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著者の鈴木邦男氏は元新右翼(親米反共ではない民族派)代表でした。その氏が現在の社会・政治状況を憂い、リベラルを主張しているところが新鮮。

 

読書メモ↓

 

・愛は素晴らしい。愛国心を持つことは素晴らしいし、当然のこと。でも、この言葉は利用されやすい

 

・愛国心の名のもと、売国奴・非国民という言葉を浴びせることは、愛を説きながら、憎しみや排除が暴走する逆転現象

 

・鈴木氏は高校生の頃から、愛国心に目覚め、愛国運動をしてきた。君が代を1万回以上歌い、国旗日の丸も1万回以上掲揚し、靖国神社も100回以上行っている

 

・安倍首相は、隣国と協調するよりも日本の権益を堂々と主張し、アメリカに押し付けられた憲法を改正し、自主憲法をもつことを目指すと公言している初めて首相であり、愛国者にとって時代の風が有利に吹いている

 

・ストーカー行為は激しい感情を抱いている、愛は激しければ激しいほど相手を束縛し、共生することも多い。これは愛とは言えない

 

・国は言葉を話せない。愛という正義によって勝手に使われる

 

・日の丸は自由な国民の象徴であるべきなのに、排外主義の先頭に立たされている

 

・鈴木氏は改憲派。だが、今の右傾化ムードで急に改憲するのは危ない

 

・1960年代は圧倒的に左翼が強かった

 

・1960年当時の右派は、改憲を主張し、その一部は明治憲法復元を主張していた。いずれも諸悪の根源が日本国憲法だというスローガンを掲げていた

 

・森達也「主語が複数になると述語が暴走する」我々という主語を使う時は自分を客観的に見ることができなくなる

 

・集団から外れること、そこから脱出することがしにくいのが日本社会の特徴

 

・鈴木は改憲派だが、今の右傾化の動きに任せて、改憲することは危険だと思っている

 

・自民党の日本国憲法改正草案では、すべてを憲法のせいにして、憲法に過剰な期待がされて、憲法を変えようとしている

 

・昔は左翼が強かったが、いまは左翼もほとんどおらず、野党の力も弱い。「日本を取り戻せ」「中国、韓国になめられるな」と愛国心が煽られ、日本社会全体が集団で暴走しかけている

 

・アメリカは日本に勝って、この国がもう二度とアメリカに歯向かうことのないように軍隊を廃棄させそのために憲法をつくった、がそれだけなのか

 

・第二次大戦は、人々の熱狂を背景としたファシズムによる戦争だった。ファシズムの国々が敗けた。だからこの機会に戦争それ自体をなくしてしまおう。まず日本でテストケースをやってみよう、とする理想を考えたのではないか

 

・アメリカ以上の民主的理想的な憲法をつくろうとしたのが日本国憲法

 

・政治家などで愛国者と自称している人たちのなかで、本当の愛国者がいるだろうか。それが国のため、国民のためになる、と判断して覚悟をもって行動している人こそ、本当の愛国者ではないか

 

・実際、政治家たちは国民の自由を制限させ、自分たちを飛散するためのデモや集会をやめさせたいのだろう

 

・自衛隊を軍隊として派兵し、アメリカの戦っている戦争に参加させる。日本から宣戦布告するかもしれない。そのとき、天皇の名のもとに戦争を行う。そんなことを想定して天皇を元首としようとしているのではないか

 

・戦後日本の代表的な政治学者・丸山真男は「大日本帝国の実在よりも戦後民主主義の虚妄の方に賭ける」と言ったという

 

・戦前の大日本帝国は強国だった。戦後は思想のない虚妄だと批判されることが多い。しかし国家が強くて、国民の自由や権利のない時代のほうがよいのか

 

・憲法は人間が幸せに暮らせるように、憲法をつくった。人間あってこその憲法。人間が平和憲法を実行させるために、闘い続けなければならない

 

・改憲派の小林節氏は、2000年代初めごろから、「改憲は必要ない。いまの改憲の動きは危ない」と言い出した

 

・自民党の側は、「愛国心をもて」といった主旨を憲法に書こうと主張し、小林さんは国が国民に「愛国心をもて」と強制するのはおかしいと述べる

 

・政治家の仕事は、国民が愛せるような国をつくることではないのか(小林)

 

・一水会は2015年に右翼を名乗ることを辞めた。他の右翼団体から激しく批判されたこともある

 

・同じ日本人なのだから、日本を愛する愛国心をもっているのだから、という視野の狭い仲間意識のもと、排他的傾向が強まっている。自画自賛と排外主義が跋扈しているのが現状

 

・「売国奴」と言われる覚悟をもった人間こそ、実は未来にとっては愛国者なのだ

 

・いまの改憲論に情熱や理想が感じられない。「不自由な自主憲法」ではなく自由な「押し付け憲法」にこの国の未来を賭けたい

 

・韓国には反日本がない。それは、今さら日本の侵略・帝国主義を批判した本は買わないし読まないから。知っていること

 

・赤尾敏氏は、「日韓友好と竹島、もちろん日韓友好の方が大切だ、とした。竹島など爆破してしまえ」と言っていた

 

・三島由紀夫は「愛国心」という言葉は好きではなかった

「愛国心の愛の字が私はきらいである。自分がのがれようもなく国の内部にいて、国の一員であるにもかかわらず、その国というものを向う側に対象に置いて、わざわざそれを愛するというのが、わざとらしくてきらいである」

「もしキリスト教的な愛であるなら、その愛は無限定無条件でなければならない。人類愛は筋が通るが愛国心は筋が通らない。なぜなら愛国心とは、国家を以て閉ざされた愛だからである」

 

・三島は、政治家、権力者が愛国心を強調し、国民に押し付ける、という図式が嫌いだった

 

・三島の改憲案は、日本の核武装や徴兵制には反対している

 

・現在の安倍政権が目指す改憲は、アメリカの傭兵化ではないのか

 

・憲法改正・自主憲法は三島の悲願だった。でも同じ言葉を使いながら、まったく別の方向に行こうとしている。現在の政権が主張するような自主憲法ができたら、国家が国民に対して上から押し付ける憲法になる。自主憲法という名が大切か、それとも憲法の中身が大切なのか、中身を選びたい

 

・愛国心を汚れた義務にしてはならない