市川こども文化ステーション主催で開催された「今みて新しいサイレント映画」(活動弁士:縁寿、楽士:ピアノ、神崎えり)の舞台をきっかけに活動弁士と楽士が紡ぐ生のライブ感に魅せられて、縁寿さんが出演するライブに足を運ぶ様になった。2020年10月9日に錦糸町の「シルクロードカフェ」で行われた「カフェで楽しむサイレント映画ライブ」(活動弁士:縁寿、楽士:カラード・モノトーン デュオ(ギター:湯浅ジョウイチ、フルート:鈴木真紀子)での演目は「ラ・ボエーム」(1926年、アメリカ )。「ラ・ボエーム」は今から約100年前(正確には94年前)の作品。トークゲストに宮下啓子さんが登場した。現在放送中NHKの朝の連続テレビ小説「エール」の主人公、音がオーディションに望むのが「ラ・ボエーム」だけに非常にタイムリー。

主人公は、お針子娘のミミ(リリアン・ギッシュ)と劇作家になることを目指す詩人の青年のロドルフ(ジョン・ギルバート)。いつしか恋に落ちていくふたり。ミミはロドルフの成功をひたすら願い、生活のために自分の持ち物を質に入れながらお金の工面をして献身的に支えていく。

しかしいつしか彼を愛するが故についた嘘や彼の誤解を発端にミミは彼の前から姿を消してしまう。数ヶ月後、ロドルフの戯曲が大成功を収める。成功を祝うパーティーに現れたミミは、過労により骨と皮ばかり。さらには盲目という変わり果てた姿となり、「ロドルフ」の名前を呼ぶ姿にはかつての可憐な面影はない。特に今作品の最大の難所は、監督をはじめスタッフが「本当に死んでしまった」のではと思わせた最期のシーンを作品の印象を左右させる役割を持つ活動弁士として演じるかではなかっただろうか。

ステージ上で縁寿さんはリリアン・ギッシュが演じるミミの変わり果てていく姿を声だけで表現していく。「七色の声を持つ活動弁士」と称される由縁なのかもしれない。

活動弁士は、ひとりで何役をも演じる俳優、ナレーター、舞台監督、プロデューサーまでをも務める。「シルクロードカフェ」での公演では、上映作品の時代背景に応じた衣装、食事のメニューなど志向を凝らした総合演出で毎回来場者を楽しませてくれる。次作がまた楽しみだ。