【ツキタテフナトノカミ/イザナギの杖から化生した結界神】
ツキタテフナトノカミ(衝立船戸神)は『古事記』においてイザナギの持っていた杖から成り出でた神様として登場します。
黄泉から帰ってきたイザナギが禊(みそぎ)をした際に産まれた神々が、住吉三神や海神三神、アマテラス、スサノオ、ツクヨミといった神々ですが、その禊をする前にイザナギが脱ぎ捨てた服や杖、腕輪からも多くの神々が産まれました。
その中でイザナギの御杖から生まれた神がツキタテフナトノカミです。
『日本書紀』では、黄泉津平坂(よもつひらさか)で、怒り狂ったイザナミから逃げるイザナギが「これ以上は来るな」と言って投げた杖からクナトサエノカミ(来名戸祖神)が化生していて、同一の神とされます。
イザナギの衣服、杖、袋、腕輪などから生まれた神々は以下の通りとなります。
●御杖→ツキタテフナト
●御帯→ミチノナガチハ
●御囊(ふくろ)→トキハカシ
●御衣→ワズライノウシノカミ
●御褌(ふんどし)→チマタノカミ
●御冠→アキグイノウシノカミ
●左手の腕輪→オキザカル・オキツナギサビコ・オキツカイベラ
●右手の腕輪→ヘザカル・ヘツナギサビコ・ヘツカイベラ
神名の「ふなと」は「くなと」と同意ともされ「来な処」すなわち「来てはならない所」「入口を超えて来るな」の意味といわれ、もとは、道の分岐点、峠、あるいは村と外界との境などで、外からの外敵や悪霊の侵入を見張り防ぐ役割を持った神様とされます。
境界線や道の守護神として道祖神という存在がいますが、同じ神格を有するクナドノカミ、ツキタテフナトノカミは同一化していったと考えられます。
またサルタヒコも、『日本書紀』において、これらの神と習合したとされるので、ツキタテフナトノカミの風貌はサルタヒコを意識した鼻の長い白髭の御姿をイメージして描いてみました。
イザナギが脱ぎ捨てた褌からチマタノカミが化生したされていますが、この神様も分かれ道の守護者としての神格を有する事から、天之八衢(あめのやちまた)を守護するサルタヒコと同一視される存在です。
なお、道の守護神である道祖神は、道教から由来した庚申信仰と習合して青面金剛が置かれ、「かのえさる」の「申」から転じてサルタヒコとも習合しました。
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