ある平日の夜のことです。お風呂のお湯がたまるまであと何分だろう、と思ってスマホを手に取りました。次に顔を上げたとき、画面に映っていたのは時計ではなくSNSで、体感で三十分くらい経っていました。お湯はとっくにたまっていて、少しぬるくなっていました。

 

時間を確認したかっただけなのに、なぜこうなるのか。その夜、ようやく気がつきました。わが家には、スマホ以外に時計がなかったのです。

 

■ スマホが「家で唯一の時計」だった

 

壁掛け時計は引っ越しのときに処分したきり。腕時計は家に帰ると外してしまう。つまり「いま何時?」と思うたびに、必ずスマホを持ち上げていました。

 

そしてスマホのロック画面には、時刻と一緒に通知が並んでいます。時間を見るという三秒の用事のために、メッセージの続きやアプリの赤い数字が毎回目に入る。時刻の確認が、そのまま情報の入口になっていました。一日に何十回も時間を見るなら、何十回も入口の前に立っていたわけです。

 

■ 先に試して、うまくいかなかったこと

 

まず通知を全部切りました。でもだめでした。通知が来ていなくても、指が勝手にアプリを開くのです。次にアプリの使用時間制限を設定しましたが、「今日だけ延長」を押す自分がいるだけでした。腕時計を家でも着けようともしましたが、三日で忘れました。

 

どれも「開いてしまった後」の対策なんですよね。そもそも時間を見るためにスマホを持ち上げる、その動作自体を減らさないと意味がないのだと思い至りました。

 

■ いまのやり方

 

引き出しに眠っていた古いスマホを一台、机の隅にスタンドで立てました。表示させているのは『Digital Clock Online』という無料のサイトで、ブラウザで開くと画面いっぱいに時刻が出ます。アプリを入れる必要も、会員登録もありません。広告も出ないので、時計を見たついでに何かをタップしてしまう余地がそもそもないのがありがたいところです。

 

助かっているのは、表示している間は画面が勝手に暗くならないこと。古い端末は放っておくとすぐスリープしてしまうのですが、これなら朝つけたら夜までつきっぱなしです。一度読み込んでおけば通信が切れても動いているようで、Wi-Fiの調子が悪い日も止まりませんでした。

 

見た目は数種類から選べて、昔の駅にあったようなパタパタめくれるタイプと、ドットのLED風があります。私は居間ではパタパタ、寝る前はまぶしくないLED風にしています。秒と日付の表示も消したりつけたりできるので、仕事中は秒を消しています。動いていると目で追ってしまうので。

 

■ ひと月たっての変化

 

数字で測ったわけではないので、あくまで体感ですが、スマホを持ち上げる回数は目に見えて減りました。時間は机の上を見ればいい。そうなると、スマホを手に取るのは本当に用事があるときだけになります。夜、気づいたら三十分消えていた、というあの感覚が減ったのがいちばん大きいです。

 

おまけの効果として、お風呂の失敗もなくなりました。机の時計をちらっと見て「そろそろだな」で立ち上がれるので、あのぬるくなったお湯とは無縁です。読書も、区切りの時刻を決めて机の時計だけ見るようにしたら、途中でスマホに寄り道することがなくなりました。

 

意志が弱いのが悪いんだと長いこと思っていましたが、たぶん違って、時計と情報の入口が同じ板の上にあったのが問題だったのだと思います。分けてみたら、それだけで済む話でした。古いスマホが一台余っている方は、専属の時計係に任命してみるのはどうでしょうか。