DVに関する話題を
今回 掘り下げると予告して
記事を書きかけていたのですが
う~ん 珍しくまとまらない![]()
過去の記憶やら
地球のネガティブやら
色々なものに邪魔されてるのかな?
(他のせいにしちゃってる💦)
え~ん
我ながら
ダメな奴だとは思いますが
なかなかに文化的な週末を
過ごしてしまったのもあり
予定を急きょ変更して
ゴーゴリ未完の大作
『死せる魂』を
先に取り上げてしまいますね![]()
予告したトピックについては
このまま沈没せずに
近いうちアップしたいと思いますので
何とぞ お許しをぉ~~![]()
『死せる魂』の主人公は
現代でいう『ニートの先駆者的存在』
そんな記憶があったんですが
なんかほかのロシアものと勘違いしてた![]()
この作品はゴーゴリが
第3部まで書く気だったらしいんですが
まとまらずに挫折して
第2部の原稿を暖炉に投げ込んだのです![]()
すごく読みたかったのに
なんて事すんだと思ってましたが
第1部 意外ときれいに完結しており
かなり感動したり 満足したり![]()
「ロシアというムダなまでに広大で
訳ワカな国の精神性を知りたければ
まずはこれを読め!!」と
おススメしたい一冊でもあります![]()
そして この本のもうひとつの題名が
(yapiが勝手につけた)
『(ロシア)俗物図鑑』です![]()
ロシアというのは
俗物がイキイキできそうな国で
そこは中国やインドとも
共通するものがありますが
現地の人々の苦しみを思うと
あまり茶化しちゃいけないかしら?
賄賂や腐れ役人が横行してて
「顔の広さ」だけが命綱になるかも![]()
yapiは まず生きていけない場所![]()
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「日本ではちょっと居らんやろ」![]()
というレベルの俗物が次々に登場
いずれも破格すぎて 気をのまれ
もう反感すら起きません:笑
ノズドリョフは もはや『歩く災厄』![]()
彼とは旧知の間柄であるチーチコフは
身を以てそれを知っており
「ちょっと寄ってけよ」と
何度誘われようとも断固拒否
…したはずなのに結局立ち寄るハメに
う~ん ノズドリョフのシツコさ
ハンパなかった![]()
そして主人公チーチコフを
超ド級の災難が見舞うのです![]()
「死んだ農奴を
少しでも多く買い取る」という
謎ミッションを遂行するチーチコフは
さらなる農奴を求めて
サバケーヴィッチなる人物を訪ねますが
まさにロシア人男性の典型![]()
熊のようにガタイが良くて![]()
また素手で熊を仕留められそう
だからといって
力だけが取りえのバカでもない
「抜け目ない」なんて当たり前で
ガメついまでに交渉に長けている![]()
日本人は 少し見習いたい部分ですね![]()
死んだ農奴の戸籍がそのままで
税金だけ取られるので
通常は始末に困っています![]()
チーチコフがそれを引き取り
多少の代金まで払うというので
誰もがふたつ返事で手放すのに
サバケーヴィッチは
すべての理屈まではわからなくても
「利益がまったくないものを
そうまでして欲しがるわけない」と
まったくもって野性のカン![]()
チーチコフが最初に申し出た
好意程度に過ぎない
代金の額を釣り上げて
どこまでもウンと言わず![]()
我らが主人公を悩ませます![]()
他人の家の外にあるものは
「捨ててある」とみなし
勝手に持ち去るという
ロシア人の話をよく聞きますが
深刻な悪意や 犯罪性とは違って
やっぱ国民性というか
「目の前に利益が転がっているのに
素通りしたらバチが当たる」
みたいな考えなのかも
「口を開けば
文明だ文明だと抜かしやがるが
そんな文明なんぞ くそくらえだ」
by サバケーヴィッチ
いかにも頑迷な
昔のロシア人男性が言いそうですが
なんかもういっそ すがすがしい![]()
ちなみにロシアの小説なのに
めずらしく今回
酒で破滅する人物はいませんが![]()
「靴屋は酒飲みである」という
都市伝説的な決めつけがあり
少し面白いと思いました
その次に出てきた
ブリューシキンという領主
昔は会社も経営して![]()
さっそうとした切れ者だったのに
チーチコフが居場所を訪ねたときも
近隣の百姓から散々な言われようで
「ああ あの襤褸(ボロ)っ下げの
ブリューシキンですかい」![]()
ロシア人は如才がなく 会話の達人
相手の地位が 一段階ちがうだけでも
いちいち口調が違うらしいですが![]()
とにかく口が悪いのも
ロシア人の特徴
ボキャブラリー あまりなさそうなのに
痛烈なまでの表現力が際立ち![]()
あだ名をつけられたら
「あいつの事でしかない」と
一瞬で周囲に丸わかり![]()
