姜尚中の政治学入門 (集英社新書)/集英社
¥713
Amazon.co.jp


http://booklog.jp/item/1/4087203301



・市場が民主化されるほど、実際には市場の寡占化が進むように、政治の世界もまた、砂粒化した有権者の民主的な参加が寡頭制的な少数派支配を推し進めていく現象


・アメリカ建国以来の原始的な問題は、先住民の虐殺と人種差別という二つの「原罪」と決して切り離してはならない


・第一次世界大戦後のウィルソン的な理想主義とレーニン主義の対立から冷戦は始まっている(ウォーラースティン)


・もっとも民主的な社会で全体主義の病理が蔓延することに警鐘を鳴らした丸山眞男


・フランス革命を経て世界が脱却しようとしたのは、少数派による専制支配。しかし民主主義がめざす人民の多数による政治は、見方を変えれば、マジョリティによるマイノリティの専制支配と背中合わせ。民主化の果てに全体主義の悪夢が待ち受けている


・近代社会が暴力の問題をいかに捉えるかの三つのパターン

①個々人が他者と関わる以上暴力は決して避けることはできないものとして暴力の存在を受け入れる

② ①と反対に暴力を人間にとって非正常なものとして捉えようとする理性主義的立場

③暴力を聖なるものとして捉える立場(革命的暴力・神的暴力)


・アナーキズム(無政府主義)の立場に立つと、諸々の制度こそが暴力とみなされ、なかでも国家は最悪の暴力の体現者となる。暴力根絶のための暴力が必要だとする思考回路がテロルを生み出す母体


・「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」(マックス・ウェーバー)

職業としての政治 (岩波文庫)/岩波書店
¥518
Amazon.co.jp

・憲法とは、権力者による力の行使を、どのように縛るのかを定めたもの


・日本国憲法の三大原則・根本規範は 平和主義・国民主権・基本的人権。現在の改憲論議は、三つの根本規範の改正と、それ以外の法律的条項そ変えることを混同し進行しようとしている


・日本の近代国家の成立とその変化が70年ほどの間隔で起こっている

1860~70 明治国家の形成

1930~40 15年戦争で破たん

2010~   第二次国民国家が終焉し、第三次国民国家が立ち上がる過渡期


・憲法の目的は国民の信託に基づいて権力を行使する国家機関を制約することにある。この点で改正論者が個人の権利ばかりが強調されている、とする憲法改正論議は本末転倒


・近代日本の民主主義はいずれも日清戦争、日露戦争、第一次、第二次世界大戦と、明治維新後に経験した4つの戦争の後に形成されたいずれも「戦後」民主主義


・現在は4番目の民主主義


・アメリカの占領政策は東西冷戦が激化した時期から大きく転換し始めた。それは共産主義勢力に対抗して、日本という国家を丸ごと自由主義陣営護持の橋頭堡とすること。そのために戦前の旧体制はアメリカの対日占領政策と手を結ぶ形で新たな連続性のなかで延命された


・反米自立への希求はナショナリズムの屈折した噴出だったが、70年代にはほとんど消えてしまった


・保守としての戦後民主主義というイメージの定着は、日本が戦力不保持を謳った平和憲法下の不完全国家から、憲法改正を通じて普通の国としての完全国家へと向かおうとする動きと呼応している


・戦後民主主義のメイン・ストリームが基本的には日米合作による戦前の旧体制との連続性にあった


・朝鮮戦争で朝鮮半島すべてが社会主義国家となったならば、戦後民主主義は早々にその命脈が断たれていただろう


・歴史が問題化しているのは、ユートピアの終焉という共通認識があるから。(冷戦の終結による)


・歴史相対主義、ナチスを生み出したドイツの負の歴史は絶対悪とみなされていたが、視座の中心軸を簡単に置き換えていくことが可能になり、自民族中心的な歴史の語りを招来することになる


・歴史修正主義 来歴としてのナショナル・ヒストリー、歴史実証主義とは異なる


・歴史というものが、じつは広い意味において政治的な行為であるということ


・歴史認識

①マルクス主義的な歴史認識 ユートピアの終焉が明らかで衰退している ヘーゲルに由来するマルクス主義的な歴史認識、世界史へと連なる歴史という考え方は重要

②歴史を科学技術史として捉える見方 科学技術の発展が人種や民族の垣根を超えて世界史を形づくっていく これも懐疑にさらされている

③ナショナル・ヒストリーや国民国家の虚構性を理論的に批判し、歴史認識問題の新たな展開の可能性を探るやり方 

④歴史修正主義


・日本も韓国も過去を清算していない、死んでいない過去と真摯に向き合うことが必要


・朝鮮半島は冷戦によって分裂し、単一の歴史認識をつくりえなかった


・東北アジア:日本・朝鮮半島・中国・ロシア極東部・モンゴル・台湾+アメリカ 日本・中国・ロシア・アメリカという世界の4大国が地政学的にひしめき合っているという非常に特異な状況におかれている


・東北アジアには多国間主義的な安全保障の枠組みと相互信頼のメカニズムが確立されてこなかった

理由①歴史認識をめぐる齟齬の存在②冷戦が完全に終わっていない


・朝鮮半島や中国が東北アジアや東アジア共同体の構築に向けて積極的にコミットしている一方で日本は依然として日米安保にしがみついたまま、アジアとの関係は疎遠になりつつある。かつて大東亜共栄圏の構築を声高に唱えていた日本が、地域主義の参画に及び腰に


・ナショナリズムの実在よりは、東北アジア共同体の虚妄に賭けるべき(姜)