四川のイチゴ農場に泊まり込んでいたとき、
連日の重労働と大小のいざこざで
心身ともすり減ったものの、
息抜きの発明にかけては
私たち若い社員はまさに天賦の才を誇った。
丸ごと借り上げた村の土地に
ハウスをビッシリ建てていたため
細切れ遊休土地が幾許か生まれた。
そこへ各々自分の食べたい野菜の種を撒いては
自家菜園を楽しんだり、
料理大会を開いては食材を無駄遣いしたり、
度数40度の安酒を飯の友に、
酔った勢いそのままトランプや
マージャンに興じたりしたものだ。
ある日、いつものように卓を囲ってくつろいでいたら
足元に擦り寄ってくるモフっとした感触が。
生まれて間もない子犬で、
憐れにも村のごみ収集所に捨てられていたところ
女子社員のヤンさんに拾われたらしい。
最初はなんて汚いわんこだと思っていたが、
時が経てば情も移るもので、
手のひらサイズの可愛さと、
どこまでもついてくる人懐っこさも加わって、
しまいにはその汚い毛並みの不憫さにも
保護愛を掻き立てられたから不思議だ。
私が肥料の分量を測る作業の時も
足に絡んでくるため、軽く追い払った時の
彼女のつぶらな瞳に軽く心を砕かれた。
思わず携帯で写してしまったが、
この何日か後に、
彼女は電気自転車に轢かれるという
不慮の死を遂げることになろうとは想像だにしなかった。
親なき子の遺影を眺めながら、
もっと構ってあげればよかったなと、ちょっと胸が痛む。