3日目
日本海を見るためだけに~心静かな旅
ゆっくりと紫色に染まる空を見ながら石段に立ち尽くしていた。
ああ。夕日を見ているとなぜか心が落ち着く。
夕日?
しまった!
今いるのは伊香保温泉。
とある理由によって明日には六日市に行かなくてはならない。
しかし今伊香保温泉で日没を迎えている。
ここから、危険なナイトランが始まった。
闇の中での孤独は正直怖かった。けれど、逆にそのことがプラスの影響を与えてくれたように思えてならない。
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ニンジンの力で松之沢峠を越え秦名山を望む。なぜだかわからないが、そこにあったグラウンドの水道で水を一気に流し込んだ。
なぜかここにはメロディラインがある。車が走ってくると地面に刻まれた溝がタイヤとこすれあって音が鳴る仕組みだ。外から聞いてると意外と面白い。ドップラー効果で間延びした感じになったり、スピードが速いと1,5倍速になったりした。
もちろん自転車で挑戦したが、間延びした曲になった。
今日もゆっくり前に進もう。と思ったその矢先
目に入ってきたのは、こんな看板だ。
マジ?
完全な下りヘアピンだった。しかもブラインドカーブ。
「楽しい」
さっきまでの苦しみは嘘のようだ。下りが楽しくて峠に行くという人もいるけれど、肩に当たる風、過ぎ去る景色、すべてが好きです。
あっという間に伊香保に着いた。そして上り坂。ものすごかった。20%ぐらいはあった。押すのもつらい。
でも、
ただの観光地じゃない歴史ある街並みが迎えてくれて、この寄り道が無駄じゃなかったと教えてくれた。一枚一枚の写真では語れない、街の持つ空気が、僕は好きです。
温泉も素敵で、鉄を含んだ黄土色のお湯がすごく優しい暖かさをくれた。
温泉を飲めるところがあったので飲んでみた。
ごくり
「まずい」
この酸っぱさと何とも言えないざらざら感、そして鉄の味が何とも言えない風味を…
まあ、温泉っていうのはごくごく飲むようなものではないだろう。
伊香保には射的屋がたくさんある。なぜかは知らないけれど、そういう店が階段の左右にいくつもあるのだ。すごく面白い街だと思った。
それにしても、連休前で人が少なかったのは良かった。なにしろ、カップルや子連れ、老人グループのなかで、一人旅、ハーフパンツ+Tシャツ+ぼろぼろの帽子のといういでたちの僕は明らかに浮いていたから。
石段に立って夕日を眺めた。暗くなったって気にしない。
さらっと秋の風が過ぎていった。
つづく