海底からゆっくりと浮上するように、

まどろみの中からぼんやりと記憶が戻ってくる

急いで飛び起きて愛車に飛び乗る

今の愛車は黒のミラらしい

対向車に気を付けながら、

狭い急こう配を下っていく

案の定、こちらに一早く気付いた親子ずれがいた

減速しながらすれ違う

このミラこんなにブレーキ利かなかったっけか

下り坂はどんどん狭くなり

いつしか俺はスクーターに跨っていた

それもそのはず、

バイク一台しか通れない道幅になっていたからだ

と、道を塞ぐように佇む一人の少女

新川優愛似の女子高生だった

彼女の手前でスクーターを止めた

彼女は俺を確認すると抗議を始めた

あることないこと言ってくる

どうやら何か勘違いしてるらしい

俺が浮気なんかする訳ないだろ?

どうにも埒が明かないと悟った彼女は徐に

俺の後ろ首に手を回してきた

おいおい、俺は先を急いでるんだ

用が済んだのなら俺は行くぞ

不満げな顔の彼女を残してその場を去る

仕事仲間の集合場所に遅れて着いた

皆の話は終わってしまっていた

俺は年下の上司から会社で使うクレジットカードと電子リストを貰う

もう一人の同僚から遅れてきた理由を茶化される

そんなんじゃないって、と

「何首にキラキラしたもん付けてんの?」

え、何?

首筋を触ってみるとネックレスのチェーンのような物が

何だこれ、こんなの俺付けてなんか……

は、やつか? 彼女の仕業に違いない

一体何だってんだ?