格差は民主主義の脅威となる。金の力で自分に有利な政策決定への圧力や、お金をかけたよい教育による教育格差も生じてしまう

 

・r>gの問題点は 格差が拡大すれば真面目に働くより世襲で財産を相続するほうが有利であり、持たざる者の不満が募る

 

・ピケティの「21世紀の資本」の目新しさは、「高所得者や大企業が富を増やすと、低所得者層にも富が流れ落ち、社会全体が潤う」という経済理論(トリクルダウン)を否定したこと。市場に期待せず、政策介入し、世界的な累進資本税の導入を検討すべき

 

・日本では若者に投資すべき

 

・経済成長率(g)を上げるには、国民一人ひとりの生産力を高めることが非常に大事

 

・消費税は所得と無関係に同率の税金を国民に課す。低所得者ほど負担が大きい逆進的税制