『私家版 ユダヤ文化論』 内田樹 文春新書
【評価】
★★★★☆
【要約】
「ユダヤ人」という存在を、日本人とのつながり、反ユダヤ主義の歴史、ユダヤ人の思考などの観点から理解しようと試みている。著者によれば、「ユダヤ人問題」にはあまりにも多くのファクターが複雑に絡まり合っているために、厳密に中立的にことばで言い表すことはできないそうだ。
ユダヤ人問題は、他のどの宗教問題、民族問題とも違う。ユダヤ人だけが持つ特殊な特徴(選民思想にもとづく受難思想や、イノベーティブな思考方法や、いろいろ)が、国家や社会を「支配される」恐怖に陥れる・・・。
結局、著者の答えは「ユダヤ人問題は解決することなく、これからもずっとずっと世界にとっての治らない膿であり続ける」らしい。
むずかしすぎて、要約できません(´A`)ぎゃふん。
【感想】
むずかしかった。複雑怪奇だね・・・。
ユダヤ人問題について「ゆ」の字も知らなかった私にとっては高度すぎてとてもついて行けない内容。
でも、内田さんの文章は語りかけるというか、わからない人にもわかるように極限にやさしい文で書いてくれている。構成もおもしろい。終章だけは3回読んでも理解不能だったけど、3章まではおもしろかった。
ユダヤ人の思考・・・常に「今ある答え」を疑う、自分の存在さえも疑い、考え続ける癖。それが他の人からユダヤ人がイノベーティブに見え、実際人類の科学進歩の歴史にも大きく貢献している。
って言うけど、世界各地に離散している人たちに「共通の思考方法」って維持できるもんなの?思考方法って遺伝していくものなんだろうか。それとも、ユダヤ人が「私たちはユダヤ人だ」と思う強さって、日本人のそれとはかけ離れているのかな。でも実際無視できないくらいに、ノーベル賞、映画界、産業界でユダヤ人は存在感を持っている。おもしろいなあ。脳科学では証明できなかったらしいから、やっぱりその特殊な立場や、内田さんの言うような思考方法が関係しているんだろうけど、抽象的すぎて立証はできないんだろうな。
反ユダヤ主義の主張(フランス式)は、ユダヤ人はその出自に置いて、存在そのものにおいて価値をもたないから、必死になって知能によって存在証明をしようとする。私たちは豊かな大地に根付いた価値ある存在だから、知的さを必死になって獲得する必要はない。・・・というようなことを言うんだけど、これは笑ってしまうけどなんとなく分かる気がする。私も、常に革新や進歩を自らに課し、世の中に名前を残すような生き方を、すごいとは思うけど、自分がそういう人生を歩みたいかと言うとそうは思わない。そこそこに、可もなく不可もなしに、生きたい。そっちのほうが私にとっては安穏として幸せだと思う。
この本、もう少し大人になったらもう一度読もう。「ユダヤ人問題」を描いている本だけど、人間の中にある感情の根強さとか、それが外に出たときの恐ろしさを知った。頭脳の優秀さや、正義感の強さが、凶器になることだってある。科学の進歩は目に見えるからわかりやすいけど、文化の進歩ってどうなったら進歩なのか、退化なのか、誰にも証明できないし、時間の経過によって進歩するってものでもないらしい。
戦争がどうしたらなくなるのか、みんな考えることだと思うけど、戦争ってやっぱりなくならないものなのかもなぁ・・・と思った。人間が生き続けていく限り。
そして、内田たつるさんの本おもしろい!
他も読んでみようっと。