子々孫々言われ続け
どれほど出世して稼いで
カネで地位をあがなおうとしても
あだ名で出自がバレるんですって![]()
さて 話はブリューシキン
しっかり者の妻に死なれた途端
『ゴミ屋敷の主』となっていきますが
その事情や過程が本当にリアルで![]()
慣れない家政の切り盛りが負担で
器量良しの長女は駆け落ちするし
次女は亡くなってしまうし
その辺の百姓家や道端から
何でもくすねてくるようになり
現場を抑えられるとさすがに
「もう要らないと思った」
素直に返却しますが
いったん彼のゴミの山に入ると
元の持ち主がどれだけ抗議しようと
「あれは親せきからもらった」とか
紙が1枚 見えないだけで
「お前が盗んだんだろ
火あぶりにしてやるぞ」と
女中を責めますが 目が本気です![]()
そこの描写はユーモラスですが
家族を失う度に
絶望や寂しさから物をため込む彼に
共感まではいきませんが
ただならぬ悲哀を感じます![]()
際立った女性キャラがいない小説が
yapiは通常苦手ですが
この小説はとても楽しめました![]()
42歳の若さで没した
ゴーゴリの肖像を見ただけで
なんだか共通するものを感じます![]()
現代の人かと思うほど 洗練されてて
目線がまっすぐじゃなくて
ややずれているところが
頑なだったり やや無気力な感じ![]()
「人間の美点ばかりを
うたいあげる作家は幸せ」
(※原文のままではありません)
終盤近くで
ほぼゴーリキーの等身大である
語り手が作家談義を始めますが
「そんな作家とは違って
冷たく打ちひしがれた
人間の奥底などを
大胆に明るみにさらけ出し
しかも のみの強い迫力をもって
それを万人の目の前に
あざやかに浮彫りにして見せる作家は
大衆の拍手を集めるとか
血迷った16歳から むやみと熱を上げて
抱きつかれる事もなく
しかも現代の批判を免れる事はできない」
この部分にとても感動しました
私がもし作家になるとしたら
このようにリアリズム追求の
作家にこそなりたかったですが
ゴーリキーは
自分なりの真実を貫いた作品のために
自国におれなくなって![]()
この作品はローマで書いたそうですから
いっそうの深みと重みがありますね![]()
最後に主人公チーチコフの正体に仰天
著者の前身と重なる部分もあるだけに
息をのむような切迫感も
脇役にかなりリアルな俗物たちがいて
これだけでも
この小説を読む価値はじゅうぶんですが
まさかの主人公が
彼らを上回る俗物だったなんて![]()
しかも 時には意味不明なまでの
徹底した自己利益の追求は
私たちには理解しかねるだけで
一種の美学といえるかもしれません![]()
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チーチコフのかつての教師が
「鋭い天才タイプ」の生徒がキライで
チーチコフみたく
調子が良くて 世渡りがうまい生徒だけ
厚遇していました
「鋭い天才タイプ」たちは
その教師から 正当な理由もなく
苦境に追い込まれたり 迫害されたり
なのに その教師が失脚して
落ちぶれるハメになったとき
その迫害されていた生徒たちが
教師のために義援金を集め![]()
逆にチーチコフは「ふざけるな」と
突き返されるような額しか
出さなかったのですが
そのエピソードもすごくリアルで
ロシアならありえる話で
ロシアでしかありえない話![]()
ロシアにはトルストイが二人いて
日本にはあまり知られてないほうの
A・トルストイの作品の中に
ものすごい飢きんの時期に
普段はまじめな女学生が
食料と引きかえに
体を売ろうとする場面があり![]()
普段あまりモテない男子学生は
夜も眠れないほど![]()
楽しみにしていました ところが
当日になって
初めて顔を合わると
女学生は食糧難でやせこけて
あばらなどが浮き出ています![]()
それを見た男子学生は号泣して
もう当初の計画どころでなくなり
「君はそんな事をしちゃいけない
そんな事をしなくていいんだ」と
用意していた代金としての食料を
何もせずに 自分の分まで
全部女学生にあげてしまいます
「いかにもロシアっぽい話だなあ」![]()
いっぽう 満州の日本人居住区で
戦時中にロシア兵による占領
それに伴う女性たちの被害が甚大だった
それは知っていますし
由々しいことで
単なる過去のネガティブとして
切り捨てられない部分もありますが
一般市民が時折見せる
とてつもない器のデカさ
懐の深さ![]()
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意味不明なほどデカい国
訪れる可能性が
ほとんどないほどヤバい国
なのに どうしようもなく魅了される
遠くて近い 近くて遠いロシア![]()