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読書メモ↓
Iは池上、Sは佐藤
I私たちは、何のために働くのか。働くという労働こそが、社会の富を生み出す、というのがマルクスの労働価値説。だが、がむしゃらに働くだけでは生活が一層貧しくなってしまうというのが資本主義のパラドックス
Iピケティ氏はマルクス本人から影響は受けていない。「21世紀の資本」は300年にわたる経済成長率や労働分配率のデータを分析して貧富の格差は拡大し続けていることを証明した
Sピケティは賃金を分配論で考えている。「資本論」では賃金は生産論で決まる
Iマルクスは政治経済学ではない、経済学自体としての経済の資本の論理を追いかけていくということをやるが、ピケティ氏はどう政治を動かすかという政治経済学が必要だというマルクスとは逆の発想で現代を見ている
Iピケティ氏は資本主義において必ず格差が広がる傾向にある、ということがデータでわかった。格差を改善縮小するには、富裕層に対する資産課税を考えなければならない、それが民主主義の力であると力説した。民主主義によって資本主義経済の矛盾を抑え込むべき、と考えた
S「資本論」を読むと、この社会の構造の限界がわかる
S竹中平蔵氏は経済の軍事化には反対している。その意味で平和主義者。パソナの会長をしているのは、人間の労働力から搾り取っていくのが唯一の価値というものがわかっているから
I今「資本論」を読むことは、東西冷戦が終わったことによって自由に資本論を学び、改めて資本主義とは何だったかをイデオロギーにとらわれずに読むことができるようになった
S結局、ソ連では労働力商品化を克服したところで、どうやって人間をつくっていくのかということができなかった。国家に寄生し、エネルギーに寄生する国になってしまった
S年収の150万円、300万円、500万円、700万円のそれぞれ壁があり、多くの人が300~500のところで諦めてしまう。そうすると新しい形でのプロレタリアートができているかもしれない
I都道府県別の大学進学率で、鹿児島は32.1%東京は72.5%と倍以上の開きがでてしまった
S教育の右肩下がりが起きている。親に相当な資金力がないと子どもは高い教育が受けられなくなっている
I一橋大学では4週間以上の留学を卒業のために義務付けたが、知的な英語のコミュニケーションができるには、英語圏の高等教育機関に留学する必要があってそれに1000万円くらいかかってしまう
S資本主義が恐いのは、外が見えず、資本主義システムの内部で頑張ることしか考えられなくなってしまう
Sマルクスは講座派と労農派がある
講座派 岩波書店の「日本資本主義発達史講座」共産党系の学者。明治維新は権力闘争であり、市民革命ではない。二段階革命論。絶対主義的天皇制がある日本資本主義は特殊なシステム。講座派は日本の資本主義や社会は特殊でそれから抜け出すことはできない
労農派 労農という雑誌に投稿する人、非共産党マルクス主義者。明治維新は基本的に市民革命だった。基本的に世界資本主義システムは普遍的。天皇制は資本主義のシステムにすでに入っている。世界システム論やグローバリゼーション論へと発展
I共産党は、戦後の日本で革命を起こすためには、まずアメリカからの独立を果たし、それから日本の革命をする二段階としている
S対米従属論というのは基本的に二段階革命論で、講座派
I中国共産党の「共産」はもともと日本語訳から
S資本の動きは3つの形がある
①商人資本形式
②金貸資本形式
③産業資本形式
S思想をまったく持っていない人はいない
S米国の原爆投下の論理は、「日本は異常なイデオロギーにとりつかれていて、戦争を継続していくだろう。だから、ここで原爆を使い、アメリカ兵の命と日本人の命を救う。ゆえに原爆投下は人道的だ」と。日本人からすれば嫌悪感を感じるが、アメリカ人の中ではいまでも通用している
S「資本論」だけでなく、ヘーゲルの「精神現象学」「大論理学」ハイデッガーの「存在と時間」西田幾多郎の「善の研究」など、とても難しく、しかし理屈の通っている本を丁寧に読むと物事を理屈立てて読むことができ、騙されにくくなる
Sマルクス経済における賃金論
①一か月の賃金で次の一か月働けるエネルギーを蓄える
②次世代の労働者階級の再生産。家族を維持して子どもに労働者になれる教育を受けさせて社会に出す間の賃金
③技術革新に合わせて本人が自主学習する費用
S安倍政権が狙っているのは資本論に書いてある通りシステムを維持するために、女性をどう使えるか。安倍政権の女性活用、活躍は「名誉男性」を作り出す方向性から抜け出せていない
S資本主義は恐ろしいもの。やはりこの社会の構造の限界がわかる
S権力の論理に立つと、その思想や内容に踏む込まないで、単純暴力行為で処理するのが一番簡単
S日本の一般社会と比べて、日本の論壇が極端に右傾化しているし、政治エリートも右翼化している。その人たちは、自分たちが真ん中にいると勘違いしている
S資本主義は簡単に壊れないが、このシステムには相当問題がある。それは人間をボロボロにする危険性がある。だからとりあえずうまくつきあっていかなければならない
S反知性主義に対抗するのは簡単ではない。若い人たちに日本の人口1万人だと思っているとどこかで損をする、とちゃんと教えなけばいけない。数字は大切
S人間は自分が嫌いで意味がないと思っていることの記憶は絶対に定着しない
I資本論を学ぶことは、いまの資本主義社会を相対化するきっかけを与えてくれる
S資本の論理に巻き込まれないためには直接的な人間関係が重要
Iすべてが資本の論理に流れてしまい、人生も家族もすべてがお金に換算されてしまうのが資本主義。人間性を失わないようにするには、そのすべてをお金に換算する論理から抜け出る力が必要。自分なりに考えて、自分が資本の論理に絡め取られていることを自覚する力が必要
I資本論では、資本主義によって労働者たちは鍛えられ、能力が開発されてゆく、そこで労働者が団結する
I日本の教育改革論議で、自由競争の中で飛び抜けたエリートを育てる必要があるのは短期的にはそうだが、長期的に見れば、それによって教育格差が起きたときに、日本経済、日本の資本主義の将来にとって実はマイナスになる。資本主義を発展させるためにも教育は大切
S労働者は資本家と自由な合意によって賃金を決定する
ピケティ 資本税については実現が極めて難しいという批判を受けているが、段階的なアプローチは可能。巨大な政治共同体を民主的かつ個人の権利を尊重し得る手法によって組織すること