![]() | 二人静 (光文社文庫) 1,008円 Amazon |
リアリズムの名手とも言われる作家盛田隆二氏の小説。
過去の恋愛のトラウマや認知症の父親の介護を抱える独身の周吾。周吾は父親の介護を通じて知り合った介護職員あかりに惹かれていく。
夫のDVで離婚し
前夫の影から恐怖におびえるあかりを、周吾はあかりだけではなく場面寡黙症であるあかりの娘志歩へも愛情を注ぐ。
お互いが絶望的な状況にありながらも、優しさと思いやりに満ち、抑制が効いた二人の静かな恋愛。そのピュアさが秋の夜長に合うかも。
盛田隆二は自らの介護経験をもとにインタビューでこう話していました。
「タイトルの二人静は山野草の名前で、2本の花穂の先に小さな白い花が寄り添っている。周吾、あかり、志歩、それに周吾の父親である恭三の4人は、たとえば志歩と周吾、志歩と恭三、それぞれがこの山野草のように静かに寄り添うことで絆を深め、希望に結びついていく。私は自分の父親との日々のかかわりの中で、ときに激しく落ち込みもする自身を鼓舞しながら書き続けたのですが、結果的に、なにかしら読者を励ますことができるとしたら嬉しいですね」
・(ヘレンケラーの目や耳のかわりをつとめたサリバン先生がいたことについて)「世の中のすべてのものには名前がある。そのことに気づいたとき、ヘレンは初めて世界とつながった。一人ぼっちじゃなくなったんだ。」
・「やさしくされればされるほど、裏切られたときの絶望感がよみがえってきて、男の人と関わりを持つのが怖くなる」