http://kaizoku-movie.jp/sp/index.html
百田尚樹原作を読んだ上での鑑賞でした。
1953年の日章丸事件を中心に、戦前と戦後直後の民族系石油会社出光興産の創業者出光佐三にまつわる人間ドラマ。原作は国岡商店の国岡としているがノンフィクションと言っていい。
20世紀は石油の世紀。石油は国の血液だったその時代。石油で世界覇権のため英米らと戦争し、その戦争に負けた日本の復興のために出光らは闘って勝った日章丸事件。
出光は、創業から安くていい油を売るために会社を愛するスタッフとともに、地域同業者・軍部・官僚・そして英米石油メジャーら既存勢力と闘う。戦後直後、売る石油がなく1人もクビにせず何度も倒産の危機に見舞われながらも、出光の即断即決で日本人の誇りでもって民族系石油会社を守り発展させたその手腕は多くの事業者に共感を呼ぶことでしょう。
百田尚樹の原作は緻密な取材で、出光の創業と発展、日章丸事件の概要が理解できます。映画では壮大な原作の一部をあらわしたにすぎず、戦前戦後の歴史的背景や日本と世界の石油業界を理解しなくてもよい人間ドラマに仕上がっていますが、先ほど申し上げた時代背景を理解できたらなおいいかと思いました。
21世紀はエネルギーの多様化で石油の重要性はかつてより薄れ、業界再編が起きる中、今や出光は上場し、一族経営ではなくなり、米国石油メジャー系の昭和シェル石油との経営統合に大株主出光一族の元社長らが反対して話題となっています。
時代が違うとはいえ出光佐三が望んだことではなかったでしょうけれど、日本人としての気概を呼び起こさせてくれます。
以前申したように、出光佐三や百田尚樹への尊敬の念と、賛同できない部分は依然として持ち合わせてはいますが、人間ドラマとしては素晴らしい。歴史的考察が個人的には欲しかったかな。
これからも、一部ドラマ化されてはいますが、松下、ソニー、トヨタ、ホンダなどの企業家が世界的企業となる過程の作品が出ることを望みます。