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悩む力 (集英社新書 444C)/集英社
¥714
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ミーハーなものですから、どうしてもベストセラー本に興味があります。といっても1Q84みたいな高尚な文学にはまだ目が向いていません。


姜尚中氏は在日韓国人二世の政治学者。「自分は何者なのか」というアイデンティティに長い間悩み苦労した政治学者の静かだがしっかりとした語り口と、好き嫌いあれどリベラルな思想は共感する部分がもともとありました。


ただ、氏の専門分野とは離れた、「悩み」をテーマとして、自分自身の半生もちりばめて記述した本が、ヒットしたことは現代にそれなりの共感をもって人々に迎え入れられた証でありましょう。


今更ながら私的読後感をメモとして記載させていただきます。


本は、氏が長年悩んできたことと、そこで勇気づけられヒントを与えてくれた「炯眼の持ち主」 夏目漱石とマックス=ウェーバーこの二人の考え方が参考になったとのことです。


それは何故かというと、「生きること、人生、死ぬこと、愛すること、それぞれの意味と普遍的な問いかけ、二人が抱いて悩んだ問いを考える」ことが「悩む力」として現代においても状況があんまり変わらなくて、しかも価値を増しているのではないかと考えられるからです。


ヤピガメ日記でも、「・・・とは何か」と「・・・は今後どうあるべきか」という


「物事の定義づけ」と「将来予測を含めたあるべき姿」のふたつを日々刻んでいくのが目的でもあります。

その過程で失敗と悩みを繰り返してはいるのですが。


それでは早速メモに入りましょう。(ネタバレ注意です!)


・夏目漱石は「文明とは世に言われているようなすばらしいものではなく、文明が進むほどに人の孤独感が増し、救われがたくなっていく」とした。

・マックス=ウェーバーは、「西洋近代文明の根本原理を合理化に置き、それによって人間の社会が解体され、個人がむき出しになり、価値観や知のあり方が分化していく過程を解き明かした」


・「自我というものは他者との関係の中でしか成立しない。」「人とのつながりの中でしか私というものはありえない」


・「自我というのは他者との相互承認の産物である」「承認してもらうには、自分を他者に対して投げ出す必要がある」


・「まじめに自我の底を掘るように悩み、まじめに他者と向かうことで解決策や答えにたどりつく」


・「資本主義の行く先は、手段を選ばぬ不公平な競争と、苛烈な富の偏りを生んだ」


・「お金というものはじつに不可解な性質を持っている。労働の報酬のような意味を離れて、お金として独立してしまうとそれ自体が目的となってしまう。お金のために働く、からお金のためにお金がまわっていくようになり、お金が回れば回るほどお金が増えていくようになる」


・「お金を生み出すだけの資本主義の問題点は、お金に関わって生きているすべての人の人間性をねじ曲げてしまう可能性がある」


・「物知り・情報通であることと、知性とは別もの」 


・「人間の知性というものは、本来学識・教養といった要素に加えて、協調性や道徳観といった要素を併せ持った総合的なものを指す」


・「青春とは、無垢なまでにものごとの意味を問うこと」「青春とは、他者との間に狂おしいような関係性を求めようとするもの」


・「人間が成長するということは老成することだが、それは表層的に老成するか、青春的に老成するかのどちらか」


・「究極的には信じるということは、何か超越的な存在に恃む他力本願のものを信じることではなく、自分を信じること」


・「人が働くという行為の一番底にあるものは、社会の中で自分の存在を認められること」


・「自分が社会の中で生きてていい、という実感を持つためにはやはり働くしかない」



続きは明日に。