【阿麻氐留神社(あまてるじんじゃ)】(長崎県対馬市)
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阿麻氐留神社は、『延喜式神名帳』に記載のある式内社・阿麻氐留神社に比定されている古社で、貞観12年三月(871年)、正五位下に叙されています。
上対馬と下対馬のちょうど中間地点、美津島町小船越に鎮座し、対馬の東岸と西岸を繋ぐ海運の中継地として重要視されていた場所で、社名のとおり太陽神をお祀りしていますが、アマテラスではなく天日神命(アマノヒノミタマ)がご祭神です。
写真は国道382号線沿いに建つ一の鳥居で、この鳥居をくぐり石段をしばらく上ると、小高い丘の上に古木に囲まれた小さな社殿があります。
対馬は南北に細長く、その道のりは100km以上あるので、船舶が東西への海域へ航行する際はとても大変なことでした。
そのため東岸から西岸へ渡る際は東岸の小船越浦と浅茅湾(あそうわん)にある西漕手浦(にしのこでうら)が接する一番狭い場所で、小舟は対馬の東岸から西岸へ人足に引かれて丘を越え、大船は東岸で積荷を降ろし西岸の西漕手浦に置いてある別の船に運び換えました。7世紀から9世紀の遣唐使や遣新羅使は本土から来て、この地で船を乗り換え唐や新羅へ向かったと伝わっていて、遣新羅使がこの地に停泊した際に詠んだ歌が『万葉集』にも収録されています。
このように古代においては海運の重要中継地として発展していた地なので、阿麻氐留神社にて航海の無事を祈っていたとされ、太陽信仰と航海神(海神)の側面が習合していると思われます。
その後、陸続きで南北に長い対馬では東西への海域に移動するのが不便だったことから、江戸時代に入り対馬藩が大船越を、明治時代には帝国海軍によって万関瀬戸が開削されたことで、東西の海域がつながり、船舶の航行がさらに容易になりました。
現在、西漕手浦はは人足が舟を引いた場所は史跡となっていて、無人の舟溜まりとして利用されているそうです。
江戸期に藩が対馬内の神社を調査して編纂した『對州神社誌』に阿麻氐留神社は、三所権現と記されていて、『大小神社帳』には、照日権現とあり、祭神は天津向津姫神(セオリツヒメ)とあります。
明治以前、両部神道においては「照日権現」と呼ばれ、それ以前の平安時代初期に書かれたとされる『先代旧事本紀』では、津島(対馬)縣直(あがたのあたい)の祖を天日神(あまのひのみたま)と記され、アマテラスとは違う太陽信仰(対馬の天童信仰)がかなり古くからこの地に根付いていて、阿麻氐留神社はその代表的な神社です。
また壱岐には月神がお祀りされ、対馬(日神)と壱岐(月神)で対を成す関係があるとされます。
◆ご祭神 天日神命(アマノヒノミタマ)
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