![]() | 「学力」の経済学 1,728円 Amazon |
http://booklog.jp/item/1/4799316850
昨年のベストセラーとなった本のひとつ。
データや実証結果、科学的論拠を基とする教育経済学としての視点から、国や家庭がより効率的効果的に教育や学力アップする具体的な方法について書かれた本。
読書メモ↓
・「教育経済学」は教育を経済学の理論や手法を用いて分析することを目的としている応用経済学の一分野
・ご褒美で釣ってもよい・ほめ育てはしてはいけない・ゲームをしても暴力的にならない
・人間はだませてもデータはだませない
・子どもの学力にもっとも大きな影響を与える要因である、親の年収や学歴についてはほとんど触れられていない
・東大の親世帯の平均年収は約1000万円。世帯収入950万円以上の学生の割合は57%(2012)
・民間給与調査による給与所得者の一人当たりの平均年収は408万円(2012)二人以上勤労世帯の平均年収は623万円なので東大生の親の収入は突出して高い
・学力と読書は相関関係はあるが因果関係はない
・今ちゃんと勉強しておくことが将来のためになる、のは経済学的にも正しい
・経済学には教育の収益率という概念がある。勉強することが将来の収入が高くなることに繋がることは数字が示している
・人間には目先の利益が大きく見えてしまう性質がある
・目の前の人参作戦は、子どもを今勉強するように仕向け、先送りさせないという戦略
・学力テストの結果がよくなったのは、インプットにご褒美を与えられた子どもたち
・ご褒美はテストの点数などのアウトプットではなく、本を読む、宿題をするなどのインプットに対して与えるべき
・子どもが小さいうちは、子どものやる気を刺激するような、お金以外のご褒美を与えるのがよい
・日本人は他の国の人々と比べると自尊心が低い。自尊心が高まれば子どもたちを社会的リスクから遠ざけることができる根拠は示されなかった
・学力が高いという原因が、自尊心が高いという結果をもたらしている
・子どものもともとの能力をほめると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する
・能力をほめることは子どものやる気を蝕む
・テレビやゲームが与える子どもたちへの負の因果効果は大きくはない
・テレビやゲームが有害だとするのは、人々の直感的な思い込みに過ぎない(それでもやりすぎ観すぎはNG)
・母親が娘に対して勉強するように言うのは逆効果
・学力が高い子どもたちの中にいると、自分の学力にもプラスの影響がある
・優秀な子どもたちと付き合うことが得策。だが、学力の高い友人から影響を受けるのは、そのクラスでももともと学力の高かった子どものみ
・習熟度別学級は、特定の子どもだけでなく全体の学力を押し上げるのに有効な政策
・習熟度別学級は、とくに学力が低い子どもたちに大きな学力上昇がみられた
・子どもの学齢が低い時に習熟度別学級を実施すると、格差が拡大し、平均学力も下がってしまう
・幼稚園から大学卒業までに負担する平均的な教育費は、国公立は約1000万円、すべて私立では約2300にのぼる
・教育を経済活動としてとらえると、将来に向けた投資と解釈できる
・もっとも収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)
・人的資本(人間が持つ知識や技能の総称。人格形成や体力・健康などの支出も含む)への投資は子どもが小さいときに行うべき
・社会収益率が7-10%に上るということは4歳のときに投資した100万円が65歳の時に6000円から30,000円になって社会に還元されている、ということ。したがって幼児教育への財政支出は社会全体でみても非常に割のよい投資
・認知スキル:IQや学力テストで計測される認知能力、非認知スキル・非認知能力は、人間の気質や性格的な特徴、生きる力に相当する
・非認知能力は、将来の年収、学歴や就業形態などの労働市場における成果にも大きく影響する
・中退することなく大学を卒業できていたのは、通知表の成績がよかった学生だった
・人生を成功に導くうえで重要だと考えられている非認知能力のひとつは、「自制心」
・「成功のカギはやり抜く力」とは、非常に遠いゴールに向けて、興味を失わず、努力し続けることができる気質
・レコーディングダイエットは自制心が鍛えられる
・やり抜く力を弱めるのはステレオタイプの脅威
・しつけを受けた人は年収が高い
・非認知能力への投資は、子どもの成功にとって非常に重要
・高卒と大卒の生涯収入は1億円の差がある
・1億円の宝くじが当たる確率は1000万分の1、交通事故で亡くなる確率は1万分の1、飛行機で事故に遭う確率は20万分の1
・日本の教育政策について疑問に思う点は、これまで日本で実施されてきた少人数学級や子ども手当は学力を上げる政策目標について費用対効果がないか低いか効果がないということが海外のデータを用いた政策評価の中で明らかになっている政策であるということ
・巨額の財政支出の前に、日本でその政策の効果測定を行うべき
・日本では教育という重要な分野において国際水準から著しくかけ離れた議論が行われてしまっている
・国の文教予算は15年前から20%以上減少している
・どういう学校に行っているか、と同じくらい、どういう親のもとに生まれ育てられたかが学力に与える影響は大きい
・学力テストの県別順位は、子どもの家庭の資源の県別順位を表しているにすぎない可能性がある
・行き過ぎた平等主義が格差を拡大させる
・家庭の資源に格差がある中で、同じ教育を行えば格差が拡大する
・格差を縮小する方向で学校の資源配分を考えるべき
・世代内の平等に固執するあまり未来につながる政策評価ができない状態を続けるよりも、なるべく不平等をつくらずに実験を実施することに知恵を絞るべき
・南アフリカは労働力調査や家計調査などの政府統計をインターネット上で公開しているデータを開示すれば、政府が雇用しなくても世界中の優秀なエコノミストが分析してくれる
・国民の税金を投じて収集されたデータは政府の占有財産ではなく国民の財産
・人間がいったん得たものを失うのは嫌だという心理を利用して教員の質を高めることに成功
・教員研修が教員の質に与える因果関係はない